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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 古い契約と新しい(?)アイテム

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(9)宝玉作成の考察

 クラーラとの交神を終えたシュレインは、その足でヴァミリニア城へと向かった。
 結晶石は、ヴァミリニア宝玉でしか使わない物のため、城にしか置いていないためだ。
 宝玉の置いてある部屋からいくつか結晶石を持ち出したシュレインは、続いて儀式を行うための部屋に向かう。
 未開発の宝玉に結晶石を使った場合、どんな現象が起こるかわからないため、念のための措置である。
「・・・・・・これで準備は整ったわけじゃが、さて、これをどうすればいいのじゃ?」
 ヴァミリニア宝玉であれば、結晶石を近づければ、自動的に中に取り込んでくれる。
 普段結晶石は、ヴァミリニア宝玉がある部屋と同じ場所に置いてあるが、それは部屋の中でも離れた場所だし、勝手に吸い込んだりしないように特殊な袋に包んである。
 それは、あくまでも予防的な措置ではあるが、長い間伝わってきた慣習である。

 宝玉を台の上に置いたうえで、結晶石を手にしたシュレインは、そっと結晶石を宝玉に近づけてみた。
「・・・・・・やはり、そうそう簡単にいくはずもないの」
 結晶石が宝玉に触れてカチリという音がしたが、結晶石が取り込まれる気配はなかった。
 いつもであれば、そこまで近づけなくともヴァミリニア宝玉が自動的に取り込んでくれる。
 となれば、なにかをしないといけないのだが、それがなにかはシュレインにもまったく見当が付かなかった。
「素直に取り込んでくれればいいのじゃが・・・・・・」
 そんなことを呟きながらシュレインは、知っている限りの方法を試してみる。
 だが、やはり結晶石が宝玉に取り込まれることはなかった。
「駄目、じゃの。・・・・・・仕方あるまい。やはり、素直に聞きに行くかの」
 自分でどうにかすることを諦めたシュレインは、最後にそう呟いてアマミヤの塔の管理層へと向かうのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「というわけで、教えてほしいのじゃ」
 いきなり頭を下げて来たシュレインに、考助は面を喰らったような表情になった。
「いや。いきなりそんなことを言われても、なんのこと・・・・・・って聞くまでもないか」
 考助も最近のシュレインが、ヴァンパイアの儀式関係で忙しくしていることはわかっている。
 それに、先日宝玉について質問されたばかりだった。
 シュレインを煽るような言い方をしていたのだから、考助が忘れるはずもない。

 だが、そこまで理解したうえで、考助は困ったような表情を浮かべた。
「うーん。でも、まいったな」
「なにがじゃ?」
 考助の顔を見て、シュレインは不思議そうな顔になる。
 その顔は、考助なら知っているだろうと確信しているようなものだった。
「僕がわかっていることは、前にも言った通りヴァンパイアが関わっているというだけで、どうやって作業をしているのかまではわからないんだよね」
 いくら考助といえど、ヴァンパイアがどんな方法を使って宝玉を加工したのかまではわからない。
 それに、クラーラは勘違いと言っていたが、まだその話をシュレインから聞いていない考助は、クラーラが知っていると思っていたこともある。

 考助の顔を見て、クラーラとの話を思い出したシュレインは、そのことを伝えた。
「というわけで、正確にはクラーラ神が直接宝玉の作成に関与しているというわけでは、無いということじゃ」
「あ~、なるほどね。でも・・・・・・うーん」
 シュレインからきちんと話を聞いたうえで、なお考助は首を傾げた。
 確かにクラーラの言っている権能のことは正しいだろうし、考助の経験が足りていないことは確かだろう。
 だが、それでも考助には、宝玉作成にクラーラが直接関わっているように思えるのだ。

 しばらく腕を組みながら天井を見ていた考助だったが、ふとシュレインに視線を移したあとにハッとした表情になった。
「あれれ? もしかするともしかするかな?」
「なにかわかったかの?」
 考助の顔を見て確信したシュレインは、そんな問いかけをしながらもニヤリと笑う。
「うん。いや、まあ。わかったというか、思い出したというか、思い付いた?」
「なんじゃそれは?」
 なんとも不安を感じさせる考助の言葉に、ニヤリ顔だったシュレインはガクリと肩を落とした。

 シュレインの様子を見てばつの悪そうな顔になった考助は、頭を掻きながら、
「いや、ごめん。でも、この予想が当たっていたら、クラーラが言っていたことも僕が考えていたことも、間違っていないことになるんだよ」
「つまり、どういうことじゃ?」
「つまり? つまり、シュレイン頑張って?」
「・・・・・・まったく意味がわからんのじゃが?」
 唐突に自分に振られたシュレインは、意味がわからずに首を左右に振った。
 そんなシュレインに、考助はひとり納得して頷いた。


 考助が考えたのは、実に単純なことだった。
 そもそも考助が宝玉作成にクラーラが関わっていると考えたのは、その工程にクラーラの権能が混じっていたためである。
 だが、シュレインの話では、クラーラ自身は直接関わっていないということだった。
 だとすれば、考助の考えが間違っているということになるのだが、そこで考助が思い出したのがシュレインの持つ称号だった。
 シュレインが《大地母神の抱擁》の権能を使って宝玉作成ができれば、考助が考えていた通りの結果になるのではないか、というわけだ。
 これであれば、クラーラが言ったことも考助が考えていたことも、どちらも間違っていないということになる。

 考助はさっそくシュレインにそのことを伝えたのだが、その本人は渋い顔になった。
「そうは言っても、吾がなにをすればいいのかは、まったくわからないのじゃが?」
「それなんだよねえ。・・・・・・なにかおもい当たる儀式とかない?」
「まったくないの」
 シュレインの簡潔すぎる答えに、考助も同じような顔になった。
「・・・・・・だよねえ。儀式、儀式・・・・・・」
 繰り返し儀式と呟く考助だったが、そんな簡単に儀式の内容が思いつくはずもない。
 そもそもヴァンパイアの儀式に関しては、考助はシュレインの足元にも及ばないのだ。
 そのシュレインがまったく思い当たらないと言っているのに、考助にわかるわけがない。

 しばらく腕を組みながら考えていた考助は、ふとなにかを思いついたような顔になった。
「そういえば、ヴァンパイアって自分の眷属を作れるって聞いたけれど、あれってどうやるの?」
 唐突な質問にシュレインは面を喰らったような顔になったが、特に隠すようなことではないので素直に答えた。
「ああ、あれは、『血を吸う』という行為をしながら、お互いに契約を行うのじゃ」
 ヴァンパイアが眷属を作る際には、お互いの同意が必要になる。
 強制的に眷属化することもできなくはないが、無理やりにやってしまうと大体は自らの意思を持たないただの人形になってしまう。
 そのため、よほどのことが無ければ眷属化が行われることはないのである。

「血を吸うって、要はお互いの力を交換する感じ?」
「まあ、そうじゃろうな」
 厳密にいえば違うのだが、ざっくりとした説明としては間違いではない。
「ということは、もしかしたらもしかするんじゃないかな?」
「・・・・・・なにか思いついたかの?」
 眷属化がどう宝玉の作成に繋がるのかがわからないシュレインだが、考助の言葉に期待するような視線を向けた。

 そして、それに対して考助は、自信はないと断りつつ、シュレインに自分の考えを話し始めるのであった。
考助、考える。の回でした。
次はいよいよ宝玉作成に取り掛かります。
別に狙ったわけではないですが、ちょうど十話になるので第一章は終わりですね。
(シュレインの話はまだ続きます)
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