挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
鋼鉄のアイ 作者:パブロン

スチール

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

27/90

メインシナリオ

「すまんな、俺にはどうしようもない」
「そっか、悪いな。無理を言って」
 タクムが浅く笑うと、ワンダーは強面の顔をしかめた。

 タクムの手にはスマートフォンが握られている。当然ながらアイが入っていた――いや、通信を交わしていた端末である。

 幾分か真新しく見えるのは修復キットを使ったからだ。ジャイアントスローター戦で焼け落ちた車体から奇跡的に発見されたスマートフォンは、ほとんど原型を止めていなかった。真っ黒に焦げ付き、ゆがみたわみ、液晶ディスプレイなどは完全に溶け切っており、内部の半導体部分が剥き出しになっていた。

 その手の専門家であるワンダーに修復を頼んだところ、彼は焼け爛れた端末を機械類を修復する専用ナノマシン液に浸した。すると溶液内にあるナノマシンが破損した部分の代替となり、原型を取り戻すことに成功したのだ。

 だが、それまでだった。

 ナノマシンで修復出来るのはハード面だけであり、ソフト面、メモリやHDDの情報まで復旧することは出来なかったのだ。当然、スマートフォン上で動いていたアプリケーションやOSやミドルウェアなどのソフトウェア群も、復旧出来なかったものの内に入る。

 今、タクムの手のひらにある端末は、金属と樹脂で出来た箱であり、どれだけボタンを押そうとも動き出すことはない。

「他の端末じゃ、繋がらないのか?」
「ああ、試したがダメだったよ」
 アイが携帯電話に内蔵された人工知能メモリだと言っても、信じてもらえるはずがない。

 タクムは、アイの所在について説明する際、行方不明であることにした。女王蟻との戦闘中にアイと逸れてしまい、合流できなかった。唯一の連絡手段であった携帯端末のほうも壊れてしまった、だから修理を依頼したという流れである。

「ワンダーさん、何かいい方法知らないか?」
「ん~、完全に壊れたデータを復旧する方法ね……もしかしたらそんな装置やアイテムが未開拓の遺跡辺りに潜ればあんのかもな」
 生体兵器が世界を蹂躙する前、世界には高度に発達した文明があったと言われている。この世界に戦車やロケットランチャーのような現代兵器が存在しているのも、旧時代の生産拠点プラントがあるためだ。

 その旧時代の科学水準は恐らく、タクムの生きた2013年よりも発展しているだろう。遺跡に存在する完全無人化された生産拠点は現代兵器のみならず、多脚戦車やナノマシンによる回復薬ポーション修復リペアキットをも作り出す。まるでSFの世界である。

「遺跡ね、うん、ゲームらしくなってきたな」
「ゲーム?」
「ああ、こっちの話。それじゃあ、俺は行くわ」
 タクムは踵を返して、整備工場を出た。



 ――この世界はやっぱり<ゲーム>なんだ。

 この世界で生きていくと決めながらも、世界をゲームだと思い込む。

 大きすぎる矛盾。タクムの世界への認識は虚実が入り混じっており、彼自身にも掌握し切れていない。

 ただ一つ言えるのは、彼は<アイの死>を認めていないということだろうか。

 アイが自分の元から消えてしまったのは、あくまで世界ゲーム演出シナリオであり、特定の手順イベントをこなすことで彼女を取り戻すことが出来る、そう考えた。

 アイというかけがえのない存在を失ったタクムが、どのような経緯でその結論に至ったのかは定かではない。

 少なくとも彼は本気でそう思っていたし、ワンダーの発した「ダンジョンにならそういうアイテムがあるかも」という言動は、奇しくも彼の考えを肯定するフラグに思えた。

 この世界のどこかにあるはずのデータ復旧アイテムを探し出して、彼女アイとの再会を果たす。

 タクムにとって、それはこの世界におけるの最終目標メインシナリオとなった。



「それじゃあ、ぼちぼち攻略を始めますか」
 まっさらな空に浮かぶ灼熱の太陽に目を焼かれながら、タクムは口を開くのだった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