23.効率アップ
店の中が更にざわざわした。
「おいマジかよ」
「ネプチューン一家への勧誘って、最後にあったの三年前じゃないのか?」
「しかもリーダー直々の誘いだぜ」
あっちこっちがざわついて、全員がメチャクチャ驚いてる。
何人かは固唾をのんでこっちの出方を見守ってる。
そんなにすごい事なのか、今のって。
「ねえ、どうかな」
「悪いがその気はない」
「そっか、それは残念。あっ、念の為に聞くけど、ホモ疑惑だから断ったとかじゃないよね。それなら安心して入っても大丈夫だから」
「違う、そうじゃない」
はっきり首を振った。
ホモとかそういうのとは――うん、関係ない。
そうじゃなくて、当面組織に所属する気はないんだ。
この世界に来て、今すごく気が楽だ。
残業地獄だった前から一変、自由に生きて――文字通りの自由業を満喫してる。
ネプチューン一家ってのがどういうのか分からないけど、当面はどこにも所属する気はない。
「うん、わかった」
ネプチューンはしばらくおれを見つめたあと、頷いていともあっさり引き下がった。
と、思いきや。
「いつでも気が変わったら来てくれて良いからね。ぼくはもうキミは仲間だと思ってるから」
結局は全然引き下がってなくて、そんな言葉を残して、二人の女をつれて立ち去った。
ネプチューンが残した言葉を聞いて、客達はますますざわざわしたのだった。
後から思い出させられたけど、ネプチューン一家って前に聞いた、ドロップAが五人もいる、ニホニウムを調査したというエリート集団の事だった。
聞いたけどすっかり忘れてた。
☆
テルル地下一階。
あの後エミリーから魔法カートを受け取って、居心地の悪くなった店をでて、ダンジョンにやってきた。
うん、落ち着く。
あんな事があった後だから、余計にダンジョンの中が落ち着く。
深呼吸して、すっかりなじみになったダンジョンの空気を肺に取り込んで。
さあ狩り開始だ!
早速スライムが現われた。
銃を構えてトリガーを――となったところでふと魔法カートが目に入って、動きがとまった。
ある光景が頭をよぎった。
「……うん、それが出来たら効率的に狩れるな」
頷き、言葉に出してつぶやいた。
おれは思いついた事をやってみることにした。
銃を構えたまま待った、スライムが飛んで来た。
手のひらを突き出して飛んで来たスライムを受け止めて、後ろに流した。
スライムが魔法カートの真上に来たところで――トリガーを引き。
銃弾がスライムを撃ち抜いた。
空中でスライムがポン! ともやしをドロップした。
もやしはそのまま真下に落ちた、魔法カートにそのまま入った。
成功だ。
すぐにまた別のスライムが現われた、待ち構えて、飛びついてきたのを受け流して、魔法カートの上で撃つ。
もやしがそのまま魔法カートに入った。
またスライムが現われた。
今度のスライムの体当たりがちょっと外れた。
手を伸ばして掴んで、掴んだまま魔法カートの上で撃つ。
もやしがカートにはいった。
結構うまく行った。
モンスターを魔法カートの上で倒す事で、ドロップしたのがそのままカートに入る。
気軽に出会った瞬間即殺! とはいかなくてやる事が増えたが、ドロップがそのままカートに入る事で時間は短縮した。
☆
もやしを換金した後、地下二階に来た。
やり方をもうちょっと改良してみようと思った。
まず、カートを自分の前に来るように押した。
降りてきてすぐに眠りスライムが現われて、飛んで来た。
狙いをつける、集中する。
飛んで来た眠りスライムがカートの真上に来たところで――撃つ!
銃弾が眠りスライムを撃ち抜く、ニンジンがドロップしてそのままカートに入った。
よし、上手く行った!
カートを前に出して、来た瞬間に撃ってそのまま入れる。
これなら手順が少ないし、受け流すやり方よりちょっと早い。
このやり方がものすごく手にあった。
カートを押して、来たのを撃ってそのまま入れる。
カートを押して、来たのを撃ってそのまま入れる。
やってるうちに、スーパーでカートを押してポンポンポンポンとカートに商品を入れてる様な感じになってきた。
このやり方だと、前の半分くらいの時間でカートを満杯にする事ができた。
うん、効率も上がるし、これなら稼ぎに余裕がでるな。
この日、おれはテルルでのスライム狩りの効率を追求し続けた結果。
なんと、満杯の魔法カートをシクロまで五往復することが出来て。
「半日だけでこんなに回数持ち込んでくる人初めてみました……」
エルザに絶句されてしまうのだった。