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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 塔のあれこれ(その21)

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閑話 依頼受諾

 中期間の依頼を終えたリクは、完了の報告をするためにクラウンの冒険者受付を訪ねていた。
「はい。完了印の確認をいたしました。お疲れ様でした」
「どうも」
「報酬はいつも通りでよろしいですか?」
 クラウンでは、直接の現金のやり取りだけではなく、クラウンカード内に記録しておくということができる。
 依頼は、ランクが上がれば上がるほど報酬が高額になるので、全てを現金で受け取る者のほうが少ない。
 パーティメンバーに分配するのはあとになるが、それはいつものことだ。
 きちんとメンバー内で取り決めしてあるので怒られることはない。

 一応報酬額だけを確認して帰ろうとしたリクを、受付嬢が呼び止めた。
「リクさん、少しいいですか?」
「お? 何かあったか?」
「はい。リクさんに、というか『烈火の狼』あてに指名依頼が来ています」
 『烈火の狼』は、すでにクラウン本部内でも三本の指にはいるパーティとして知られている。
 指名依頼が来ることも珍しいことではないため、受付嬢も当然のようにそう言ってきた。
「指名依頼? ・・・・・・一応確認してみるか」
 ちょうど依頼を終えたばかりで、次の予定があるわけでもないので、リクは依頼の内容を確認してみることにした。
 これが忙しいときだと断ることもあり得る。
 というよりも、人気のパーティが指名依頼を断ることなどざらにある。
 依頼をする方もそれを了承したうえで依頼をしているのだ。

 リクの視線を受けて、受付嬢は「少々お待ちください」と奥へ引っ込んでいった。
 受付では指名依頼が来ているパーティや個人名がかかれている一覧があるだけで、依頼票まで置いてあるわけではないのである。
 そして、その受付嬢が奥から戻ってきたときには、その手に一枚の紙が握られていた。
 受付嬢は、椅子に座ると同時に、その紙をスッと出してきた。
「これがその依頼になります」
 受付嬢からそう言われて依頼票を受け取ったリクは、さらりと内容を確認した。
 リクの視線が、依頼人名が書かれているところにまで行ったときに、リクは一瞬だけ目を見開いて、すぐにいつもの表情に戻った。
「・・・・・・なるほど。いまは仲間がいなくてすぐに受けられるか答えられないから、明日辺りに返事でも構わないか?」
 依頼票には期間が書かれていないことをきちんと確認したうえで、リクは受付嬢にそう確認した。
 勿論、受付嬢も前もって確認しているので、すぐに返事が来た。
「勿論です。それでは良い返事をお待ちしております」
 当然だが、クラウンにとってはより多くの依頼を受けてもらって、きちんと達成されればそれだけ収入が入ることになる。
 『烈火の狼』は達成率も高いので、職員からより丁寧な扱いを受けるのも当たり前なのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 受付嬢から依頼票を受け取ったリクは、そのまま仲間たちが待つ家へと向かった。
 『烈火の狼』は、パーティとして第五層の街に一軒の家を購入してある。
 長期不在のときは手入れのための人手を雇わなければならないのだが、それでも宿暮らしよりは経費がかからないために、パーティ単位で購入したものだ。
 パーティ単位で買う物は様々な物があるが、家の購入に関しては、特にもめることもなく満場一致で決定していた。
 ただし、どの家を買うかのときには揉めたのだが、それはまた別の話である。

 家へと戻ったリクは、早速パーティメンバーに指名依頼のことを話した。
「戻ってきてすぐで済まないが、指名依頼が一件来ているんだ。出来れば受けておきたい」
 高ランクの冒険者ともなれば、一件受け終わったあとは数日休むことが常識となっている。
 それだけ一件を終えるのに日数がかかるので、依頼を終えれば休みをまとめて取るのが当たり前なのだ。
 勿論、連続で依頼を受けることもあるが、普通は良い顔をされない。
 それは、パーティメンバーの面々も同じだったようで、リクの言葉に顔をしかめていた。

 そういった反応が返ってくるのは、リクの予想の範囲内だったので、なにかを言おうとする仲間を右手の手のひらを見せて止めてからピラリと依頼票を出した。
「反対するかどうかは、この依頼を見てから判断してくれ」
 依頼内容を見たうえで反対されるならば仕方ないと諦めるが、リクはメンバーたちが反対するとはまったく考えていない。
 特に、その依頼人を見れば、間違いなく受けるだろうと判断したからこそ、受付で拒否せずにこの場まで依頼を持ってきたのである。
 果たして、リクのその予想は見事に当たった。
 依頼票に書かれている名前を確認したメンバーたちは、揃って驚きの表情を浮かべたのだ。
「これは・・・・・・」
「うん。まあ、見ての通りかな?」
 最初に依頼票に目を通したカーリが視線をリクへと向けて来た。
 依頼票に書かれている依頼人の名前欄には、シュレインとフローリアの名前(両方とも偽名)が連名で書かれていたのである。

 依頼の内容は、第七十二層の詳細な調査となっている。
 塔の管理を行っているふたりがなぜそんな依頼を出すのかという首をひねるような内容だが、意味のない依頼をふたりが出さないことは、皆もよくわかっている。
「・・・・・・どういうことだ?」
 そう言って首をひねるアンヘルに、リクは首を左右に振った。
「俺にもわからん。なにも聞いていないからな。・・・・・・ただ」
 一度言葉を区切ったリクに、全員の視線が集まる。
「父上や母上たちが階層のことを把握していないということはないから、敢えて冒険者視点で調査をしてほしいんだろう」
「・・・・・・なにかを見つけてほしい、とか?」
 カーリの言葉に、リクは首を左右に振った。
「いや、それはわからない。わざわざ依頼として出している以上、直接聞きに行っても無駄だろうしな」
 直接話を聞きに行って教えてくれる用事ならば、わざわざ依頼なんて形はとらないということくらいはわかる。
 言伝でリクに繋ぎを取るルートくらいは、考助たちは持っているのだ。

 最後まで依頼票を見ていたダーリヤが、視線をリクに向けて聞いていた。
「それで、依頼はどうするの?」
「俺としては受けたほうがいいと思うが、皆の意見次第だな。幸い期限はないから、数日休んでからいっても良いだろうし」
 リクがそう言いながらぐるりと仲間を見回すと、一同はそれぞれの顔を見合わせた。
「俺はいつでも構わない」
「私も」
「そうね」
 ひとりがリクの言葉に同意すると、他の面々も次々に頷いた。
 結局、誰ひとりとしてこの依頼を蹴るという選択はしなかった。

 リクは、予想通りの結果に満足しつつ、このあとの予定をどうするかを問いかけた。
「このあとは、二日ほど休んだ方がいいと思うが、まだ休みがほしいという奴はいるか?」
 武器や防具を頼んでいたりすると、数日かけて調整をする場合もないわけではない。
 基本的にそういった要件は、休みの日を使って行うので、いきなり依頼をこなしに行くというわけにはいかない場合もあるのだ。
 リクの確認に、メンバーたちは全員が首を左右に振った。
 幸いにして、時間がかかる予定を入れていた者はひとりもいなかったので、シュレインとフローリアからの依頼は三日後に出発することが決まった。

 こうして、『烈火の狼』にとっては師と呼べる人物からの初依頼を受けることになったわけだが、そこになにが待っているのか、予想が当たった者は誰一人としていなかったのである。
一話で終わるはずが、家を発見するまでに至りませんでした。
次こそは、お家訪問になりますw
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