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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 塔のあれこれ(その21)

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(3)場所決定!

 第七十二層に家を作ると決めた考助は、早速現地調査をするためにナナとワンリを連れて現地へと飛んだ。
 ちなみに、当然のようにスーラが考助の背中にへばりついている。
 スーラはともかく、ナナとワンリがいるのは、最初から予定していたわけではなく、ただの偶然だ。
 考助が第七十二層に行こうとした丁度そのとき、転移門を使ってきていたナナ、ワンリと鉢合わせになったのだ。
 ワンリにどこに行くのかと問われて答えると、ナナとワンリが付いてくると主張したのである。
 そして、断る理由もなかった考助が許可を出して現在に至る、というわけだ。

 転移門をから出て来た考助は、早速辺りを見回した。
「さて、どこにするかな~?」
 考助の理想としては、うっそうとした木々が生い茂っている森の中で、出来るだけ転移門に近いところになる。
 幸いにして、第七十二層にあるふたつの転移門のうち、第六十一層に向かうほうの転移門は、森がすぐ傍にある場所に建てられている。
 考助は事前にそのことを確認していたので、そちら側の転移門に出るようにしていた。
 家を作る予定にしているのが森の中なので、考助の視線は森に向いている。
 そして、腕を組んで周囲を見回している考助に、ワンリが珍しく積極的に飛びついてきた。
「森に入らずにいても仕方ないですから、入りましょう!」
「お、おおっ!?」
 腕を取ってぐいぐい引っ張るワンリに、考助は驚きつつそのままワンリに導かれるように森の中に足を進めていった。

 
 考助たちが最初に着いたのは、転移門から小一時間ほど入った場所にある小さめの湖があるところだった。
「お兄様、ここはどうですか?」
 期待を込めて考助を見て来たワンリに、考助は苦笑しながら答えた。
「うーん。確かに景色的には良いところなんだけれどね・・・・・・」
「駄目?」
「転移門から近い水場だからね。第六十一層に向かう冒険者が、結構な数の拠点を作りそうだよね?」
 そんなことを話している考助たちの視界に、ちょうどひとつのグループがテントを張っていた。
 それを見る限りでは、この湖が冒険者の拠点として活用されているのは、ほぼ間違いがない。
 別にそれはそれで構わないのだが、普段から多くの冒険者がいる目と鼻の先の場所に長期間、不可思議な効果のある結界を張っていると、どう考えても注目を浴びてしまう。
 この階層まで来ることができる冒険者は、鋭い感覚を持っている者たちが多いので、見つからないかもなんてことは考えていないのだ。

 考助が理想としている建築場所は、冒険者がほとんど来なさそうな場所でありながら、珍しい生き物が来そうな場所だ。
 一見無茶な要求にも思えなくはないが、実は考助はこの階層に来る前に、モンスターの分布を制御盤で確認してきている。
 そのためいくつか候補は絞っているのだ。
 ワンリについてきたのは、彼女の強引さに負けたのもあるが、それ以外にも事前に見繕っていたちょうどよさげなポイントに近付いていたからである。
 ガクリと肩を落としたワンリの背中をポンと叩いた考助は、目星をつけていたポイントのひとつに向かって歩き始めた。

