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鋼鉄のアイ 作者:パブロン

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妙手の結果

分割したので連日更新です。

明日からまた隔日更新に戻ります。
 ぴんぽーん、と太陽が天上を昇りきったその頃、スローター家に来訪を知らせる音がなった。

「んッ……」

 ぴんぽーん、ぴんぽーん、

「だめだ、アイッ……そっちは……」

 ぴんぽ、ぴんぽ、ぴんぽーん、

「そこは……」

 ぴぴんぽぴんぽぴんぴんぴんぽん、

「そこは、いやん♪」
「……タクム」
「ハッ!? なんだ、ベジーか。どうしたんだ?」

 ぴぴぴッぴぴぴッぴぴぴぴぴぴぴんぽーん、

「ああ、いい夢を見ていたのにすまない。どうやら来客のようだ。私が出ていいものか迷ってな……私は、その……」
 <八百屋ミックス>ベジー。元殺し屋。かつてガンマ裏の四天王と呼ばれ、頭に超一流が付いた暗殺者が出てくれば誰もが恐怖するに違いない。

「ああ、大丈夫大丈夫、これからは出てもらって構わないから、第一、悪名高さで言えば俺のほうが上だしな」

「そ、そうか、承知した。今後は来客を出迎えるとしよう……」

 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴんぽん、

「つーか、チャイムしつけーな!!」
 タクムは三角形のナイトキャップを外し、水玉模様のパジャマの袖口でよだれを拭うとベッドから飛び上がった。

 こんな来訪の仕方をする奴は、タクムの知る中で一人しかいない。というよりも、タクムに知り合いらしい知り合いなどDQNネームの職人兄弟だけであり、彼等は多少、残念なところはあるがインターフォンで三々七拍子やエイトビートを刻むようなキチガイではない。

 タクムはベジーを従えながら、リビングへと向かい、インターフォンに搭載されたカメラ映像を確認する。

 つややかに螺旋を描いて肩口まで伸びる黒髪、黒目勝ちの瞳。ぷるんとしたうす桃色の唇。肩のないタータンチェックのワンピースの中央を、大きな革のベルトが走っている。同じ柄の大きなリボンが小さく揺れた。とても可愛らしい装いだが、黒い網タイツから伸びたガーターベルトやバラの刺繍が入った手袋が妖艶さも演出する。


「はい? 新聞の勧誘なら適切に処理しますが?」
「こんな可愛い新聞の勧誘があるかー!! 一日でノルマこなせるわって、そもそも新聞屋さん、可哀想すぎない!? まったく、そんなにバンバン殺しちゃだめよ……プスッ、銃だけに、ね……」
「切っていい?」
 タクムは受話器を差し口に戻そうと耳を離す。

「待てー!! ブン屋の手先のことなんざどうでもいいのよ!! ちょっとアンタ、何てことしてくれてんの!?」
 まるでスピーカーフォンである。耳から20センチは離れているというのに受話器から漏れてくる音声はむしろ適切な音量であった。

「何のことだ?」
「んまっ、この子ったらしらばっくれちゃって。まあ、いいわ。ちょっと面貸しなさいよ。どういうことかきっちりかっちりパーペキに聞かせてもらうんだから」
 このまま電話口で話していても埒が空かない。タクムは深いため息をついて正門のロックを解除した。





「で、説明してもらおうじゃないの。あたしの仲間に何あることないこと吹き込んでんのよ!?」
 ライムがドンとテーブルを叩いた。かなりの威力である。鉄製のそれに買い換えていなければ真っ二つになっていたかもしれない。

 <越後屋>が問い詰め、<殲滅者>が困惑する。40畳のリビング、革張りのソファーでの向かい合っての対面は、かつての<断罪TV事件>を思い起こさせる光景だった。

「は? え? 何が? 俺、まだ何もしてないけど……?」
「それ見たことか、あたしを陥れるために何か仕組むつもりだったんでしょが!」

 <越後屋>がスローターに肉体を売り、スローターがとても気に入ったらしい。普段の悪党っぷりからは考えられないほどの入れ込みようで、今後も積極的な攻勢を仕掛けていくだろうとのことである。それを邪魔しようものならどんな目に遭うか分かったものではない。

