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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 塔のあれこれ(その21)

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閑話 家探索

 迷いの森の中にポツンと建っている一件の家。
 ぎりぎり豪邸といっていいくらいの大きさで、つつましく生活している者にとっては、少しばかり足を踏み入れることをためらう程度だ。
 とはいえ、冒険者は依頼人の家を護衛などで直接訪ねることもあるので、入ることに躊躇うことはない。
 ただ、問題なのは、目の前にある家が建っている場所だ。
 普通であれば、迷いの森にあからさまに建っている家は、最初から疑ってかかるべきである。
 だが、『烈火の狼』の面々は、そういった疑いの目はまったく向けていなかった。

「これって、そういうことよね?」
「まあ、そうだろうな」
 確信しているようなカーリの視線に、リクは若干あきれながら答えた。
 今回の依頼のことを考えれば、誰がこんな場所に家を建てたかなんてことは考えなくてもわかる。
「・・・・・・なにを考えているんだ、父上は」
 座り込みそうな勢いで頭を抱えたリクに、ゲレオンが不思議そうに見て来た。
「あの方がやったのか、これは?」
「それ以外に考えられないだろう? 塔の機能を使えば、家を建てるなんて一瞬だからな。お前たちも神殿の噂は聞いているだろう?」
 リクの説明に、一同は嗚呼という表情になった。
 三大神の加護があることで有名な第五層の神殿だが、そのときのストーリも一緒に噂として語られているのだ。
 いまではアマミヤの塔に関する不思議のうちのひとつとなっている。

 リクたちの目の前にある家は、実際には塔の機能を使って建てられたものではないのだが、さすがに見ただけでは区別などつけられない。
 常識で考えて、これほどの家がたった半月ほどで建てられたものだとは思わないだろう。
 そんな家を外側から観察していたカーリが、首を傾げながら壁に手を触れていた。
「この壁、初めて見るけれど、一体どんな材料で作っているのかしら?」
「・・・・・・魔力が宿っている?」
 カーリの隣で、ダーリヤが首を傾げながら同じように壁に手を触れた。
 ダーリヤもカーリほどではないが、魔法を使うことができるので、一般の人よりは魔力を感じ取ることができる。

 揃って首をかしげている女性ふたりに、リクが声をかけた。
「細かい調査はあとにして、いまは家の中に入ってみるぞ」
「いきなり入っても大丈夫なのか?」
 わずかに不安そうな表情を浮かべるエディに、リクが肩をすくめた。
「あそこのメンバーは、いたずら好きなところがあるから絶対とは言えないが、少なくとも命の危険になるようなことにはならないさ」
 リクの口からあっさりと語られた文言に、他のメンバーは何とも言えない表情になるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 リクが扉を開けると、鍵などもかかっておらず、あっさりと開いた。
「不用心だな。・・・・・・えっ!?」
 リクは一瞬、防犯はどうなっているんだと考えて呟いてしまったが、続いて視界に入ってきたものを見て、思わず驚きの声を上げてその場に立ち止まった。
 リーダーの様子を見て、あとから続こうとしていた面々は、どうしたんだろうと顔を見合わせる。
 だが、続いてリクから漏れた言葉に、リクと同じように驚きの顔になった。
「ナナ!? なぜ、こんなところにいるんだ?」
 言うまでもなく、ナナはもっとも考助の近くにいる眷属の一体といっていい。
 普段は、塔の階層を忙しく出入りして仲間たちの様子を見ているので、こんな場所に一体でいること自体があり得ないのだ。

 リク以外の『烈火の狼』のメンバーも、何度かナナと対面したことはあるので、その特異性はよくわかっている。
 この場所にいることが、どれほどありえないことなのかも、である。
 そのナナ当人は、リクの姿を見て暢気に尻尾を振っていた。
 そして、ついて来いと言わんばかりにその場から数歩歩いて、リクを振り返る。
「・・・・・・ついて行けばいいのか?」
「オウン!」
 ナナの元気いっぱいの返事に、リクはため息をついてから他のメンバーを促して家の中へと踏み込んだ。

