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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 ソルの変化

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(10)ストッパー

「ふーん。ということは、明日からリクたちと行動することになったんだ」
 フローリアから説明を聞いた考助は、納得の表情になった。
「ああ。ただ、目的が目的だからソルはここから出発になるがな」
「なるほど、そういうことね」
 常識を身に着けるために『烈火の狼』と一緒に行動するのに、それ以前に問題を起こしてしまっては意味がない。
 そのためしばらくの間は、管理層から直接塔の階層への攻略を行うことにしたのだ。

 フローリアは、頷く考助にリクが付け足してきた条件を話した。
「これはリクから言われたのだが、最初のうちはナナかワンリを貸してほしいそうだ」
「ん? どういうこと?」
 首をかしげる考助に、フローリアはこめかみをポリポリと掻きながら応じた。
「あ~。・・・・・・ソルが暴走したときに、止められる存在がほしいんだと」
「あ~。なるほど」
 フローリアと同じような表情になって、考助は遠い目になった。

 確かにいざというときには、『烈火の狼』の面々ではソルを止めることができない。
 たとえそれが第五層以外の場所だったとしても、ソルの実力では簡単に転移門に向かうことができるので、どうしても止める存在が必要だというのがリクの要望だった。
 さすがのフローリアもそんなことは起こらないとはいえず、考助に確認すると答えたのである。
 そして、いまの考助の顔を見れば、返事がどういうことになるのかもわかる。

 逸らしていた視線をフローリアにもう一度戻した考助は、ため息をつきつつ頷いた。
「そういうことなら必要だね。ただ、ナナはともかくワンリは大丈夫かな?」
 いまのソルの実力は、完全には把握できていないが、下手をすればワンリと同等になっているだろう。
 もし、新しく覚えたスキルが使いこなせるようになれば、ワンリを抜いてもおかしくはない。
 それほどまでにソルの戦闘能力は伸びているのだ。
「別にソルを倒すのではなく、冷静になれるだけの実力があればいいのだからなんとでもなるのではないか?」
「そっか。それもそうだね」
 ただ、ワンリの戦闘能力に関しては、直接的な火力はナナには及ばないが、高レベルでいなしたり躱したりする能力が高い。
 それは、体力が持ち続ける限りナナの攻撃を避け続けることができるのは、ワンリしかいないというほどだ。
 その能力があれば、ソルが冷静になるまで攻撃を避け続けることは可能だろう。
 それに、そこまで避け続けなくとも、体力がなくなる前までに誰かが考助を呼ぶなりすればいいだけなので、ワンリでも十分にリクの求める役割は果たせるのだ。

 頷く考助に、フローリアは期待するような視線を向けた。
「ということは、いいのか?」
「それは勿論、ナナとワンリが良いといえば構わないよ」
 考助はそう答えたが、そもそも考助が頼めばナナもワンリも断ることは考えられない。
 狼にしても狐にしても、最近はどこの拠点も安定しているので、ナナとワンリがすることはほとんどない。
 また、だからこそ、ナナもワンリも長期間の考助との旅に着いて来ているのだ。

 ナナとワンリの貸し出し(?)について話を終えたところで、考助がふと思い出したような表情になった。
「そういえば、拠点を増やす話はどうなったんだろう?」
 数日前にソルから相談を受けて、階層のひとつを確保しているが、それをどうするのかを確認していない。
 基本的に放置している階層なので、ずっとそのままにしておいても問題ないが、今後どうするつもりなのかは確認しておきたい。
 そんな考助に、しっかりとソルから話を聞いていたフローリアが、小さく頷きつつ答えた。
「それだったら延期すると言っていたぞ?」
「延期? 中止じゃなくて?」
「ああ。いずれは拠点の分散も行いたいと言っていたから、あくまでも延期だな。ただ、進化種が増えてからと言っていたから当分先ではないか?」
 そのフローリアの説明に、考助はなるほどと頷いた。