 そんな噂がギルド内で蔓延しているという。

「なるほど、そういう手があったか……」
 タクムは唸った。なるほど妙案である。ガンマ一のキレ者――様々な意味で――と名高いスローターが、ライムに熱を上げていると噂を立てれば当然、彼を恐れる周囲の開拓者は逃げ出すだろう。あるいは攻撃を仕掛けてくるかもしれないが、その時は経験値稼ぎと割り切って適切に処理すればいい。

「そこー!! 変な感心しなーい!!」
「しかし、ベジー。俺、今回は何にもしてないよな?」
「ああ、それは私が保証しよう……といっても殺人鬼たる私の言など信用ならないだろうが」
「ベジー、過去を悔やんでも仕方ないよ。これから頑張ってこう」
「ああ、そうだな」
 タクムとベジーは狂気を帯びた双眸で見詰め合い、頷き合った。

「いや、何いい話に持っていってんの!? 現在進行形の大量殺人鬼共が!!」
「てへぺろー」
「うっざ、瞳孔開いた狂人がやっても可愛くないんだよ!!」
 ライムが吐き捨てるように言うと、タクムがじっとこちらを見つめていることにようやくと気付いた。

「な、なによ……あ、謝らないわよ、わ、わたし、間違ったこと言ってないし!」
「なあ、ライム。前々から言おうと思ってたんだが……」
「な、なに……暴力反対! ごめんなさい嘘ですこの通りですから許してください」

「お前、時々、語尾忘れてるよな?」
「はッ、うッ……う……うん? …………いや、うにゃん? はて、にゃんのことやら……?」
 ライムは必殺の胸を強調する腕絞り招き猫のポーズを繰り出した。

「おせーわ、致命的におせー」
「と、とにかくスローターのせいでにゃーのパーティ<寝込みに猫耳団>は壊滅しちゃったんだにゃん。何かしら補償してもらわなくちゃ困るにゃん」
「補償といってもな……戦車を寄越せというならやるが、お前使いこなせるのか?」
「む、むり……じゃ、じゃあ、お金でいいにゃん。世の中金さえあれば99.9%のことは解決できるから!」
「その台詞はアイドルが言ってはいけない禁止ワードトップ3に入ると思うんだが……」
「うっ……いいのにゃ。ここにいるのは戦闘狂ばかりにゃんだから」

 そんな益体もない会話を繰り広げていたタクムの脳裏に妙案が浮かび上がる。何故かライムが仲間からの信用を失い、しかもその状態を打開する手立てがないと来ている。

「仕方ない……お前を俺のパーティに入れてやる」
「は?」
「今度、遺跡の探索に向かうつもりなんだよ。さすがにメンバーが2名じゃ心もとないと思っていたんだ。お前も大量の資金を持つ、この街一番の精兵と徒党を組めるってわけだ。ま、報酬の振り分けは俺が半分で、ベジーは三割、ライムは二割ってところだな」
「ちょ、幾らなんでもアンタボリすぎ……」
「普通、開拓者団っていえば5人から10人くらいで組むんだろ? 山分けにしたらパーセントは変わらないはずだが?」
「それは……」
「俺は3ヵ月で生体兵器一万体、中型三百体、大型も二体ほど狩り出したぞ?」
「なん、ですって……一体あたり1500ドルとして、大型は1万ドル……大型なら素材込みで200万ドルは下らない……多分、ギルドから特別報酬も出るし……その二割っていったら……じゅる……」
「その上、今なら衣はないが、食住が付いてくる。ここは空き部屋だからけだからな。好きに使って構わない。光熱費は俺が出しておいてやる」
「家賃が……タダ……あ、あの、スローターさん、いえスローター様」
「ん?」
「不肖ライム・ダッチャー、誠心誠意お勤めさせて頂きますにゃ。どうぞ末永く宜しくお願いしまにゃん($ω$)」
 ライムは胸を揺らして最敬礼。とてもアイドルとは思えない表情で浮かべてそう言った。

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