 一般の家よりは広めに作られたエントランスホールを、ナナはスタスタと歩いて行く。
 そして、ひとつの扉の前で立ち止まって、リクのほうを振り返った。
「ワフ!」
「この部屋に入ればいいのか?」
「ワフ!」
 返事を待たずともその尻尾の動きを見ていればなにを言いたいのかは分かったが、ナナは律儀に返事をした。

 ナナの返事を聞いたリクは、なんの疑いもせずにその扉を開けた。
 ナナがいるのに、いまさら罠がどうとか疑っても仕方がないと理解している。
 ちなみに、ナナは自分で扉を開けることも可能だが、なぜか律儀にリクが開けるのを待っていた。
 自分ひとりで動いているときは、ドアノブに飛びついて開けることもするのだが、人がいればそんなことはしなくていいとわかっているのである。
 リクが扉を開けると、ナナがするりと部屋の中に入っていき、中央にあるテーブルの上に乗って尻尾を振りだした。
 二十畳ほどの居間らしきその部屋には、火がついていない暖炉まで備え付けられている。
 ついでに、置かれている家具類は、一流の職人が造ったといわれてもそん色のない物が置かれていた。
 いまでこそ冒険者として活躍しているリクだが、生まれが生まれなので、そうした目利きもできるのだ。

 普段はテーブルの上に乗るなんてことはしないナナに、リクは内心で首をかしげていると、ナナの足元に紙が置かれているを見つけた。
 その紙になにか文面がかかれているのがわかったリクは、持ち上げて内容を確認した。
「・・・・・・そういうことか」
 書かれている文面を見て、ようやく今回の依頼の意味を知ったリクは、半分納得、半分呆れた表情になってそう呟いた。
「なにが書かれているの?」
 リクが持っている紙をのぞき込むようにして、カーリが横から顔を近づけた。
 そして、しっかりと内容を確認したカーリがそれを他のメンバーにも伝わるように、文面を口にした。
「『この家の感想を冒険者視点でまとめておくように byシュレイン』って、なにこれ?」
「なにこれもなにも、これが俺たちに指名依頼した理由だろ?」
 簡単にリクが説明したが、他のメンバーは意味が分からずに首をかしげた。

 他のメンバーの顔を見て、シュレインの意図が伝わっていないと理解したリクが、ため息を吐きつつ説明した。
「あそこにいるメンバーは、父上を筆頭にして、いろんな意味で世間ずれしているからな。この家を建てたのは良いが、一般的な視点でどうみられるかを知りたかったのだろうさ」
 冒険者のトップをひた走っている『烈火の狼』は、とても一般的とは言い難いが、それでも管理層にいる者たちよりははるかにましなのだ。
 考助たちが直接面識ある人間で、今回の調査に適任だったのが『烈火の狼』だったというわけだ。
 リクの説明に、一同は納得した表情になった。
 彼らが見ても、管理層のメンバーが浮世離れしていることはよく知っている。
 回りくどい方法で依頼をしてきたのもこれで理解できるというものだった。

 結局このあと『烈火の狼』の面々は、つぶさに家の中を確認することにした。
 ナナは本当にただのメッセンジャーだったようで、最初の動き以外には特に何かをすることはなかった。
 そして、リクたちが家を調べている最中にいつの間にか姿を消していたのだが、それに気づいたリクたちも特に慌てたりはしなかった。
 そのときには、家の中にある部屋に転移門が置かれていることも把握していたので、そこを通って戻ったことがわかっていたためだ。

 肝心の家の調査に関しては、リクが予想した通り、普通ではありえないほどの性能を持っていることがわかって一同を呆れさせることになる。
 その結果を持って、リクがいろいろとまとめたものを直接管理層に持ち込むことになった。
 家が建っている森自体が迷いの森になっていることから、大々的に開放するつもりではないことは理解できたためである。
 その日はこの家に泊まることになったのだが、外に出て壁面を調べていたカーリとダーリヤが、夜になると壁が光って幻想的な光景を見せることに気付いたときは、ふたりで大騒ぎをしていた。
 勿論、他のメンバーも驚きの表情になっていたのだが、それを余所にリクだけは内心で大いに頭を抱えることになるのであった。
ちょっと強引に締めてしまいましたが、これでリクたちの探索は終わりです。
四話も使って書いたのは、作者も予想外でしたw
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