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28.ステアップ、ランクアップ、ステップアップ

 朝、ニホニウムに入る前に、ダンジョン表にあるナウボードでステータスの確認を行った。


―――1/2―――

レベル:1/1

HP S

MP F

力  S

体力 F

知性 F

精神 F

速さ C

器用 F

運  F

―――――――――


 レベルが上がらなくて、全部ドロップした種で能力を上げてるから、バランスがすごく悪くてまだ()が長いけど、このまま地道にニホニウムの地下九階まで潜ればオールSになるだろうな、という確信はある。

 だから今はバランスが悪くても、育っていくのを考えればむしろ楽しみだ。


 そういえば、ゲームで仲間になるモンスターが、賢さっていうステータスが通常の限界でもものすごく低くて操作できなくて、アイテムでそこを伸ばしてやらないとつかいものにならないのを思い出した。


 そういうのとにてるなあおれ、なんて思ったりした。

 能力は2ページある、ついでに2ページ目も確認した。


―――2/2―――

植物 S

動物 S

鉱物 S

魔法 S

特質 S

―――――――――


 アイテムドロップに影響するステータス。

 こっちは最初からSで、変わってなかった。


 能力を確認したから、気を取り直してダンジョンに潜った。

 まずは地下二階だ。


 目当ては地下三階の速さの種だが、三階を効率的にすすめるために二階で火炎弾を調達する必要がある。だからこっちが先だ。

 集荷箱をつかって、エンカウントしたゾンビを片っ端からヘッドショット、箱に種を溜めていく。


 ちなみにニホニウムのアンデットモンスターはちょくちょく奇襲をかけてくるが、今日は一度もダメージを負ってない。

 速さがCまであがった恩恵だと思う、目の前の壁が崩れて襲われても、瞬時に安全圏まで退避して、落ち着いてゾンビの頭を狙える。


 またまた、能力アップを実戦で体感する事ができた。


 こうして火炎弾を集めて、地下三階で炎が弱点のマミーを作業で倒して行って。

 午前中で、速さがCからBになった。


     ☆


 午後はあまり働く気にはなれなかった。

 なんというか天気がいいし、街は賑やかだったから、のんびりやって働かない一日にしようって思った。

 だからテルルの地下四階でバッドスライムを倒してタケノコをいくつか、地下五階でヘビスライムを倒してパンドラボックスにスイカ一個。

 付き合いのある人達に最小限の納品だけして今日はあがりだ。


 と思っていたのだが。


「リョータさんって、テルルの地下五階まで行ってますよね」

「うん?」


 タケノコを納品して、金額を確認してもらってる最中。

 エルザがおずおずとした感じで聞いてきた。


「行ってるけど?」

「他のダンジョンはどうですか? どこまで潜ってますか」

「ほか? テルルが地下五階で、ニホニウムが三階で、シリコンも人助けの三階、アルセニックは地下一階と――ああ人助けで一度十階まで行ったか」

「そうですか……」

「どうしたんだ?」


「それなら、免許はまだですよね?」

「免許?」


 なんの事か、とエルザを見つめ返した。

 この世界に来てはじめて聞く言葉だ。


「知らないんですか? シクロではダンジョンの地下六階以降は免許がないとダメなんです」

「許可証みたいなもの? それがないといけないのか?」

「はい。世界中のダンジョンに共通することなんですけど、ダンジョンって五階ごとに危険度が上がるんです。だからダンジョンを持つ街はそれに合わせた施策があって。シクロはシンプルに、五階ごとに許可制にしてるんです」

