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鋼鉄のアイ 作者:パブロン

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豆戦車VS中型

 アイの声に急き立てられながら、タクムは戦車へと乗り込んだ。

「なあ、アイ、なんだ、そのジャイアントゴーレムってのは」
『アントゴーレムの上位種だよ。小型最強のアントゴーレムよりもずっと大きくて、遥かに強い……さすがに生身で戦うような相手じゃない』

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ジャイアントゴーレム
体長5メートルを超える巨大な蟻型生体兵器。アントゴーレムの上位種。
下位となるアントゴーレムと形状や戦術こそほぼ同一だが、体長に比例するように戦闘能力が桁違いに上がっている。
硬度を増し、更に分厚くなった外殻の強度は下位種の2.5倍はあり、並みの装甲車よりも硬いといわれており、自動小銃などの小火器程度では傷つけることは難しい。
また臀部の穴から射出される生体砲弾は大きさ、威力共に増しているため戦闘車両に乗っていても油断は出来ない。

脅威度:C+
生命力:B
近/中/遠攻撃力:E+/C/C
装甲:C
俊敏性:E+
-------------------------------------

 車外カメラに移るのは夕焼けを浴びて黒光りする巨大な蟻。ずんぐりとした印象のあった下位種アントゴーレムと比べて全体的にほっそりとしたシルエットを持ち、地面を蹴る四本の後ろ足も随分と長く感じられる。

 狩場に駆け寄ってきたジャイアントゴーレムは、鋏の口を目一杯に開いた。

「キシュァアァァァ――ッ!」
 咆哮が荒野を走る。

 無残に撃ち捨てられた同胞を見て涙したのか、ただ単純に獲物を見つけて食欲をそそられたのかまでは分からないが、巨大蟻が興奮しているのは間違いない。タクムを乗せて走り出したマイクロ戦車を、長い脚部を利用したストロークで追いかけ始める。

「アイ、俺はどうしたらいい?」
『砲塔のほうはボクが回すから、ハッチを開けて、重機で迎え撃ってくれないかな? 多分それでもそこそこ通じるはずだから』
 硬いといっても戦車ほどの装甲を誇るわけではない。携行用の重機関銃としては最高峰の威力を誇る12.7ミリ×99ミリであれば硬い表皮も切り裂けるはずだ。

 タクムは砲塔が回り切るのを待ち、ハッチを開けた。ブローニングM2の銃口を敵に向けるが、狙いは中々定まらない。シーサペントはその小さな車体を活かし、点在する岩場を縫うように――あるいは海蛇が珊瑚の中を身をくねらせてすり抜けるように――駆けており、方向転換のたびに照準を合わせなければならないためであった。

 ブローニングM2の重量は38キロ、銃弾を入れれば50キロを超えることもある。いくら銃座があるとはいえ、四つ脚部と足裏に付いたタイヤを使った軽やかな動きについていかせるのは、現実として不可能に近い。
 幸か不幸か、長い脚を使ったストロークを武器に距離を詰めようとするジャイアントゴーレムも同じことであり、臀部の生体砲弾以外の飛び道具を持たない奴には攻撃手段が存在しない。

『もう少し待ってて。もうすぐで岩場、抜けるから』
 徐々に開いていく両者の差。それが100メートルほどにまで開いた時、アイが言った。

「了解だ!」
 言うが早いか、マイクロ戦車が狭く曲がりくねった動きが止まる。平行に走り始め安定する銃口。横目で背後を振り返ると、そこはやはり延々と続く荒野であった。

 タクムは自分が出てきたの上に銃口を合わせる。

 ぬっと岩場の影から姿を現したジャイアントゴーレムに向けて、タクムは引き金を弾いた。

 ――|激しい豪雨に晒されたかのような爆裂音がタクムの耳を劈いていく(ダッダダダドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴダガガガガガガガガガ)――

 購入しておいた300発の給弾ベルトが飲み込まれ、12.7ミリの巨大な弾丸を次から次へと吐き出していく。

「キシャッー!!」
 声をあげ、地面に付すジャイアントゴーレム。原型こそ保っていたものの、6本あった手足はちぎれ、外殻の至るところに穴が開き、どくどくと茶黒いエンジンオイルめいた体液を流している。

「やった、か?」
 ジャイアントアントは半ばから砕かれた手足を動かし、はいずりながら戦車に背を向けた。その強靭な生命力にはタクムも驚愕する。

 逃げる気だろうか。体の向きこそ変えられたものの、ほとんど死に体ではある。そう長くないことは誰の目にも明らかだ。

「ふ、――ぅッ!?」
 タクムがふぅと肩を撫で下ろしたちょうど時、マイクロ戦車が猛烈に加速する。予期せぬ挙動に不意をつかれ、銃座に強かに頭部を打ち付ける。

 4つの脚部を巧みに使って衝撃を吸収し、乾いた荒野をローラが蹴り上げる。不整地であるにも関わらず、60キロもの高速でひた走った。ジャイアントゴーレムから離れる――まるで逃げるように。

『マスター、ハッチの中に!』
 アイから再び切迫した声が放たれる。何がなにやら分からぬままにタクムはハッチを下ろし、戦車の中に入り込んだ。

 車外カメラの様子を映し出す、運転席のディスプレイにはこちらに背中を向けたまま丸い腹部を突き上げるジャイアントゴーレムの姿があった。

『マスター、揺れるよ! 何かに捕まってて!!』
 タクムはとっさにハッチを開ける取っ手を掴む。

 ボシュ、と真ん丸い白い何かが、黒い蟻の肛門あたりから吐き出される。同時、戦車の挙動が乱れた。右側脚部のローラにはブレーキランプが付き、右脚部のローラだけが回転する。

「うぁ……うわ……――ッ」
 ぎゅるん、と世界が横に回った。一回、二回、三回転してから今度は縦に回った。レースゲームでクラッシュした時みたいだ、とタクムは思って、今がちょうどその時なのだと気付いて戦慄する。

「うぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
 タクムは車内で悲鳴をあげながら、気を失った。

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