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鋼鉄のアイ 作者:パブロン

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<八百屋(ミックス)>ベジー

 裏業界に詳しい情報屋から尋問官を紹介してもらい、<走り屋>タークの聞き取りを依頼した。

 もちろん、狙いは奴が隠し持っているであろう、隠し口座やらセーフハウスの所在である。

「いでぇぇぇええぇぇぇ――も、もう、やめ――ぎゃああぁぁぁ――」
 裏社会で名を馳せるその尋問官は、尋問よりもむしろ拷問のほうが得意だったようだ。

 地下室から漏れ聞こえてくるタークの悲鳴。

「うるせえなぁ……夜くらい眠らせろよ……」
 タクムは布団を被って、耳を閉ざした。



「お早うございます、タクムさん。聞き取り調査のほう終わりましたよ」
 朝、とても爽やかな顔で尋問官が地下室から出てきた。全身から漂う血と糞尿の臭いにタクムは顔を顰めた。

 尋問官に――寝室側は臭いが篭りそうなので――ガレージ近くのシャワー室を貸し、報告を受けた。

 この尋問官、一晩でタークを吐かせたところを見るとかなり優秀なのだろうが、いかんせん話が長すぎた。

 報告の途中途中に自らが行った拷問の詳細を差し挟んでくるのには辟易してしまった。拷問のコツは相手が死にたくなるくらいの痛みを与えてやることに尽きるそうだ。体にダメージを与えずに、痛覚だけを刺激するのはかなり難しいことらしい。爪を剥ぐなど日常茶飯事。焼きゴテで皮膚を焼き、手足の切断し、生殖器は切除、目玉の刳り貫き、全身の皮をゆっくりと剥いでやる。そんなことを三日三晩も続けてやれば大抵の人間は、自然と死を望むようになり、情報を吐き出してくれるそうな。

 それでも耐えるような精神力の持ち主には自白剤を投与するそうだ。

「最初からそれを使えよ!」
 タクムは思わず突っ込んでしまった。

「ははっ、痛めつける云々は私の個人的な趣味ですから」
 清清しいまでの開き直りっぷりにタクムは色々と諦めた。


 タークの精神力はそれほど高くなかったようで、そんな拷問は30分ほどで意味を成さなくなったらしい。無意味に一晩痛めつけられたタークは現在、気を失っており、当分目を覚ますことはないだろうとのこと。

 実際、地下室で見た彼の体は生きているのが不思議なくらいな状態だった。可哀想なことだが、そもそも人殺しを生業にしていた男だ。容赦する必要はない。

「さよなら」
 コルトガバメントで止めを刺し、タクムは尋問官から聞いたアジトへと向かった。

 さすがに<走り屋>を自称するだけのことはあり、タークの拠点や隠れ家のガレージには数え切れないほどの車両が並んでいた。
 フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニ。さながら世界の名車コレクションといった風情であった。かつての日本であれば一台数億円で取引されるものだが、ワンダー曰く、大した金額にはならないだろうとのこと。戦闘能力を持たないスポーツカーはこの世界においてあまり需要がない。

 無論、コレクションの中には兵員輸送車や装甲車といった戦闘車両もあったため、換金すれば300万ドル程度にはなった。賞金首の報奨金で収益は500万ドルほどとなった。

「やっぱり、生きて捕らえたほうが得だな」
 空になったガレージを眺めながら、タクムは呟いた。




 続いてタクムは尋問官を通じて、<走り屋>から聞き出した<八百屋ミックス>べジーの拠点を襲撃した。

 奴がこの街にいないことは情報屋を通じて知っていた。何やらとある大物悪徳商人を殺しにいくとかで他の都市にいるらしい。殺し屋の拠点の情報は売れないが、誰がどいつを狙っているというような情報は販売しても問題がないらしい。

 そこら辺の線引きは素人には難しい。

 拠点は大通りに面した小洒落たアパルトメントの3階だった。散弾銃マスターキーでドアノブを破壊し、<偵察兵>のスキル<ブービーチェック>で罠を発見、<工作兵>時代に覚えた解除法を駆使、あるいは散弾銃をぶっ放して解除する。

 対人地雷クレイモア程度の爆発なら強化服デゥラハンには傷一つ付かないが、念を入れておくに越したことはない。

「よーし、やるかな」
 強化服には動力補助の機能が付いており、重いタンスや金庫だって楽々持ち上げることが出来た。そもそもタクムの膂力(STR)は10.00を超えている。補助さえ不要であった。

 金品を箱詰めし、武器弾薬を紐で縛る。家具家電を両手に抱えて通りに停めた大型トラックに運び入れる。サカイさんもびっくりするような手際の良さで、次々と資産を奪い取っていく。

 本来なら窃盗や器物破損などの罪状が付くはずだが、相手は人を何人も殺している重犯罪者である。遠慮する必要はない。この世界では親父狩りは罪になるが、親父狩り狩りは罪にならない。殺人犯を殺人しても褒められこそすれ罰は受けない。<攻略本アイのノート>に記載してあった情報だから間違いない。

「これだけは残しておいてやるか」
 タクムは言って、寝室の壁に備え付けれていたベッドと寝具だけには手を付けないことにする。

「眠れないのは辛いからな」
 ここ数日、不眠症気味のタクムはそう言って拠点荒らしを終えた。

 最後に出入り口にメッセージを残し、アパルトメントを後にした。




 もちろん、襲撃は終わらない。トラックの荷台コンテナに入り、予め選り分けておいた書類を調べ、PCを起動し、他拠点の情報を手に入れる。見つけたらすぐさまそこも潰していく。

 3日で全ての仕事を終えた。

 ――しかし、事務官がいないのは辛いな。

 最後の拠点では、危うくべジーとニアミスしかけた。襲われたらたまらないので手持ちの手榴弾やスモークグレネードを部屋中に仕掛けて爆破処理した。
 中は武器庫だったらしく、大爆発が起こり、<デュラハン>を着ていなければ危うく死に掛けるところであった。

「よし、これで準備は万端だな」
 買い直した四輪バギーに跨りながら、タクムは自宅へと帰っていった。
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