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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 塔のあれこれ(その21)

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(4)レンガ

 家を建てる予定地を整地した翌日。
 考助は、シュレインとシルヴィアを連れて来ていた。
「ほほう。ここが現場かの。なかなかいいのではないか」
「確かにここであれば、ある程度来る人数も限られるでしょうね」
 綺麗に整った土地を見ながら、シュレインとシルヴィアはそれぞれに納得しながら頷いている。
「そうだよね?」
 ふたりの反応に、考助は気をよくして笑顔になる。
「いまは魔道具でこの場所を見つからないようにしているというのはわかるのじゃが、家を建てたあともこの魔道具を置いたままにしておくのか?」
「いや。家を作りながら似たような効果を出す魔法陣を組み込むから、途中で取ってしまうよ」
 考助の説明に、気になることがあったのか、シュレインが興味深げに考助を見た。
「そのようなことができるのかの?」
 一般的には、永続性のある結界は、同じ種類の物を重ね掛けのようにすることはできないと言われている。

 例えば、A『狼を通さない』という種類の結界を張ったあとに、B『狐を通さない』という結界を張っても、AとB両方の効果を持つ結界はできない。
 AとBの結界の大きさを変えてBのほうを小さくすれば、AからBまでの間は狐は通ることができるが、Bは狼が通ることができてしまう。
 残念ながらAとBが通ることができないというわけにはいかないというのが常識なのである。
 なんともめんどくさい法則なのだが、もし両方の性質を持つ結界を作りたいのであれば、最初からその性質を持つ結界を作るしかない。

 シュレインの疑問に、考助が頷いた。
「できるよ。というか、多分魔道具職人はやろうと思えばだれでもできると思うよ。無駄になるからやらないだけで」
「うん? どういうことじゃ?」
「だって、同じ効果をもつ道具を重ねて使っても強くならないんだったら、それこそ魔力の無駄だからね。ひとつの魔道具だけを続けて使うようにするよ」
 ふたつの道具を使って相乗効果が出ないのであれば、そもそも複数の道具を使う意味がない。
 魔道具の同時起動ができることは知っていても、考助が言った通り魔力の無駄なので、ほとんどの者はやらないのだ。
「なるほどの。それは確かに魔力の無駄じゃの」
「だよね? まあ、今回はそれが必要だから仕方なく両方起動することになるけれど」
 なにしろ今回の家を作るのには、それなりの日数がかかる。
 いきなり最初から結界のすべての機能を作れるわけではないので、無駄と分かっていてもふたつの魔法陣を使っておく必要があるのだ。

 考助の説明に、今度はシルヴィアが心配そうな表情になって聞いてきた。
「それは、コウスケさんは大丈夫なのですか?」
「うん? ああ、消費魔力(神力)的な問題の事?」
「そうです」
「それなら特に問題ないよ。むしろ、その問題が解決したから、今回わざわざ家を作ろうなんてことを考えたんだし」
 実は、考助は以前にも家を作れないかと考えていたことはあったのだ。
 だが、あまりにも力の消費が大きすぎて諦めていた経緯がある。
 家そのものが魔道具になるような大きな物を作れば、その分作るときの消費魔力も多くなる。
 それが、今回の成長(?)でその問題がクリアされたので、突発的に作ってみたくなった、というわけだ。

「それで、どうやって作っていくのじゃ?」
 わくわく、と顔に書いてあるような表情で、シュレインが考助に聞いてきた。
 それを見て一度だけ苦笑した考助は、あっさりと答えた。
「別にそんな難しく考える必要はないよ。ノールを中心とした妖精の力を借りるだけだからね」
 普通ではできない方法を持つ出した考助に、シュレインが一転してきょとんとした表情になった。
「妖精に? そんなことができるのかの?」
「できるよ。まあ、正確には妖精に指示を出して精霊に働いてもらう、って感じになると思うけれど」
 昨日、この場所を整地したときも同じような手順を踏んで作業を行っていた。
 家を建てるにはもっと複雑な指示出しが必要になるが、できると思ったからこそこうして作業に乗り出しているのである。

