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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 古い契約と新しい(?)アイテム

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(7)宝玉の成り立ち

 考助は、驚きで立ち尽くすシュレインを楽し気に見ながら、さらに説明を続けた。
「まあ、正確にいえば、ヴァミリニア宝玉その物じゃないけれどね。これは、それらの宝玉を作る前の最初の素材、といえば分かりやすいかな?」
「この宝玉? を元にヴァミリニア宝玉が作られる、ということかの?」
 かすれた声で聞いてきたシュレインに、考助は頷きを返した。
「覚えているかな? アルキス神殿の騒ぎのときに、プロスト一族のビアナから渡された宝玉のこと」
「あ、ああ、勿論じゃ」
 以前に考助は、ビアナから渡された宝玉に加工を施して、神殿の宝玉としていた。
 考助は、そのビアナから渡された宝玉が、どういう素材なのかをきちんと調べていたのである。
 ただ、そのときには、自分では作れないと結論付けて放置していた。
 それが、いま目の前にあるのだから、考助としても驚くと同時に楽しくもあった。
 なぜなら、これでまた一歩、ヴァミリニア宝玉の研究がはかどるためだ。

 考助は、ビアナから渡された宝玉のことを思い出しながら、さらにシュレインに説明を加える。
「もっといえば、この宝玉からさらに加工を加えないとあっちの宝玉にはならないんだけれどね。とりあえず、これが大元の宝玉であることは間違いないよ」
「なるほど・・・・・・の」
 いつものような覇気が感じられないシュレインの返答に、考助は苦笑を返した。
「シュレインの立場を考えれば驚くのも無理はないと思うけれど、そろそろ復活しない?」
「いや、そうは言ってもの・・・・・・」
 そう弱弱しく答えを返したシュレインだったが、考助の言う通りだと思うところもあったのか、いったんそこで言葉を区切って犬が全身の水気を切るように首をプルプルと振った。
 さらに、両手を自分の頬にパチンと音を立ててあてたあとには、いつものシュレインの顔になっていた。

 シュレインが復活したことを確認した考助は、なにかを思いついたような顔になって言った。
「それで、ちょっとした問題があるんだけれど・・・・・・」
「なんじゃ?」
「いや、いつまでも○○の宝玉とかって呼ぶのは面倒だから、なにか名前を付けない?」
 その、シュレインにとっては、どうでもいい内容に、思わず「あのなあ」とげんなりとした表情になった。
 確かにわかりにくいという問題はあるが、いま持ち出すようなことではない。
「わりといまは、どうでもいいことじゃの。あとで皆と相談すればいいじゃろ」
「え~・・・・・・あ、はい。すいませんでした」
 シュレインからギロリと睨まれた考助は、悪のりしているという自覚も多少あったため、素直に頭を下げるのであった。

 考助が頭を下げるのを見たシュレインは、宝玉のことについてさらに問いかけた。
「それで? これをどう加工すれば、あの状態になるのじゃ?」
「さあ?」
 あっさりとそう返してきた考助に、シュレインはジト目になった。
「おい?」
「いや、だって、本当に詳しいことは、わからないんだよ。前準備にヴァンパイアが関わっていることと、長い時間が必要だということはわかるけれど」
 肩をすくめてそう答えた考助に、シュレインはその顔に疑問を浮かべた。
「そうなのかの?」
「そうなんだよ。だから、ヴァンパイアになにか伝承みたないもの、伝わっていない?」
「そうはいわれてもの・・・・・・」
 逆に考助から聞かれたシュレインは、戸惑いの表情になった。
 少なくともシュレインは、そんな話を聞いた覚えはまったくなかったためだ。

