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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その20)

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(10)誘蛾灯

 未だに儀式による変調を乗り越えていない考助だったが、あるときコレット、というよりもセイヤとシアに呼ばれてエルフの里に出向いていた。
 エルフからの注目の視線を痛く感じながら、考助はコレットたちがいる屋敷へと歩いて行った。
 彼らが考助のことを注目しているのは、いつものことに加えて、抑えきれない神威がまだダダ漏れの状態だからだ。
 エルフたちの会話からそのことがわかったので、考助も心持ち足早にやり過ごした。
 そして、屋敷に着いて子供たちと対面すると、
「とうさま、すごーい!」
「せいれいさん、いっぱーい!」
 いきなりふたり揃って、考助に向かってダイビングしてきた。
「うわっ!? っとと」
 慌てて抱きとめるが、さすがにふたり同時に勢いよく突っ込まれると、ガシッと受け止めるわけにはいかず二、三歩後ろに下がってしまった。
 それでも嬉しそうに顔を押し付けてぐりぐりしてくるセイヤとシアの頭をなでながら、考助は戸惑った表情でコレットを見た。

 考助に視線を向けられたコレットは、肩をすくめながら答えた。
「コウスケは気付いていないのかもしれないけれど、いまのあなたの周りにはかなりの精霊が集まっているわよ?」
「はい?」
 まったくもって考えてもいなかった答えに、考助は思わず目を点にした。
「確かに神威も結構なものだけれどね。エルフ、特にこの子たちにとっては、それよりも先に精霊のほうが目に入るわよ」
 全てのエルフが精霊を見ることができるわけではないが、感じ取ることはできる。
 そういうことを含めて、エルフは「精霊を見る」と表現するのだ。
「えーっと・・・・・・それって、どういうこと?」
 考助は神威ばかりが気になっていて、精霊に関してはまったく無頓着だった。
 コウヒやミツキは気付いていたが、敢えて直接考助に教えることはしていない。

 首を傾げている考助に、ふたりの子供は同じように不思議そうな顔をしている。
 なにがわかっていないのか、理解できていないのだ。
 そんな三人を見て、コレットはクスリと笑った。
「きちんと説明するから、とりあえず中に入らない?」
 セイヤとシアに玄関で突撃されての会話だったので、全員が立ちっぱなしだった。
 コレットの提案に、考助は素直に頷いて場所を移すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 屋敷のリビングへと場所を移した考助は、さっそくコレットへと問いかけた。
「それで、どういうこと?」
「別に難しいことはないのだけれどね。儀式が終わったあとから考助の周りには精霊が集まるようになっているのよ。管理層は自然物が少ないから分かりづらいのかもしれないわね」
 コレットが言う通り、管理層は考助が作った神域を除けば自然の物は少ない。
 勿論、コウヒやシルヴィア辺りが観葉植物を置いていたりするが、多くの精霊が集まるほどではないのだ。
 もっとも、ただの室内にしては精霊の数が多いのは、さすが不思議空間である管理層といったところだろう。

 普段がそういう状況にあるにもかかわらず、以前にコレットが管理層を訪れたときには、すでに考助の周りには多くの精霊を確認することができた。
 そのときは、考助が儀式によって変化していることを女性陣同士の約束で言わないようにしていたので、コレットは精霊についても話をしていなかった。
 それが最近になって解禁(?)されたので、セイヤとシアの反応と合わせて話すことにしたのである。
「てことは、いまはふたりが言う通り、精霊が一杯?」
 精霊の姿を見ることができない考助は、目を凝らして周囲をぐるりと見たが、残念ながらその目には何も写さなかった。
 世界樹の周りにいる精霊は見ることができるのに、なんとも不思議なことである。

