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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔のあれこれ(その22)

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(5)新しいたくらみ

 ようやく神威が落ち着いてきて表に出られるようになった考助は、クラウン本部を訪ねていた。
「こ、これは・・・・・・!! いったい、どうされたのですか!?」
 アポイントもなしに突然訪ねてきた考助に驚いてそう対応したのは、工芸部門長のダレスだった。
 ダレスが管理層に行くのならともかく、考助が直接ダレスを訪ねてくることはほとんどない。
 だからこそ、ダレスはかなり驚いた表情を見せていた。
「突然ごめんね。ちょっとダレスに紹介してほしいと思ってね」
「紹介・・・・・・というと私の担当に関係する者ですか」
「まあ、そういうことだね」
 ダレスが考助に紹介できる人物となれば、工芸部門に関係する人材に限られる。
 それ以外は、別の部門長がいるのだからわざわざダレスのところには来ない。

 とはいえ、ダレスは考助が誰の紹介がほしいのかわからずに、内心で首をかしげていた。
 魔道具関連ではないことは、明々白々だ。
 なぜなら、考助自身がとんでもない製作者だからである。
 この世界に存在している魔道具の製作者の中で、考助を超える者はいないとダレスは断言できる。
 だからこそ、考助が誰に会おうとしているのかわからなかったのだ。
「いったい、どなたに?」
「ああ、いや。具体的に誰というわけじゃなくて、これから作ろうとしている物があって、それに協力してくれる人がいないかと思ってね」
「ああ、なるほど」
 その説明を聞いて、ようやくダレスは考助がどういう目的でこの場に来たのかを悟った。

 確かにそれであれば、シュミットやガゼランよりも自分が適任だろうと思ってダレスは頷いた。
「それではいったい、どういった人物をご希望ですか?」
「ああ、それはね――――」
 考助はそう前置きをしてから懐から一枚の紙を出してダレスへと渡した。
 その紙にダレスが目を通すのを確認しながら、考助は今回の思い付きを話し出した。
 さらにその話を聞いたダレスは、驚きながらも最後には面白そうな表情になる。
 そして、あとで管理層に目的にかなう人物を連れて行くと約束してから、その場はお開きとなった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 鍛冶師のダッカは、不機嫌そうに自分が所属する組織の上役――ダレスを見た。
「んで? いったいどこに連れて行くつもりだ?」
「まあ、待て。そんなに焦ることはないだろう?」
 あからさまに顔をしかめるダッカに、ダレスは楽しそうな表情を浮かべながら先を歩いている。

 ダッカは先ほどダレスからの使いから受け取った資料と手紙を見て、顔色を変えてクラウン本部へと乗り込んでいた。
 その手紙には、以前からダッカが試したいと考えていた理論が事細かに書かれていたのだ。
 武器作りを生業としているダッカにとっては、どうしても見逃すわけにはいかず、ダレスの思惑通りつられてしまっていた。
 そしていまもまた、付いて来いというダレスの一言で、普段は入れない本部の奥まで歩かされている。
 さすがにここまで来れば、自分が普通ではない場所に連れて行かれようとしていることはわかる。
 だからこそ不機嫌を隠そうともせずにダレスを問い詰めようとしているのだが、当の本人はどこ吹く風で聞き流している。
 奥に行けば行くほどダッカの嫌な予感は膨らんでいくのだが、今更戻るともいえずに、心の中で苦悩し続けていた。

 ダッカにとっては長く感じた時間は終わりを告げて、ようやくダレスはひとつの扉の前に立った。
「ついたぞ。・・・・・・っと、そういえば言い忘れていたが、この場所については他言無用だからな」
「・・・・・・わかっている」
 実際に立っている警備の数はさほどでもなかったが、何度かダレスが行っていた認証のお陰で、ダッカにもいま入ろうとしている部屋が、クラウンにとって重要なところだということは想像できる。
 元より他人に言うつもりはなかったが、ダレスに念を押されてますますその気が失せた。
 ダレスの言葉が、ただの念押しではなく、反故にした場合に実行力を伴う脅しだということがすぐにわかった。
 勿論、脅しとはいってもダッカが口外さえしなければなにも問題ないのだが。

 ダレスが扉を開けて部屋の中に入ると、すぐにダッカの目に見慣れたものが入ってきた。
「・・・・・・転移門?」
 第五層の街の住人にとっては、転移門は馴染みのありすぎる施設のため、ダッカは先ほどまでの厳重さを忘れて拍子抜けした。
 王城に並ぶほどの堅牢さで知られているクラウン本部の奥にある転移門が、ごくありふれたものであるはずがないのに、つい油断をしてしまったのだ。
 そんなダッカを見て、ニヤリと笑みを浮かべたダレスは、
「そうさ。この転移門を使って、ある場所へと向かう」
 わざとどこに行くのかは言わずに、ダレスは転移門に近付くように促した。

 転移門による場所に移動は、ダッカにとっても慣れたものだった。
 移動した先は、どこかの建物の一室のようだったが、家具などは置かれていない。
 転移門があるだけの部屋なので、特にそれでも問題はないのだと思われた。
 ただ、その部屋には、普通とは違った点がひとつだけあった。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
 転移門の傍に、メイド服を着た女性がひとりいて、そう問いかけて来たのだ。
 ダレスは慣れた様子で、そのメイドに要件を告げていた。

 その女性を見たダッカは、ダレスと話をしている途中で、なぜか違和感を覚えた。
 そして、その違和感は徐々に大きくなり、そしてついにその違和感の正体に気付いた。
「・・・・・・!? ・・・・・・な、ななっ!!!?」
 思わずその女性を指さしそうになったダッカだが、なんとか失礼な態度を取ることだけは堪えることができた。
 そして、そのダッカの様子を見て、ダレスは笑いをこらえるような表情になっていた。

 ダッカが気付いて驚いたのは、目の前にいる女性(?)が通常の人ではなく、人の手によって作り上げられた人形ゴーレムだったからだ。
 口調はともかく、表情と対応に微妙な違和感があったからこそ気付けたのだが、普通ゴーレムといえばここまでの精度は持っていない。
 専門外のダッカでも、目の前にいるゴーレムがとんでもない技術で作り上げられていることは、容易に想像することができる。
 同時に、こんなとんでもないゴーレムがいる場所とは、一体どんなところなのかと背中に冷や汗が流れて来た。
 いや、実際にはすでにいま自分がいる場所がどんなところなのか、想像することはできるはずなのだが、考えることを拒否しているのだ。
 人はそれを現実逃避という。

 ダッカが驚いている間に、ダレスがゴーレムと対応をして通行の許可を得ていた。
 そのままふたりは、扉を抜けて会議室のような部屋に入る。
「こちらで座ってお待ちください」
 転移門のある部屋のゴーレムとは別のゴーレムが出てきて、ふたりに飲み物を持ってきてそう言った。
 ゴーレムはお茶を出したあとは別の場所へと移動したのだが、ダッカはその様子を横目でチラチラ見ながらダレスへと問いかけた。
「あれはいったい、なんなんだ!? それに、ここは一体なんだ!?」
 あんなゴーレムが二体も存在するなんてありえないだろうという気持ちを込めてダッカがそう問いかけたが、ダレスはニヤニヤと笑うばかりだ。
「まあまあ、少しは落ち着け。すぐにその答えもわかるだろうさ」
 その言葉でダレスがまともに教えてくれるつもりはないと理解したダッカは、内心で強烈に舌打ちをするのであった。
鍛冶師招集!
なにをしようとしているのかは・・・・・・まあ、なんとなく想像は付くと思いますw

次話に続く。
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