 そもそもソルが進化して、その戦闘能力を当てにした拠点の増設計画だったのだ。
 ソル自体が拠点からほとんどいなくなるとなれば、計画自体が成り立たなくなることは考えなくてもわかる。
 それでもなお、計画の中止ではなく延期というのは、ソルがまだ計画自体を諦めていないということだ。
 そのうえで、進化種が増えたら計画を進めるというのは、ある程度地に足が着いたものだった。
 ゴブリンが増えただけであれば、同じ階層で拠点だけを大きくしていけばいいだけなのだが、新しい階層、特に強いモンスターが出る階層では進化種が多くいた方がいい。
 これは、狼や狐でやってきたことなので、紛れもない事実だ。
 下手に数だけで攻めても意味がないことは、考助自身がよくわかっているのである。

 
 話がゴブリンの里の運営方法について及んだところで、それまで黙って話を聞いていたシルヴィアが口をはさんできた。
「ひとつ聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「うん? どうしたの、改まって」
「いえ。ちょうどいい機会かと思いまして」
 シルヴィアは、そう前置きをしてから改めて考助を見て問いかけた。
「コウスケさんは、その種における絶対的な存在とは、どういう位置づけにあると考えていますか?」
「えっ? それって、どういうこと? 人族の神の存在がどういう位置づけにあるかってこと?」
 シルヴィアの問いかけがあまりに漠然としていて、考助は問い返した。

 自分が聞きたかったこととは違った解釈をしたと察したシルヴィアは、慌てて首を左右に振った。
 いまの考助の解釈だと、現人神についての問いかけになっている。
 シルヴィアが聞きたかったことは、もっと別のことだ。
「いえ。そういうことではなく、例えば、狼でいえばナナの存在がどういった影響を与えているのかということです」
「ああ、そっちね」
 納得して頷いた考助は、少しだけ考え込むような表情になった。

 しばらく考えていた考助は、これまでの狼や狐たちの進化の具合や、ナナやワンリの様子を見ての感想を話すことにした。
「確かに、ナナやワンリのような絶対的な強者は、眷属たちに大きな影響を与えている可能性はあるよね」
 それは、アマミヤの塔のように、ナナやワンリのような頂点に立つような絶対的な存在がいない他の塔と比べれば、可能性のひとつとしては考えられる。
「でもそれは、あくまでも可能性のひとつであって、全てではないと思うよ?」
「というと?」
 考助とシルヴィアの会話に興味を持ったのか、フローリアも首を傾げながら聞いてきた。
「だって、もし種族の進化に絶対的な存在が必要なのだとしたら、そもそも四属性の塔や聖魔の塔では進化が起こらないということになるから。それに、そもそもナナやワンリが神化したことへの説明もできないよね?」
 根本的な問題として、ナナやワンリは先達のような存在なしに進化を果たしている。
 それを考えれば、強者の存在が進化に与える影響は、まったくないとはいえないが絶対に必要であるとも言い難いのだ。

 進化ということをとってもこれだけの考察はできている。
 では、シルヴィアが聞いてきたように、ざっくりと「影響」を与えているかどうかといえば、
「進化に限らず、ナナやワンリが同じ種の眷属に与えている影響はあると思うけれど、それがすべてかといわれれば疑問だと思っている。というのが、いまの僕の考えかな?」
 これが、シルヴィアからの質問に対する考助の答えだった。
 そして、それを聞いたフローリアが、
「なんともはっきりしない答えだな」
 と返すと、考助は肩をすくめてさらに返した。
「それはそうだよ。だって、もし決まった答えがあるんだったら、そもそも全部の眷属が進化してなきゃおかしいからね」
 現状、すべての眷属が進化するなんてことは、まったく起こっていない。

 そのもっともらしい考助の言葉に、話を聞いていたシルヴィアとフローリアは、大いに納得したように頷くのであった。
何となくソルの話から脇道にそれたところで、今章は終了です。
次は閑話で、ソルと『烈火の狼』の冒険でも書きましょうか。(気分次第ですw)
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