 そんなシュレインを見ながら、考助はさらに続けた。
「まあ、当たり前といえば当たり前だけれど、特にヴァミリニア宝玉は、特定のヴァンパイアだけが使えるようになっているからね。初期段階でヴァンパイアが関わるのは、当然だと思うよ」
「それは、まあ、わからなくはないがの」
 アルキス神殿の宝玉はヴァンパイアしか使えず、ヴァミリニア宝玉に至っては、シュレインの血族しか使えないようになっている。
 そんな条件を付与するとなれば、考助の言う通り加工の段階でヴァンパイアが関わっていると考えることは、むしろ普通のことなのだ。
「いちおう細かく説明すれば、僕が前に加工を加えたのは、あくまでも神殿の結界とかそういったものを付け加えるだけで、もっと基本的なことは全然手をつけていなかったからね」
「そうなのか?」
「うん。それに、あれだけの機能を持たせた道具だからね。とても数日でできるようなものではないよ」
「・・・・・・それはそうかもしれんの」
 考助の言葉は言われてみれば当然のことなのだが、言った本人が常識から外れたところにいるために、シュレインとしては不思議な感じがした。

 そんなシュレインに気付かずに、考助はいいことを思いついたと言わんばかりに両手をポンと合わせた。
「そうか。どうしても作り方を知りたいんだったら、クラーラに聞いてみたらどう?」
「クラーラ神に?」
「そう。前々からこの宝玉に関しては、クラーラ神が関わっていると思っていたんだよね。ヴァンパイアの神でもあるし」
 考助としては、クラーラがヴァンパイアの主神とされているのは、宝玉のことも絡んでいると睨んでいた。
 さらにいえば、宝玉の持つ性質がクラーラの大地母神としての権能にも近いと考えている。
「――そういうわけだから、答えが得られるかはわからないけれど、確認してみたらどうかな?」
「・・・・・・わかったのじゃ。そうしてみるかの」
 いくら交神ができるとはいえ、すべての答えを神から得られるわけではない。
 それは、シルヴィアたちを見ていてもわかっていることだ。
 だが、なにもしないでいるよりはいいと考えたシュレインは、早速クラーラへと交神を試みてみるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

『――――なるほど。それで私に連絡をしてきたわけね』
「そうなのじゃ」
 シュレインは、考助から聞いた話をそのままクラーラ神へと伝えた。
 ちなみに、シュレインがクラーラへと連絡を取ったのは、考助と話をしてから一日経っている。
 気軽に交神などしていいのかという葛藤と、向こうから連絡をしてくれないかという他力本願的な希望があったためだ。
 もっとも、シュレインの淡い願いは泡と消え去り、結局シュレインから交神をする羽目になっていた。

 シュレインが頷いてから次のクラーラの返答までに少し間があった。
 これは答えを得られないかとシュレインは考えていたのだが、クラーラからの答えはそれとはまったく別のものだった。
『・・・・・・まったく・・・・・・律儀というかなんというか・・・・・・』
 そのクラーラの言葉ははっきりしたものではなく、どちらかといえば、ひとりごとに近いものであった。
 顔が見えないためにはっきりとはわからなかったシュレインは、返事をどうしたものかと一瞬ためらった。
 そのシュレインの戸惑いを見抜いてか、すぐにクラーラからの言葉が続いた。
『一応断っておくけれど、その宝玉をどう扱うべきかは、考助も知っていると思うわよ?』
「えっ?」
 思わぬクラーラの言葉に、シュレインは驚きの顔になる。
『わざわざ私に聞くようにしたのは、考助が私に気をつかったということでしょうね。確かにその宝玉には、私の権能も関わっていることだから』
 ヴァミリニア宝玉にもアルキス神殿の宝玉にも、クラーラ神の大地母神としての権能が使われている。
 そのため考助は、クラーラになんの断りもなしに宝玉作りを進めるのは遠慮したのだ。
 魔道具作りにおいては常に暴走しがちだと思われている考助だが、いちおう通すべき仁義(?)は通しているのであった。
①儀式によって作られた宝玉(イマココ)→②前加工&時間経過→③最終加工→完成

宝玉作成の流れはこんな感じです。
以前に考助が行った加工は③です。
今回話ででている加工は②のことになります。
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