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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 ソルの変化

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(3)ふたりの変化

 ソルが管理層へ向かうことを告げると、ナナが「ワフッ!」と吠えた。
 たとえ通じなくてもナナがなにを言いたいのは、すぐにわかった。
「貴方も向かいますか?」
「ワフッ!」
「フフ。そうですか。では、一緒に参りましょう」
 尻尾を大きく振って返事をしてきたナナに、ソルは笑顔を向けた。
「では、私たちはそろそろ向かいます。この場を用意していただき、ありがとうございました」
「いいのですよ。月神様のご要望でもありましたから」
 軽く頭を下げたソルに、ユリが首を左右に振った。
 どちらかといえば、強引にソルをこの場に連れて来たのはナナとユリなのだ。
 そのことで礼を言われることではないとユリは考えている。
 さらにいえば、彼女たちが今いる神社は、祀られる主神が月神になる。
 その主神の要望でもあったので、迷惑に思うはずもないのだ。

 ユリの返答に、ソルは「そうでしたね」と軽く返してからナナと一緒に部屋から出て行った。
 ユリに宣言した通り、早速管理層に向かうことにしたのだ。
 それを部屋の中で見送ったユリは、部屋の使用が終わったことを告げるため、この神社に常駐することになった巫女のところへと向かうのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ナナとソルが管理層の転移部屋につくと、そこにはいつものようにメイドゴーレムが控えていた。
 管理層に来る者を選別する役目を持ったそのメイドゴーレムは、ナナとソルの出現には特に大きな反応を見せなかった。
 ナナもソルもいつでも来ていいと考助から言われているので、いちいち反応しないように作られているのである。
 代わりにソルは、そのメイドゴーレムにあることを問いかけた。
「――主様がどこにいるかわかりますか?」
 管理層、特にメイドゴーレムの中では、主様というのは考助のことを指している。
 もともとコウヒが呼んでいたこともあって、いつの間にか共通の認識になっていた。

 考助が管理層のどこにいるのか、当然ながらメイドゴーレムはすべての訪問者に教えるわけではない。
 ただ、ソルやワンリなどは、むしろ考助を捜して管理層をうろうろされるよりもいいということで、メイドゴーレムが場所を把握している場合に限って教えてもらえるようになっていた。
 勿論、考助が拒否すれば教えないようにはなっているのだが、メイドゴーレムにそんな機能があることをすっかり忘れているので、これまでもほとんどの場合、答えは返ってきている。
 ちなみに、考助がこの機能のことを忘れているのは、使うのがソルかワンリくらいしかいない為だ。
 しかもワンリに至っては、狐の姿で来た場合は自力(匂い)で探してしまうため、使うことがない。
 となると、残るのはソルということになるのだが、彼女が管理層に来ることは里の報告のときくらいなので、使われる機会は少ないのだ。
 結果として、考助はその機能があることを忘れてしまっているということになる。

 メイドゴーレムから答えをもらったソルは、まっすぐにくつろぎスペースに向かった。
 早く加護のことを話したいということもあるが、考助と会うこと以外に特に用事もないため他の場所に寄る必要が無い。
 それはナナも同じなのか、わき目もふらずにくつろぎスペースへと歩みを進めていた。
 そして、ソルがくつろぎスペースのドアを開けると、思ってもいなかった力の奔流を感じて思わず身を固くしてしまった。
 もっとも、その力が誰の物かとわかると、ソルはすぐにその緊張を解いた。
 とはいえ、いままで感じたことのないそのあまりにも大きい力に、内心では疑問符が飛び交っていた。

 その疑問が顔に出ていたのか、力を振りまく原因となっている考助は困ったような表情でソルを見た。
「やあ、ソル。なにかあったのかい?」
 その考助の言葉に、ソルはハッとした表情になってから頭を下げた。
「・・・・・・不躾な視線を向けてしまい、申し訳ありません。御力を直接感じたのは初めてでしたので、思わず・・・・・・」
 考助としては、ソルが管理層に来たことが珍しかったため問いかけたのだが、ソルは疑問が顔に出ていたことをいわれたと勘違いしていた。

 そのことに気付いた考助は、すぐに首を左右に振った。
「いや、そのことは別にいいんだ。・・・・・・ちょっと力の制御に苦労していてね」
 さらりとソルの疑問についての答えを返してから、すぐに本来聞きたかったことを問いかけ直した。
「聞きたかったのはそれじゃなくて、なにか用事があって来たんだよね?」
 ソルは里の報告を除けば、管理層に来ることは滅多にない。
 里の報告に関しても、最近では大きな変化がないため考助がたまに顔を出ているときの話でことが済んでいた。
 そのため、考助はソルがこの場に来ていることを不思議に思ったのである。

 考助の問いかけにようやくなにを知りたかったのか理解したソルは、慌てたように加護の件を話した。
「ジャルがソルに加護を? ・・・・・・なるほどねえ」
「はい。事後報告になってしまい、申し訳ありませんでした」
「ああ、それは別にいいんだよ。ジャルもそう言っていたよね?」
「はい。それは、そうですが・・・・・・」
 だからといって、考助に確認せずに判断したのには違いがない。
 そう言いたげに、相変わらず真面目な反応を返すソルに、考助は笑いながら首を左右に振った。
「気にしなくてもいいよ。どのみちそんな招待のされ方をしたんだったら、ソルに拒否権はなかっただろうし」
 ソルからこと細かく話を聞いた考助は、ジャルの性格を考えたうえでそう言うのであった。

 そんなことよりも、考助には気になることがある。
「それより、ジャルから加護をもらったんだよね? なにか変化はあった?」
 その考助の問いかけに、ソルは若干首を傾げた。
「・・・・・・いえ。特になにか大きな変化が起こった感じは・・・・・・」
 しない、と続けようとしたソルだったが、ふと言葉を切った。
 以前は感じなかった考助からの力の奔流は、ジャルから加護を得たために感じるようになったのでは、と考えたのだ。

 そのソルの推測に、考助は微妙な顔になった。
「あ~。それはちょっと違うかも?」
「と、仰いますと?」
「それは、どちらかといえば、僕のほうの問題だね。ちょっと今、力の制御が難しくなっていてね。これでも大分ましになったんだけれど」
 第七十二層に家を作った効果は、かなりあった。
 だが、完全に制御できているとは言い難く、未だに考助は昼寝をちょくちょく行っている。

 考助の側になにか事情があると理解したソルは、それについては突っ込まず、自分の問題について考え始めた。
「そうですか。だとすれば、他に思い当たることはないのですが・・・・・・」
 ジャルから加護をもらった直後も、管理層に来る間も、特に以前との違いは感じていない。
 加護を得たことでなにか変化があったかと問われても、ピンと来ないというのが現状なのだ。
「そう。それならいいや。なにか変わったことがあったら教えてね」
「はい。必ず」
 考助がなにを気にしているのかわからないソルだが、考助の要求にはすぐに答えるつもりだ。
 少しでも変化があれば、すぐに知らせようと決心する真面目なソルを見て、考助は見つからないように小さく苦笑をするのであった。
考助の変化は以前からの続きですが、ソルが知ったのは初めてなのであえて「ふたりの変化」です。
ソルは加護を得ていますしね。
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