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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 ソルの変化

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(7)女性陣集合

 考助が昼寝を始めたあとにソルも来て、くつろぎスペースで悩んでいた。
 そこに、昼の作業を終えたフローリアがやってきた。
「おや? 連続で来るとは、珍しいな。どうしたのだ?」
 フローリアは、考助が寝ていることには気付いているので、ソルに十分近付いてから小声でそう聞いてきた。
「いえ、ちょっと主様に報告を・・・・・・」
 同じように小声で先ほど考助と話をした内容を教えようとしたソルは、ハッとした表情になってフローリアを見た。
「相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
 ソルは、普段フローリアから自分が管理している塔にいるゴブリンの管理方法について相談に乗ったりしている。
 そのため、今回の件について相談するには、一番いい相手だと考えたのだ。
 そのソルの様子を見てフローリアも感じるものがあったのか、小さく頷いてから会議室のある方を指さした。
 その動作でフローリアがなにを言いたいのかわかったソルも、頷き返す。
 そしてふたりは、寝ている考助を起こさないように注意しながらその場を離れるのであった。

 
 会議室に入ったフローリアは、ソルが席に着くのを見てからすぐに問いかけた。
「それで? 相談したいことというのは?」
「はい――――」
 ひとつ頷いたソルは、すぐに先ほど考助から言われた話をそのままフローリアに伝えた。
 そして、それを聞いたフローリアは、納得したように頷いた。
「なるほど。要するに、ソルの相談というのは、このままコウスケの言う通り、管理層に居ついていいのかどうかということか?」
 ずばりそう言われたソルは、驚いたような表情をフローリアへと向けた。

 そのソルの顔を見たフローリアは、クスリと笑って言った。
「なんて顔をしているんだ? 話の内容と普段の其方の様子を見ていれば、なんとなく想像は付くぞ」
「そ、そうですか」
 あっさりと言われたフローリアの言葉に、ソルは若干落ち込んでしまった。
 それを見てフローリアは、さらに笑みを深くした。
「落ち込むことはないだろう。それがソルの良いところでもあるのだから」
「え?」
 思ってもいなかったと言わんばかりのソルの表情に、フローリアは一瞬意外そうな表情になった。
「なんだ。気付いていなかったのか。・・・・・・まあ、いいか。この話はここまでにしておいて、本題に戻るか」
「え? ・・・・・・え?」
 なぜ突然話題を変えたのかわからずソルは戸惑ったが、フローリアはそれ以上ソルの性格についての話には触れることはなかった。

 戸惑うソルをそのままにして、フローリアはわざとらしく顎に手を当てて、考えこむような体勢になった。
「それにしても、コウスケがそんなことを言うとはな。・・・・・・いったい、何年ぶりのことだ?」
「はい?」
 後半の言葉はぽつりと呟かれたので、ソルの耳までは届かなかった。
「いいや。なんでもないさ。それよりも、決めてしまう前に、一度は皆に話をしておいたほうがいいと思うぞ?」
「やはりそうですよね」
 最初からソルもそのつもりだったので、特に反発することなく頷いた。
 いまフローリアに話をしているのは、一番相談しやすい相手だったからというだけではなく、単にくつろぎスペースに丁度いいタイミングで入ってきたからだ。
 もし最初に入ってきたのが別の者だったとしても、ソルはその人物に相談をしただろう。