 そんな考助の疑問に答えたのは、コレットではなく双子ズだった。
「とうさまのまわり、せいれいがいっぱーい!」
「とーっても、うれしそう!」
 儀式の旅以来、精霊についての多くをコレットから学んでいるセイヤとシアは、すでに人によって精霊が見ることができる能力に違いがあることを理解している。
 だからこそ、考助が首をかしげていることにもしっかりと答えて来た。
 そのふたりの答えに補足するように、コレットが続けた。
「恐らく神威が増しているお陰だと思うけれどね。以前あったときはこれほどでなかったから、もしかしたら自然があるところにいると考助の周りに集まってくるのかもね?」
「集まって来るって・・・・・・誘蛾灯みたいだな」
 ガクリと肩を落としてそう言った考助を見て、コレットはくすくすと笑った。

 考助の表現が面白かったのか、口に手を当ててしばらく笑っていたコレットだったが、目じりにたまった涙をぬぐいながら首を左右に振った。
「さすがに誘蛾灯は言い過ぎだと思うけれどね。どちらかといえば、花の蜜に集まるミツバチみたいなものじゃないかしら」
「・・・・・・どっちにしても、あまり嬉しくない」
 コレットの微妙な表現に、考助は顔をゆがめた。
 それを見てコレットはもう一度笑ったが、今度はすぐに収まった。
「なにを言っているのよ。なにもしなくても勝手にそれだけの精霊が集まって来るなんて、精霊使いによっては垂涎ものの力よ?」
「それはそうなんだろうけど、精霊術なんて使えない僕の周りにいてもどうしようもないよね」
 正確にいえば、考助の呼びかけに即答えてくれる四種の妖精たちには影響があるのだが、基本的に管理層に籠っている考助には意味がない。
「まあ、そうね」
 そのことがよくわかっているコレットは肩を竦めながらそう答えた。

 考助とコレットの会話が終わるのを待っていたのか、ちょっと間が空いた隙にシアが小首を傾げながら聞いてきた。
「とうさま、せいれいがそばにいるのはいや?」
 微妙に悲しそうになっているシアの表情を見て、考助は誤解させたかと思いつつ、笑顔を浮かべてその頭を撫でた。
「まさか。そんなわけないよ。でも、とうさまには精霊が見えないからねえ。どれだけ喜んでくれているのか見れないのは、ちょっと寂しいかな?」
「そうかー」
 考助の答えに、シアは悲しそうな表情のまま頷いた。
 今度は考助が精霊を見ることができないということに対する表情だ。
「気にしなくてもいいんだよ。とうさまが精霊を見れないのは、生まれたときからだからね。それを悲しいと思ったことはないよ」
 もう少し双子が大きくなれば、逆に見下すことになりかねないということまで教えるのだが、いまはこれだけで十分だ。
 そっとコレットを見れば、彼女もそれで十分だと頷いていた。

 シアとの会話が終わったと見てか、今度はセイヤが話しかけて来た。
「とうさまは、せいれいをみれるようにはならないの?」
 その問いかけにシアがバッと考助を見て来た。
 なにを期待しているのかわかるその反応に、考助は苦笑しながら首を左右に振った。
「どうだろうね。少なくとも前に試したときは駄目だったよ?」
 神威が増えているお陰で、できることが増えているかもしれないが、少なくとも現状では試してみる気にはなれなかった。
 なにが起こるのかわからないためだ。
 いまの不安定な状態が落ち着けば、あるいは試してみてもいいだろう。
「・・・・・・そう」
「だから、気にしなくていいから。とうさまには、精霊が見えなくても他にできることは一杯あるからね」
 今度はセイヤの頭を撫でながら考助は、教え込むようにして言った。

 セイヤとシアの養育(?)はともかくとして、いまの考助は精霊を大量に引き連れている状態だということがわかった。
 ちなみに、考助がセイヤとシアに呼ばれたのは何のことはない、単にふたりが考助に会いたがっていただけなのであった。
作「誘蛾灯と言うよりは、Gほいほ・・・・・・」
考「待って! それ以上は言わなくていいから!」
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