挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
鋼鉄のアイ 作者:パブロン

スチール

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

21/90

討伐部隊(レイド)

 蟻の巣を見つけた二人はすぐにギルドへと報告した。予想よりも規模の大きい巣であったため、単独での殲滅は諦めたのである。

 ボスは、巣の形状から『ジャイアントスカイ』のものであると判断された。

 ジャイアントスカイは白銀の外殻を持つアントゴーレムほどのサイズの生体兵器である。その大きさこそジャイアントゴーレムに劣るものの、飛行能力を有している。蟻系唯一の弱点であった移動能力の低さを覆した強敵である。

 蟻の巣はかなり近い。街から南西に50キロほどいったところにあった。放置していれば規模は拡大され、いずれ討伐は困難になるだろう。気が付いた頃には街道が蟻に埋め尽くされていました、なんてことにもなりかねない。

 事態を重く見たギルドは早急に討伐隊を組むことを決定した。

 丙種以上の開拓者がすぐさまかき集められた。無論、発見者であるタクム達は強制参加だ。ちなみに、依頼が正式に発表される直前、アイはタクムに町中のガンショップや戦車屋から、ブローニングM2に使用される12.7ミリライフル弾を買占めさせて、大儲けをしたのだが、それはまた別の話である。

「すごいな……まるで映画みたいだ」
 タクムはハッチから顔を出し、車両後部を眺めて言った。

 シーサペントを先頭にVの字型で巣へと直進する戦車の群れ。
 中型生体兵器でも戦えると判断される丙種開拓者は、戦車や高火力の装甲戦闘車などの大型戦闘車両を保有しており、総勢200名、40輌からなる戦闘車の群れは壮観そのものであった。

 全長10メートル、全幅3メートル超の巨体に踏みにじられ、荒野に巨大な砂煙が上がる。そんな車両群の中にあって、ミニバンくらいの大きさしかないちんまい戦車が先陣を切って走っている姿は逆に人々の注目を浴び、後に彼らが持ち帰ってくる戦果と共に注目を浚った。

『こちらセリエアー。敵拠点ありのすを発見、全車停止』
 オープン回線でそう指示を下したのは討伐隊の隊長を任せられているデル・ピエロッペンであった。部隊で唯一の甲種開拓者団パーティ<セリエ・アール>のリーダであり、一輌編成ソロで大型生体兵器を討伐したこともあるという古強者ヴェテラン中の古強者である。

 マイクロ戦車に変わり、パーティと同名の戦車<セリエ・アール>が先頭に立つ。討伐隊が駆る戦車のほとんどは第二次世界大戦以前のものを改修したものであるのに対し、セリエ・アールはOF-40という新型主力戦車をベースにしている。

 OF-40は1977年にイタリアのオート・メラーラ社とフィアット社が輸出向けに開発した主力戦車だ。

 高火力、高精度を誇る105ミリ戦車砲を主砲とし、副砲としてブローニングM2重機関銃を装備している。その組み合わせはポピュラーであるが、言い換えれば誰もがそうしてしまうくらいに信頼性が高いということである。また武装だけでなく車両自体にも高い機動性、踏破性が確保されている優良機といえた。

 元々優秀であった車両に対し、デル達<セリエ・アール>は潤沢な資金でもって魔改造を施している。装甲板の張替えや追加、武装の追加、駆動部をキャタピラから六本の多脚駆動式に換装しているため、ほとんどオリジナルの戦車である。

 105ミリ戦車砲こそそのままであるが、追加された副砲――ブローニングM2重機関銃が2門も搭載されているため対空砲としての運用も可能であり、そもそも強固な戦車装甲を更に強化しつつも、多脚化により不整地での移動性能と踏破性を向上させ、斜面への登攀力も高めている。

 操縦者も中々の腕前のようで、ローラースケートのように脚部を動かすことでスイスイと岩の隙間をすり抜け、障害物を多脚によって飛び越える。立体機動。これぞ多脚戦車の真骨頂である。

 そのスペックは超絶の一言に尽きた。恐らく戦車があと一台は買えるくらいの改修費用が掛かっただろう。

「まさにエースストライカーが駆るに相応しい戦車だな」
 そんな彼が率いるセリエ・アールが隊長機として指揮を振るうことはごく自然な成り行きであった。

『A隊は前進。これより、戦車戦を行う。B隊は巣の1キロ先で後方支援を、C隊はB隊の護衛だ。A隊の打ち漏らしを回収してくれ。以上だ』

 部隊はあらかじめ3つの隊に振り分けられており、A隊は戦車持ちや火力に優れた装甲戦闘車のみで固められている。B隊はMk19自動擲弾銃グレネードマシンガンなどを配備した遠距離攻撃に向いた部隊、C隊はその他の雑事を担う。つまり、みそっかすである。当然、タクムはC隊であった。

「くそ、これじゃあ大型倒せないじゃないか」
 砂煙を上げながら前進するA隊を見送りながらタクムがぼやく。

討伐隊レイドを組んでいるから大型を倒したっていう実績はボク達の元にも入ってくるからその心配はいらないけど……隊長機ばかりか副長機まで前線に出張っちゃって、ほんとにだいじょぶかな……』
 アイが心配そうに言った。

 ちなみに討伐隊は隊長機と副長機がやられると自動的に解除される。つまり部隊は壊滅とみなされるのだ。現実問題として、指揮官の消えた戦車隊など大型や特型生体兵器にとって烏合の衆でしかなく、この二輌にもしものことがあったら、討伐隊は間違いなく壊走するだろう。

 しばらくするとタクムが除いたスコープにも蟻の巣――コンクリート素材で作られたらしき、蟻塚が確認できた。蟻共も前線戦車の存在に気付いたらしく、蜂の巣を突いたかのように蟻が飛び出してくる。

『野郎共! 戦闘開始だ!!』
 デルの合図でA隊戦車の戦車砲が一斉に放たれ、後方から無数の迫撃砲が射出される。

 乾いた荒野に鋼鉄の匂いと火薬の音が満ちていく。
 ここは既にして<戦場>の空気に染まっていた。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