 考助の答えに、シュレインが残念そうに首を左右に振った。
「そうか。それは残念じゃの。同じことができるのであれば、里の者たちにも教えたかったのじゃが」
「うーん。それは、どうだろうね? 妖精とか精霊を使わなくても、似たような手順でできるようになるかもしれないよ? とりあえず、様子を見ていったらどう?」
「そうじゃの。そうさせてもらおうかの」
 もとよりそのつもりでこの場に来ていたシュレインは、大きく頷いて同意した。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助がノールの力を借りて最初に行ったのは、大きめのレンガを作ることだった。
「なんじゃ、これは?」
「随分と神力がこもっているように見えますが?」
 普通のレンガであれば、シュレインもシルヴィアもここまで反応はしなかっただろう。
 ところが、さすがに作ったレンガのひとつひとつに、かなりの神力があるとなると話は別だ。
 そもそもそんなレンガを作るだけで、かなりの力を使ってしまう。
 いくら妖精の力を借りているとはいえ、こんな簡単に数を用意できるものではない。

 レンガのひとつを手に取って確認していたシルヴィアが、恐る恐る考助に聞いた。
「まさか、このレンガを家の壁材にするおつもりですか?」
「そのつもりだけれど?」
 どれだけの力が必要になるのかと、違うと言ってほしいと願ってのシルヴィアの問いだったが、考助はきょとんとした表情で返してきた。
 考助にとっては、レンガを作る作業自体は大したことではないのだ。
 むしろ、大変なのは妖精や精霊たちだと考えているほどだった。
「そ、そうですか。それは・・・・・・いえ。もういいです。コウスケですからね」
「そうじゃの。いちいち気にしていては、こちらの身が持たないじゃろうな」
 後半、諦めたような表情になったシルヴィアに、シュレインもまた達観したような顔になって頷いた。
 そのふたりの顔を見て、考助は何か言いたげな表情になったが、賢明にもそれを口にすることはなかった。

 考助が材料のひとつとして作ったレンガは、通常通りのレンガ造りの家を建てるためと、家の壁にいろいろな魔法陣を仕込むための材料としても使うつもりなのだ。
 家を建ててから壁に仕込んでもいいのだが、それよりはレンガの段階から仕込んだ方がはるかに強力な魔法陣を作ることができる。
 レンガのひとつひとつに神力がこもっているので、あとから陣を組み込むよりも作り易いというメリットがある。
 もっとも、最初から魔法陣のことを考えてレンガを積まないといけないので、時間がかかるというデメリットもある。
 ただ、その時間に関しては、妖精と精霊を使って解決ができることがわかっている。
 それであれば、使わない手はないということで、今回はレンガを使うことを選んだのだ。
 今後は、レンガ以外の材料を使って作ることもあるだろうが、考助にとっては、一番扱いやすい材料だったのだ。

 考助が作ったレンガは、それだけでかなりの価値がある物なのだが、考助自身はそれに気づいていない。
 勿論、見てすぐに気付いたシュレインとシルヴィアは、互いに目配せをして頷き合っていた。
 考助を見れば、自分がなにをしたのかわかっていないことは明白だ。
 それを考えればここで家の建築を止めるのもひとつの選択肢だが、ふたりは敢えてこのままなにも言わずに続行させることを選んだ。
 それは、このレンガを使って考助がどんな家を建てるのか見てみたいという欲求が勝ったからに他ならない。
 その判断が正しかったことなのか、それがわかるのは、考助が家を作り終わったあとのことになるのであった。
はい。今回はレンガ造りの家になります。
木造などを作るかどうかは、まだ不明です。

ちなみに、考助の家づくりは、専門家からすれば「そんなばかな」ということになりかねないですが、そこは魔法建築ということでご納得くださいw
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