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錆び付いた明日
作:朱希



ありふれた特別な日常


『5限目ってなんだっけ?』
暫し考えて
「現国。」
『マジで!?辛島じゃ〜ん。ヤル気ねぇ〜。』机に突っ伏す。
コイツは上村健一
この高校の入学式後にいきなり馴れ馴れしく話しかけ握手を求めてきた失礼なヤツ
「お前っていつもヤル気ねぇーじゃん。」
『言えてる言えてる。』
オレの言葉に前の席から相槌をうったのは瀬名希(せなのぞみ)上村と同じ中学で小学校の頃からの親友らしい。
『…お前らひでぇ〜。』
『冗談だよ冗談。』そう言いながら希は笑った。
身を乗りだし少し真剣な顔をして希がそう切り出した。
このあたりからようやく意識が繋が繋がった。
その直前までしばらくたわいもない話が続いたらしいがどんなことを話したか全く覚えてない。
最近何故か記憶が時々飛び飛びになる時がある本当にたまにだが、一度病院に行った方がいいかも知れない。
しかし、二人の表情から伺う限り僕はうまく相槌をうって話は噛み合っていたらしく一安心した。
『知ってる知ってる!!あれだろ?最近噂になってる極道の先生が不良高校生と…』
『違うっつうの!!』はははっ…とオレは苦笑いしながら
「…バラバラ死体事件…だろ?」
と言った。
『そうそう!!あの事件気持ち悪くない?首を絞めて殺してから死体を首、手、胴体、足に分けてるらしいじゃん。』
『あぁ。確かもう3人目らしいぜ』
『それってさぁ〜。ユウん家の近くだよね?』希にツッコミを入れられ倒れた椅子をなおしながら健一が割って入ってきた。
『えっ!?そうなの!?』希が興味深そう視線をこちらに向けてくる。
「まぁ。結構近いよ。」
オレがちょうどそう言った時チャイムが鳴ったそれと同時に教室のドアが開いた。
辛島だった。
健一と希が声を揃えて言った。
『また時間通りだし…。』
辛島の授業ついては意見が真っ二つに分かれる。辛島はいつも時間通りに授業を始め時間通りに終わる。
その代わり、授業はとても分かりやすくズバリ大学受験対策という感じだ。しかし、一つだけ重大な欠点がある。
授業をしていた辛島がオレの方を向いてピタリと止まった
『柊。』
『あっ!はい!!』
『窓の外を見てないでちゃんと授業を聞けよ。』
『…すいません…。』
教室中に笑いがこぼれる
『静かにしろ。授業を続けるぞ。』何事もなかったように辛島は授業を再開した
隣の席の柊さんは恥ずかしそうにうつ向いている
これがなきゃ好きなんだけどな…
放課後、回りの皆が帰っていく中『よっしゃあーっ!!今日も終わりだぁ〜!!』勢い良く教室を飛び出し、健一は背伸びをした。
『まだ終わってねぇーよ。24時までは今日だ。』口を歪めて希は嫌味たっぷりに言った。
『……………。』
無言で健一は希の背後に素早く周り込み、首に手を回してヘッドロックを決めにかかった。希は首に巻かれた腕を掴んだ。
『ギ、ギブギブ!!』
『ん?聞こえないなぁ〜。』
『ギブ…アップです…。』
『あれ〜?そんな言葉求めてないんだけどなぁ〜。』
しばらくして遂に観念したらしく
『ごめん…なさい…。』
その言葉を聞いて満足したのかようやく健一はヘッドロックをほどいた。
「余計なこと言うからだよ」
オレは小さく呟いた。
『うるせぇ…。』どうやら聞こえていたらしく、オレは希に脇腹を軽く殴られた。
そういえばもう10月か…。
まだ5時なのに落ちかけている日を見てそう思った。
『帰りにゲーセン寄って行こうぜ』
『え〜。またかよ〜。昨日も行ったじゃんかぁ。』
『なんだよ。行かねぇーの?』
『いや、行くけどさ。』
校門の出入り口で2人が立ち止まりオレを見た。
『んで、お前はどうする?』
「ん?あぁ…。オレは今日用事があるから。」
『そっか。じゃあな。また明日。』そう言って健一は手を挙げた
「おう。また明日。」
オレも手を挙げた。それと同時に健一達と反対に歩き始めた。
『Bye-bye!! ユウちゃん!!』
ユウちゃんはやめろと言おうと思い振り向くと希は思いっきり手をふっていた
?ふと、妙な違和感を感じたが何故か分からず気のせいだと納得してまたオレは歩きだした。
ある程度進んだところで後ろを振り返り、彼奴らの姿がもうないことを確認するとゆっくりと学校の北館へと足を向けた。
オレの通う高校は東館、北館、南館に分かれていて東館には1、2年の教室があり北館には文化部の部室がある。
北館の4階、文化部のひとつ科学部のある科学室の扉をオレは開いた。

