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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その20)

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(9)現状把握(百合之神宮計画)

 巫女たちは、二時間ほどで戻って行った。
 とりあえず今回は顔見せだけなので、百合之神宮を見に行くこともしていない。
 そもそも考助やシルヴィアに拒否されてしまっては意味がないので、面談もどきを行ったというわけだ。
 結果としては、上々だとシルヴィアと話をしているときに、ココロが戻ってきた。
「いかがでしたか?」
 そう聞いてきたときに若干不安そうな顔をしていたのは、自分が選んだ巫女たちが、考助とシルヴィアにどう評価されているのか気になっているためだろう。

 考助は一度シルヴィアの顔を見てから素直にいまの気持ちを答えた。
「うーん。まあ、最後のほうをみれば、そのうち慣れてくれるとは思ったよ」
「基礎的なことはできていますから、神社の管理を任せても大丈夫でしょう」
 考助とシルヴィア、それぞれの意見を聞いたココロは、ホッとため息をついた。
 考助の台詞に関しては多少微妙なところもあるが、こればっかりは時間が経ってみないとわからない。
 最初は相性がいいと思っていても、あとから全然合わないということなど、人間関係においてはよくあることなのだ。
 考助は現人神だが、別に聖人君子というわけではないので、その辺の関係については普通とまったく変わらない。
 ココロもシルヴィアもそのことはよくわかっているので、まずは考助の気持ちを優先しているのである。

「百合之神宮への転移門はどうするつもりですか?」
 あの三人が考助に慣れれば、ココロとしてはすぐにでも百合之神宮に住まわせるつもりでいる。
 それを考えれば、第五層と出入りするための転移門は必要になる。
 まさか、管理層を一度経由してから出入りさせるつもりではないだろうと考えてのココロの問いかけだったが、考助は不思議そうな顔をした。
「あの三人だけだったら、いままで通り百合之神社に繋がっている転移門を使えるようにすればいいと思うけれど? 神宮を観光地として使えるようにするのはまだ先だし、それをするにはトワと話し合わないとね」
 いまある百合之神社の転移門だけを使うなら、わざわざ行政の許可は必要ない。
 建前上は、塔の管理者が勝手に設置して勝手に使っているということになっているためだ。

 そもそも転移門は、管理者が設置しているものを行政(国)が許可を得て使っている、ということになっている。
 そのため、当たり前だが考助たちが使う分には、当然ながら使用料も取られていない。
 百合之神宮を観光地とするためには、新しく転移門を設置するつもりでいる。
 そのほうが管理上便利だし、なによりも管理側が使うものと分けておいた方が面倒が少なくなるのだ。
 新しく設置する転移門は、いつ、どのタイミングで設置するかは考助たちの好きにしてもいいが、勝手に使われても困るので、トワとの調整は必須になる。

 もともと設置してある転移門のことをすっかり忘れていたココロは、はっとした表情になった。
「そういえば、そのようなものがありましたね。使ってもいいのでしょうか?」
「構わないよ。ココロが一緒にいれば使えるでしょう?」
 塔の管理者としてのココロは、全ての転移門が使えるようになっているわけではない。
 例えば、周辺の六つの塔に通じている転移門は使えないなど、ちょっとした制限があるのだ。
 ただし、百合之神社へ向かうための転移門は自由に使えるようになっているので、ココロさえいれば他の者たちも一緒に連れて行くことができる。
 百合之神社を使う他の者たちへの顔見せは必要だろうが、それもココロがいれば問題ないのだ。
「ということは、いつでも使って構わないということですか?」
「勿論、良いよ」
 既に考助との顔合わせも済んでいるので、特に拒否する必要はない。
 ココロの確認に、考助はあっさりと許可を出すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助との話を終えたココロは、そのまま第五層に戻るのではなく管理層に残って他の者たちと話をしていた。
「ふむ。いよいよ百合之神宮も本格始動か。うちの観光地はどうなるのかの」
 ココロから巫女の目途がたったと聞いたシュレインが、難し気な表情になった。
 シュレインが心配しているのは、ヴァンパイアとイグリッドが経営している宿の観光地のことだ。
 塔の中に新たに観光地ができれば、いままで物珍しさで集まっていた客が減ってしまかもしれない。
 そんなことを心配するシュレインに、フローリアが首を左右に振った。
「さほど心配する必要はないだろう。そもそも百合之神宮とは性質が違うからな。それに、百合之神宮には宿の類は置かないのだろう?」
「はい。そもそも置く必要がありませんから」
 百合之神宮のそれぞれの神社に来て、参拝や祈りを捧げるだけなら第五層にある宿泊施設に泊まって、そこから転移門を使って移動すれば十分である。
 転移門の利用料に関しては他と違いを出すのかなど、話を詰めなくてはならないだろうが、少なくともいまのところ百合之神宮に宿を作る予定はない。

 ココロの返答に若干安堵の表情を浮かべたシュレインは、考助へと視線を向けた。
「コウスケはそれで構わないのかの?」
「うん。構わないよ。というか、もともとそのつもりだったし」
 考助としては、元のイメージがあるだけに、お土産店などはともかく宿を置くことまでは考えていなかった。
 その考助の意見を反映しているともいえなくはないが、そもそもシルヴィアもココロも宿泊施設を置くつもりはなかったようだ。
 それに加えて、トワ(行政)の側も百合之神宮に客が分散するよりは、第五層にある宿に泊まったほうがいいという考えを持っている。
 百合之神宮に宿泊施設を作らないというのは、全ての一致した意見になっているのである。

 納得するシュレインの顔を横目で見ながら、今度はフローリアが視線をココロへと向けた。
「宿泊施設はともかくとして、呼び込みなどはどうするのだ?」
「呼び込み? そんなことするの?」
 フローリアの問いかけに最初に反応したのは考助だった。
 信者を獲得するために勧誘をするならともかく、わざわざ神社を訪ねてくるように宣伝をするというイメージはまったくなかったためだ。
「そこまでは行いません。最初は聖職者の間に口コミで噂が伝わって行けばいいと考えています。それに、お父様がそんなことを望んでいないでしょう」
 ココロがそう答えると、フローリアは考助へと視線を向けて、思いっきり大きく頷いた。
「なるほど。言われてみればそうだな」
「何だろう、その反応。微妙に傷つくんだけれど?」
 そう言って顔をしかめた考助に、フローリアは肩をすくめた。
「事実なのだから仕方あるまい。それはともかく、神宮の準備はできているのか?」
 あっさりと流されて肩を落とした考助だったが、いつものことだと流してすぐに復帰した。
「結界とかもきちんと張ったから受け入れ準備はばっちりだよ。どうせ僕は人前に出るわけじゃないから、いまの状態でも問題ないし」
 その考助の説明に、フローリアはシルヴィアを見て確認したが、彼女が無言で頷くのを見て納得の表情になった。
「そうか。それなら問題ないな」
「彼女たちが神社に慣れれば、噂を流すことも始めようかと思います。勿論、その前にはトワ兄さまと話をしないといけないでしょうが」
 ココロがそう今後の予定を話したところで、今回の百合之神宮の話については終わった。

 あとは人の受け入れだけが残っているような状態なので、考助が直接するようなことはほとんど残っていない。
 敢えてあげるとすれば、三人の巫女たちとまだ何度か会わないといけないだろうが、考助自身が特別ななにかをすることはないだろう。
 このように、百合之神宮に関しては、正式に観光地として組み込まれるまであとわずか、というところまで進んでいるのであった。
百合之神宮計画の途中経過でした。
ここまで来ればあと一歩。
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