 ソルの顔を見てすでにそのつもりだったと理解したフローリアは、
「そうか。ソルがそのつもりだったのなら、シュレインとシルヴィアを呼んで来よう。他のふたりは、さすがに今すぐは無理だが」
「いいのですか?」
「もちろんだ。というよりも、そのほうが話が早そうだからな。少し待っておれ。ふたりを呼んでくるから」
 フローリアはそう宣言するとすぐに会議室から出て行った。
 シュレインもシルヴィアも今朝の予定では、どこかに出かけるということも言っていなかった。
 フローリアの待っているようにという言葉に従って、ソルはしばらく会議室で三人が揃うのを待つことになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シュレインとシルヴィアを連れてくるといっていたフローリアだったが、ソルに話をするときにはなんだかんだでコレットとピーチも揃っていた。
 コレットは、たまたまシルヴィアが彼女の予定を知っていたのでそのまま呼びに行き、ピーチは偶然管理層に来たところをシュレインが捕まえたのだ。
 考助が昼寝をしているのを知っていてあえて管理層に来たピーチは、すぐに話し合いに参加することを了承していた。
 もともと暇つぶしに考助の寝顔を見に来ただけだったのだ。
 コレットに関しては、シルヴィアがソルの相談内容をほのめかしただけで参加を決めていた。
 ちなみに、考助の護衛についているコウヒはくつろぎスペースにいるが、ミツキは話し合いに参加している。
 そんなこんなで、管理層の主要メンバーが全員そろったところで、ソルの相談事が始まったのである。

 最初に言葉を発したのは、メンバーを集めたフローリアではなく、ミツキだった。
 そもそも集まる段階である程度の内容は話してあるので、今更ソルが同じことを繰り返す必要はないのだ。
「それで? わざわざ全員を集めたのはソルのため?」
「はい?」
 意味が分からずに首を傾げるソルだったが、フローリアはため息をつきつつ彼女を見た。
「あのな、ソル。そなたが管理層に来る云々というのは、すでにコウスケが提案した時点で、ほぼ決まっているんだよ。そもそも誰も反対する必要もないからな」
 いまとなってはかなり昔のことになるが、そもそもフローリアが管理層に来ることになったことも、ほとんど考助が独断で決めたようなものだ。
 考助が望めば、よほどのことが無い限りは新しいメンバーを受け入れることを拒否するつもりはない。
 さらにいえば、ソルはほとんど管理層に来ることが無かったとはいえ、まったく知らないというわけでもないので、誰も反対することはないのだ。
 そもそも反対するつもりならこの場に来ずに、考助のところへ行っているだろう。

 ではなぜこの機会を設けたのかわからずに、ソルは戸惑った表情を浮かべた。
 その様子を見たシルヴィアは、助け舟を出した。
「あのですね、ソル。貴方がここに住むとなれば、私たち以外の人と交流することになるのですよ?」
「そうじゃの。そのときに、いまの世間知らずのままでは、必ず困ったことになるじゃろう?」
 思ってもみなかったシュレインの言葉に、ソルはショックを受けたような表情になった。
「私は、世間知らずなのですか?」
「なにを今更、といいたいところだけれど、こればかりは仕方ないわよね」
 ソルの言葉に、ミツキがため息をつきながら頷いた。

 そもそもソルは、召還陣からゴブリンとして誕生してから、いままでの人生をずっと里か管理層の範囲だけで過ごしている。
 幼少の頃を城の中や神殿の中で過ごしてきたフローリアやシルヴィアとは違った意味で、ソルもまた箱入り娘なのである。
「そういうわけだから、ソルが管理層で過不足なく過ごすためには、どうしてもある程度の一般常識を身に着けてもらう必要があるわけ」
 ミツキがそう説明すると、ソルはようやく納得したように頷いた。
「ですが、私にはどうすれば、その一般常識が身に着けられるかが見当もつかないのですが?」
「それはわかっていますよ~。ですからこうして私たちが集まっているのです」
「いい方法が無ければ、管理層に住むことを反対しなければならないからね。それも含めて、全員がいた方がいいのよ」
 ピーチとコレットがそう付け加えると、ソルを除いた面々が頷いた。
 女性陣が集まった時点で、すでにここまでの共通認識は持っていたのである。
女性陣に言われて、ようやく自分に一般常識が無いと理解できたソルでした。
里を管理している以上、施政者(ちょっと大げさ?w)としての常識はありますが、外の世界に目を向ければまさしく箱入り娘ですw
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