 その場所は、湖のあった場所から三十分ほどさらに森の奥に入った場所だった。
「・・・・・・ここ?」
 不思議そうな顔で周囲を見回しているワンリに、考助は笑顔で頷く。
「そうだよ。ここは、あの水場を狙ってかちょっと珍しい動植物が集まるみたいだからね」
 考助はそう言いながら湧水を指さした。
 そちらに視線を向けたワンリは、そこでナナが水を飲んでいるのを見て苦笑した。
「確かに、水分補給としてはよさそうなところですね」
「そういうこと。珍しいモンスターが来るとなれば、ここまで足を延ばす冒険者もいるからね」
 さらに先の階層を目指すのであれば、わざわざここまで来る者たちはいない。
 最初からこの階層で素材を狙う冒険者であれば、狙ってくる者もいるだろう。
 それくらいの数の冒険者であれば、考助が狙っている家を作るのにもちょうどいいだろうと考えての選択だ。
 そうした場所はいくつか選んでいたが、この場所に決めたのはワンリが最初に方向を示してくれたからである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 水場から更に少し森に入った考助は満足げに頷いて、とある魔道具を取り出した。
「ナナ、ワンリ、こっちにおいで。勿論、コウヒとミツキもだよ」
 考助の指示に従って、呼ばれた者たちが考助に近付いてくる。
 それを確認した考助が、わざとらしく「ぽちっとな」と呟きながら魔道具を起動させた。
「お兄様、それは?」
「この魔道具を中心に指定した範囲を他人に気付かせなくするような結界を張るものだよ。世界樹が張っている結界の小さい版だと思えばいいよ」
 厳密にいえば結界の作りとかも違っているのだが、この場の説明ではそれで十分だった。
 考助の説明に、ワンリが感心したように頷き、ナナが鼻を空に向けたり、地面に向けたりして、しきりに匂いを嗅いでいた。
 それは、単純に匂いだけを嗅ぎ取っているわけではなく、魔法的な物も含めて確認しているナナの仕草だと、いまの考助は理解していた。

 魔道具を動作させて周囲を見回した考助は、満足げに頷いた。
「うん。ちゃんと正常に動作しているみたいだね」
 自分自身の目で結界の境が見えるわけではないが、魔道具がきちんと動作したという感覚が考助の中に残っていた。
 以前にはなかった不思議な感覚だが、これもまた神威が成長したことによる結果のひとつだと考助は考えている。
 相変わらずスンスンと鼻を鳴らしているナナの頭をなでながらそう言った考助に、ワンリが不思議そうな顔を向けた。
「精霊が、動いている?」
「おっ、さすがにその辺の感覚が鋭いね。正解。ちょっと結界を維持するのに、精霊の力を借りているんだよ」
 今回使っている結界の魔道具は、エルフの里の結界を張っているユッタのものをある程度参考にしている。
 自然そのものは結界になっていないが、精霊の力は使うことができるのではないかと考えた成果である。

 結界の魔道具を置く場所をしっかりと確保した考助は、すぐに別の作業に取り掛かった。
 といっても今度は実際に動いたのは考助ではない。
「コウヒ、ミツキ。ちょっとすまないけれど、この道具を中心に百坪ほどの範囲で木を切り取ってもらえる?」
 その考助の指示に従って、コウヒとミツキが有無を言わさず周囲に生えている木を切り倒していった。
 「坪」の言い方が初めて通じるとわかったときは、なんとも不思議に思っていた考助だが、いまではそもそも考助がいた元の世界の知識が植え付けられているためだろうと、あまり深くは考えていない。
 それに、厳密にきっかり百坪である必要はないので、ある程度の広さが確保できればいいのだ。

 切った木をアイテムボックスにしまいながら次々と作業していったふたりは、ものの十五分ほどで必要な広さを確保した。
 あとは、残った切り株を排除したりして、しっかりと整地をしなくてはならない。
 それに関しては、コウヒやミツキの力を借りてもいいのだが、敢えて考助が妖精にお願いすることにした。
 ノールを呼び出して、邪魔なものを避けてもらい、平坦にしてもらったりと、大活躍だった。
 とはいえ、一体しかいないのでスパッと時間がかからずに終わり、というわけにはいかず、小一時間ほどの時間がかかった。
 手間取っていたのは、邪魔なものをどけたあとの整地作業だった。
 それでもこれだけの広さの場所をあっという間にきれいにしてしまうのは、普通ではありえない。
 関係者が見れば目を剥くようなことをやってのけた考助は、さらに作業を続けるのであった。
場所選びに(移動)時間をかけて、整地作業はサクッと終わらせました。
ノール様々ですw
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