「他の街はどうしてるんだ?」

「許可がなかった人のものは買い取れなかったり、許可されてないエリアでケガすると医療費が通常の三倍とか、色々です」

「そうなのか。一応入れることは入れるのか」


 いろいろ面白いな。

 やっぱり「ダンジョンのモンスターが全ての物資をドロップする」世界だから、それに関したルールに面白いものが多いな。


 朝チェックしたドロップ能力を思い出す。

 ドロップはオールSだし、農業都市シクロだけじゃなくてそのうち他の街にも行ってみたいな。


「それで……お願いなんですけど」

「うん?」


 他の街に思いをはせていたらエルザに引き戻された。

 彼女はおずおずと、ちょっとだけ申し訳なさそうに切り出した。


「リョータさんまだでしたら、免許をとってほしいなあって。その、常連さんに免許持ってる人が多いと店のランクが上がるんです」

「ああ、なるほど」


 なんとなく分かる話だ。

 免許はその性質上強さのある程度のパラメーターになる。

 冒険者は所属してる訳じゃないけど、外からは所属しているように見える取引先だ。

 その冒険者に免許持ちが多ければ多いほど格好がつくというもの。


 エルザは伏し目がちにおれを見た。

 こんなこと頼んで申し訳ないって顔だ。

 エルザやこの店にかなりお世話になってるし。


「わかった、どこで何をすればいいのか教えて」


 話を理解するや、おれは二つ返事で承諾した。


     ☆


 エルザにもらった地図で、シクロの役所にやってきた。

 野菜をもしたヤケに立派な建物の中にはいって、これまた教わったとおり地下に下りた。

 そこはだだっ広い空間だった。


 なんとなく、昔ハワイで行った射撃場を思い出す。


 カウンターが一つあって、中年の男が一人座っている。

 男は気だるそうに話しかけてきた。


「……なんのようだ」

「えっと、地下6階に入るための免許を取りに来たんですけど」

「……実績は?」

「テルルの地下五階のスイカを定期的に納品してる」


 エルザから教えてもらった言い方をすると、男はやっぱり気だるそうなままだったけど、立ち上がって動き始めた。


「……テストをする」

「テスト?」

「テルルだったな……五階より下のモンスターをここで倒せれば合格だ」

「シンプルだな」

「……安定して倒せる力があるかどうかが一番重要だ」

「たしかに」


 この世界でダンジョンに潜るのはモンスターからのドロップ、つまり物資を生産する事だ。

 それは一階もぐってボスを倒してくる、というゲームのような目的じゃなくて、毎日もぐって、安定してものを持ち帰るのが最重要だ。

 だからシンプルイズベスト、安定してモンスターを倒せる実力さえあれば、何の問題もないのはあたり前と言えばあたり前だ。


「わかった、とりあえずテルルの地下六階にいけばいいんだな?」

「……いや、ここでする」

「え?」


 戸惑ってる間に、男は準備を進めた。

 広大な空間の真ん中にメロンを一つ置いた。


 ……何となく察した。


 男が戻ってくる、おれ達はメロンから離れたところでしばらく待った。

 メロンがハグレモノ化して、モンスターに戻った。


 メタリックな色合いをしたスライムだ。


「メタルスライム……か?」

「……スチールスライムだ、刃物は基本効かないくらい硬いぞ」

「これを倒せばいいんだな」

「……そうだ」

「わかった」


 男を置いて、前に進み出た。

 スチールスライムがぴょんぴょん跳ねている。

 敵意はなさそうだ、こっちに気づいても攻撃をしてこない。


 理由はわからないが、まずは殴ってみた。

 スチールスライムが吹っ飛ぶ――がダメージはなくてピンピンしてる。

 硬いな、力Sでもダメージはほとんどないのか。


 まあ、おれが「メタルスライム」って呼んだ瞬間想像はついてたが。


 なら、次は本気で行く。

 銃を取り出す、銃弾を二発込める。


 ぴょんぴょん跳ねるスチールスライムに連射した。

 時間差で命中した。

 魔法陣がでて、まずは盛大に燃え上がって、その後にかっちかっちに凍った。


 ゆっくり近づいて、軽く小突く。


 パリーン。

 スチールスライムは砕け散った。

 ちなみに銃弾をドロップしたが、男に見られないようにサッと回収した。


「……今のは?」


 相変わらず気だるそうだが、男は驚いていた。


「疲労破壊。短時間で温めたり冷やしたりするともろくなるんだ。ああいう硬いのはな」

「……すごい事を知ってるもんだ」


 男はものすごく感心した。

 割と普通の事だけど、こっちではあまり知られてないのか?


 まあいい。

 それよりもおれは無事に免許を、シクロの全ダンジョンの地下6階から10階までの免許を手に入れた。


 役所を出た後、ふと思う。

 冷凍弾と火炎弾、疲労破壊。


 銃をもう一丁ほしいなあ、と思ったのだった。

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