『………………。』
チラッとこちらを見たかと思うと次の瞬間には視線を手元のケータイに戻した。
教室には蒼依しか居なかった。
少し茶色い髪に─左耳には十字架のピアス、恐らく校則違反であろう少し屈めば中が覗けそうな短いスカートからのぞく華奢な細い足と色素の薄い肌。
彼女は入口から数えて一番奥。
科学室特有の水道が二つある大きなにチョコンと座っていた。
「悪い。少し遅くなった。」
彼女に近付きながらそう言った
『……………。』
彼女の正面に立ち
「少しじゃんか。そんなに怒るなよ。」
『…………………………。』
そぉーっとしゃがもうとすると『…殺すよ。』
「……………………。」
とても簡潔で分かりやすい素晴らしい忠告だ。
ほどけた右足のくつひもを結ぼうとしただけなんけど…。
いや、本当にマ・ジ・で断じてスカートの中を覗こうとしたわけではない。
たぶんね…。
気まずい沈黙
ゆっくりとしゃがみかけた姿勢を戻そうとすると

『どうして遅くれたの?』
ケータイを覗きこんだままの状態でこちらに視線も向けずに聞いてきた。
素早い指運びでボタンを押している。恐らくメールだろう。
「いや、別に友だちとちょっと話してただけさ。」
『へぇ〜。あんたみたいな変態にも友だちが居るんだぁ〜。』
そこでようやくこちらに顔を向け、わざとらしく驚いた様子で皮肉っぽく言う。指は動かしたままである。
「…まぁーね。」
「ところで、今日はなんの用?」
このまま話を続けると何時までもチクチクと言われそうなため話を反らした
『別に用なんかないけど。』
「……………………。」
『なぁーに?用がなかったら呼んじゃ駄目なわけ?』
取りあえず何かを言わなければと思い
「……いや、普通は用がなかったら呼ばないだろ。」
と言うと
『いいじゃん。私とあなたの仲なんだから。』
「そういう人が聞くと誤解するような言い方はやめろ。」
携帯をバッグに入れて机から軽く飛び下り目の前のオレにバッグを持たせると教室から出ていく
『取りあえず出ない?』
「出るのはいいとして…これは何?」
取りあえずバッグを右手に持って蒼依に続いて出ていく
蒼依は歩きながら言った
『気にしたら負けよ。』
─────────────
今頃あいつらはゲーセンで楽しんでるんだろうなぁ。
まぁ、そんなことはどうでもイイんだけど。
早く帰りたいなぁ。と思いながらもオレは何故かアイスコーヒーを飲んでいる
『つまんない』
「…だね」
『とってもヒマ』
「…だね」
蒼依はポテトを食べながら携帯をいじっている
「蒼依さん?え〜っとですね…大変申し上げにくい」
『ダメ』
ソッコーで否定されてしまった。いや、それ以前に
「…まだ何も言ってないんですけど?」
『どうせ帰りたいとか言うんでしょ?』
「そうだけど、特にすることないし。それにそろそろ帰った方がいいんじゃない?もうこんな時間だし。おばさんも心配すると思うよ。」
携帯で時間を確認すると9時を少し回ったところだった
『蒼依ー!!』オレが言葉を言い切るとほぼ同時に店の入口から声が聞こえた
蒼依が振り向くと三人の女の子が手を挙げてこちらに歩いてくる
『優衣に茜じゃない。こんなとこにどうしたのに?』
『外から見えたからさぁ〜。ってか彼氏なんかいないって言ってたのにぃ〜。』
『ち、違うわよ。ただの知り合い。』
『え〜っ。本当にぃ〜?』
あんたも何か言いなさいよとでも言いたそうな顔で睨むので
「全然違いますよ。オレはただの友達です。」












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