表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/611

11.Gの逆襲

 次の日、朝はニホニウム地下二階で日課のゾンビ狩りをした。


 銃にだいぶ慣れてきて、連射が出来る様になった。

 精度もあがって、不意打ちを食らわない限りはしっかりヘッドショットを決められる様になった。


 体術とのコンボもいくつか練習した。

 殴って、蹴って、投げて。

 崩してから銃弾を叩き込む方法を体に叩き込んだ。


「また奇襲か! やたらと多いなニホニウム!」


 壁が崩れてゾンビがいきなり襲ってきた。

 銃を持ってない右手を突き出すとたまたま首をつかんだ。

 そのままゾンビの首をつかんで持ち上げて、眉間に弾丸をぶち込む。


 襲われてひやっとしたが、ひやっとするだけですんだ。


 そのままゾンビを狩り続けて、ドロップの種で力はAまで上がった。


     ☆


 午後はテルルの地下三階に来た。

 昨日の反省を踏まえて、今日は一人で来た。


 そうしてよかったと思った。

 というのも、地下三階にいると、見かける女性の冒険者がみんなそそくさと通り過ぎていくからだ。


 下の階層に潜る人も、下から上に戻る人も。

 女性はほぼ全員、急ぎ足で過ぎていく。


 コクロスライムが現われた。

 見た目はスライム、サイズは手のひらの約半分。

 体の色は黒光りしてて、カサカサカサって音をたてて移動する。


 やっぱり女の人は苦手なんだなあ、と思った。

 でも、練習にはいいと思った。


 銃を構える、狙いをつけて――撃つ!

 外れた!

 スライムを外れて地下道の様な地面に打ち込まれて、小石を飛び散らせた。


 カサカサカサ。

 スライムが接近――飛びつく。


「うおっ!」


 とっさにかわした。

 怖い、今の怖かった。

 そいつはおれの顔めがけて飛び込んできたのだ。


 一瞬だけ視界が黒光りするヤツに七割遮られた。

 心臓がぱくぱくする。

 ある意味、奇襲してくるゾンビよりも心臓に悪い!


 気を引き締めて、銃を構えて、今度こそ狙いをつける――。


 パン! パシュ! ポン!


 弾丸はしっかりコクロスライムを貫通して、でっかいカボチャをドロップした。

 何度見ても手のひらサイズのスライムからバランスボール大のカボチャがドロップされる光景はポップコーンのそれに見える。


 スライムそのものは気持ち悪いけど、ドロップの瞬間はちょっとした快感だ。


 そして、また大量に現われた。

 一匹見たら三十匹は居ると思え――三十はないけど、それに近い。

 今日はエミリーがいない、道を塞いでも問題はない。


 おれは深呼吸して、全身全霊を込めて銃を乱射した。


     ☆


 銃弾の残数が50を切ったところで、コクロスライムの群れを一掃した。

 昨日同様、一斉にドロップしたでっかいカボチャがダンジョンの道を埋めてしまった。


 それをダンジョンの表に一旦運び出してから、エミリーを呼んだ。


「今日も大漁なのです」

「そうだな。昨日と大体同じくらいの分量だな」

「昨日は……えっと、一つ大体1万ピロくらいだったです?」

「そうだな」


 グラム単価で言えば、カボチャともやしはそれほど差はなかった。

 だかこのカボチャはメチャクチャでかかった、そして身がずしりとなってて重かった。

 食堂とかそういう場所の業務用に下ろせるからって、エルザは大喜びで買ってくれた。

 それはエミリーが言ったとおり、1個あたり1万ピロくらいの値がついた。


 昨日の分、そして今日の分。

 全部売れば50万ピロくらいにはなる。

 結構な収入だ。


 50万か……。

 それくらいあれば中古の魔法カートを買えるかもしれないな。

 いやいやもうちょっといい部屋に引っ越すのもいいかもしれない。

 その前にエミリーをねぎらうために、一緒にいいメシを食いに行こう。


 金の使い道に色々想像をはせて、密かにテンションが上がった。


「さて、頑張って運ぼう」

「ハイです」


 カボチャを運んで、買い取ってもらった。

 戻ってきてまた運んで、買い取ってもらう。


 一つあたり数十キロだが、おれも、130センチくらいの小柄なエミリーも普通に運べた。

 エミリーは元からでっかいハンマーを担いでたけど、おれも種で力を上げた成果が出ていた。


 そうして運び続けて、さて最後の一回――と戻ってきたその時。


 ショッキングな光景を見た。

 残った二つのカボチャのまわりに黒いのが群がっていた、群がってわさわさわさってなってた。


 遠くからでも分かる、黒光りするコクロスライムだ。

 スライムに群がられた巨大カボチャはあっちこっちに穴が開いて虫食い状態だ。


 ダンジョンの外にスライムか――。


「ヨーダさん……」

「――はっ!」


 ハッとして横を向いた、エミリーが無表情で……死んだ魚の様な目でカボチャを見ていた。


「あのカボチャは……もうだめなのです」

「待てエミリー早まるな! 確かにあれはもうだめだけど」

「わたしは……この時のために生まれてきたのですね……」


 エミリーはそういって、一旦離れた所においてあったハンマーを取った。

 ってこの時の為とか重すぎる。


「待てエミリー、おれがやる!」

「でも……」

「いいからエミリーは下がってて」


 エミリーを押しとどめて前に出た。

 まったく! 外にコクロスライムが出てくるなんて聞いてないぞ!


 銃を握り締めて巨大カボチャに突撃した。

 弾は残り少ない、ここで外したらエミリーがますます大変な事になる。


 一発も外せない――。


 昨日以上の集中力を発揮した。

 突撃しつつ、カボチャから散っていくコクロスライムを撃った。


 逃げてくヤツから撃った、一匹でも逃したりすると大変だからとにかく撃った。


 銃を乱射して、とにかくスライムを屠っていく。


 カチ、カチ。


「くっ! 弾切れか」

「やっぱり、わたしはこの日のために――」

「ええい!」


 銃をしまってカボチャを殴った。

 そこにいるコクロスライムごと殴った。


 ぺちゃ!

 嫌な感触がしたが、仕方ない。

 おれがやらなきゃならないんだ。


「うおおおおお!」


 気勢を上げて、スライムを殴っていく。

 全力で、カボチャごとスライムにラッシュをかけて殴る。


 やがてカボチャが粉々になるのと共に、スライムも全滅させられた。

 なんとか……なんとかなったぞ。


 ホッとした。エミリーを見る、黒光りするヤツがいなくなって、彼女の顔もあきらかにホッとした。


 よかった、彼女にやらせないですんで。

 にしても、なんでコクロスライムが外に? ドロップしたカボチャに群がってるのとなんの関係があるんだ?

 もしかしてドロップアイテムをダンジョンのそとに放置するとそこから生まれるとか?


 なんて事を思ってると。


 ポン。

 ポポン。

 ポポポポポポポポン。


 倒したコクロスライムが次々とアイテムを――さっき使い切った銃弾をドロップした。


 そういえば。

 ダンジョンの外に現われたコクロスライムはハグレモノだったんだな。


 ハプニングがあって、二万ピロの損失と危うく修羅の道に踏み入りかけたエミリーのヤバイ雰囲気と引き替えに。

 おれは、ハグレモノから500発近い銃弾を補充できたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ご都合主義、万歳 楽しいです、凄く楽しいですw
[気になる点] あらゆるものがダンジョンで得られるのなら、このハグレモノの産まれるシステムではおかしくないだろうか? あらゆるもののそばで人がいないとハグレモノだらけになる。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