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40.おれだけの装備

 次の日、おれはセレンの地下一階にもぐって、エンカウントするスライムに片っ端から追尾弾を撃ち込んだ。

 ドロップSで100%ドロップ、追尾弾で二倍ドロップ。


 セレン地下一階における最強のパターンをつかって、無心になって、余計な事は何も考えない作業モードで稼いだ。


 なぜ地下一階なのかというと、効率を出す無心モードだとモンスター見たら何も考えないで銃弾をぶち込むから、地下二階だとレアのトレントをつい()ってしまって事故るから。


 今は事故はいけない、だから余計な事を考えないですむように地下一階で稼いだ。


 魔法カート満タンに持ち帰って売って、約8万ピロ。

 それを三回繰り返して、三回目は追尾弾が弾切れになって効率落ちたから、途中で脱出した。


 稼ぎは20万ピロ。

 おれは、これを使ってテストを行おうとした。


     ☆


 ダンジョンからだいぶ離れたところ、人気のないところ。


 ダンジョンもテントの群れも、セレストがゴミの山もだいぶ小さく見えてしまうくらい離れたところで、おれは袋を取り出した。


 今日の稼ぎ約20万ピロを投入してかった、四つの腕輪。

 腕輪はそれぞれ違う宝石がついてる。


 ピンク色のサファイヤ。

 オレンジ色のサファイヤ

 白色のパール。

 赤色のルビー。


 全部あわせて約20万ピロ。

 一つあたり平均5万、エミリーにプレゼントした指輪の20分の1だ。


 ……。


 値段じゃないはずだ、うん。

 気を取り直して、まずはピンクサファイヤの腕輪をおいて、距離をとる。

 二丁の銃に冷凍弾と火炎弾を込めて、待機。


 火炎と冷凍、未知のモンスターを待つ時はこれが一番状況に対処出来る組み合わせだ。

 もちろんいざって時のために、通常弾も回復弾もすぐに込めるように用意してある。


 しばらく待ってると、腕輪からハグレモノが(かえ)った。

 燃えている、人魂のようなモンスターだった。

 頭の中に何となく、火の下級精霊、って言葉が浮かび上がる。


 距離が離れてるせいか、精霊は攻撃してくるでもなくゆらゆら漂っていた。


 銃を構える、狙いを定めて、冷凍弾を撃つ。

 弾は命中して、冷気がほとばしった。


 火の精霊はこっちに気づいたのか、ゆらゆらと漂ってくる。

 火の勢いはさっきより弱くなっている。


 続けて冷凍弾をぶち込んだ。

 当てる度に火の勢いが――人魂の大きさそのものが小さくなって。


 遠距離から5発通常の冷凍弾を打ち込んだらそれは跡形もなく消えて、孵る前と同じもの、ピンクのサファイヤの腕輪がドロップした。

 近づき、拾い上げる。


 ――鉱物ドロップが+1します。


 いつもの声が頭の中に聞こえた。

 なるほど、これは一種類だけか。

 100万ピロの指輪が全部+1で、これは一種類だけ+1。

 まあ、値段相応かもしれない。


 次にオレンジ色のサファイヤの腕輪を孵した。

 水色の人魂がでて、火炎弾で始末した。

 同じ腕輪が出たから、拾った。


 ――鉱物ドロップが-1します。


 ドロップが落ちるのか!

 まあそういう装備もあるし、ドロップFは状況によっては役に立つから使い出はあるだろ。

 いや、もしかして。

 Fから更に-1でドロップが完全に0になるかも知れない。


 Fでもちょっとはドロップするけど、完全な0じゃない。

 確率ってのは大きく分けて二種類あるとおれは思ってる。


 100%と0%、それとその他の二種類だ。

 100%も0%はベクトルが正反対の「絶対」だからな。


 -1……今度またエミリーに協力してもらおう。


 次はパールの腕輪。

 今度は犬がでた。

 中型犬くらいで、獰猛な顔をしてて、体が炎で出来ている。

 だから冷凍弾を打ち込んだ。

 撃っても体の炎があまり消えてないから、冷凍弾の融合弾を撃ち込んだ。

 それに倒された炎の犬はパールの腕輪をドロップした。


 ――植物ドロップに対してダメージ10%アップします。


 お?

 なんか面白いのが出た。

 特定種族に対してダメージアップする装備品か。

 これは使える方だぞ。


 そう思いながら、おれはちょっとクスっとなった。

 スライム系とかアンデッド系とかじゃなくて、植物ドロップというのがこの世界らしいってちょっと思った。


 何にせよ、このパールの腕輪はもう一つか二つ手に入れておこう。

 もうしばらくしたらシクロにかえる、ほとんど植物をドロップする農業都市シクロ。

 植物ドロップにダメージアップはもっとほしい。


 最後の腕輪、赤のルビーの腕輪もハグレモノに孵した。

 今度は黒い玉が浮かび上がって、体に電気をパチパチと纏っている。


 さっきの二体以上に近づきたくない相手だ。

 安全策をとる。集中力を研ぎ澄まして、火炎と冷凍を撃つ。

 モンスターの目の前で融合して、消滅弾になった。

 消滅弾は雷の精霊を呑み込んで、一撃で倒した。


 赤いルビーの腕輪がドロップされる、拾い上げる。


 ――ハグレモノのドロップ数がたまにアップします。


「え?」


 思わず声がでた。

 かつてスライムブロスの時に聞いたようなものに似てる、でも色々と違う効果が聞こえてきた。


 テルルの地下一階で、スライムブロスというモンスターは指輪をドロップした。

 あれはドロップが倍になる指輪だが、ダンジョン内でしか効果がでない。

 ハグレモノには効果がでないから、そのままエミリーにあげたままになってる。


 それとは違う効果。

 対象がはっきりとハグレモノに限定される、

 植物系にダメージアップと似てる、効果がハグレモノに限定される。

 多分ハグレモノにダメージアップのもあるんだろうけど、それはそれ。


 いまは、この腕輪の効果を詳しく知りたかった。


 おれは集荷箱を取り出した。

 ニホニウムから持ってきて、特殊弾を補充する集荷箱。


 それを置いて、距離をとって、五十体のスケルトンを孵した。


「……冷凍弾にしよう」


 スケルトンは通常弾で倒せるが、あえて冷凍弾を使った。

 込めて、撃って、込めて、撃って。

 一発一殺、冷凍弾で確実にスケルトンを倒して行く。


 50体のスケルトンはすぐに全滅した、おれはドロップした冷凍弾を拾い集めて、数を数えた。


 全部で、55。

 50体を倒して、55発。


 腕輪をつけてない時に比べて、1割増えていた。

 他の人のハグレモノは0%――「絶対」だから。


 この腕輪は、実質おれだけが使える専用装備だった。

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