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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その20)

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(8)緊張2

 ココロが考助の変化を知ってから二日後。
 管理層に百合之神宮にある神社を管理する巫女(候補)が、管理層に来ていた。
 ココロが今回連れて来たのは三人で、年齢はまちまちだ。
 百合之神宮には四つの神社があるが、三人が管理するのは周辺にある三つの神社のどれかになる。
 中央の神社の管理者は、ココロが担当することが決まっていた。
 ちなみに、リリカはあくまでもココロの補佐の立場を貫くようで、神社の管理者にはならない。
 もともとラゼクアマミヤの対外窓口としても忙しく働いているので、これ以上の役職(?)はいらないということだ。
 さらにいえば、いまは喜々として後継者を育てている。

 それはともかくとして、いま考助の前には、見ていて気の毒になるほどに緊張した様子で三人の巫女が座っていた。
 そもそも三人は、考助が会議室に入ってきたときから緊張していた。
 というか、正確には、考助が部屋に入ってくると同時に、いきなり顔を青くしたのだ。
 それを見た考助は、これはあかんと思ったが、挨拶もしていないのにいきなり引っ込むわけにもいかず、名前だけ名乗って席に座るように勧めた結果がいまというわけだ。
 さてこれからどうすべきかと考えた考助は、隣に座ったシルヴィアをちらりと見る。
 その視線の意味をしっかりと理解したシルヴィアは、ひとつ頷いてから話を進めた。
「とりあえずいまの状態では話もできないでしょうから、ひとまずコウスケ様には退席してもらいます」
 別にひとまずじゃなくてもいいんだけれどなあ、と思いつつも考助はできるだけ神妙な表情で、シルヴィアに頷き返した。
 考助は、それを確認してからさっと椅子から立ち上がって、会議室をあとにした。

 そして、考助が会議室から外(廊下)に出ると、そこにはシュレインとミアがニヤニヤ顔で待っていた。
「随分と早かったの?」
「一目見て判断できましたか。さすがですね」
 ふたりの顔を見れば、揶揄う気満々なのがよくわかる。
 考助もわかっていてあえてそれに乗ることにした。
 先ほどの三人の反応を見て、気を紛らわしたい気分になっていたのだ。
「いや、そんなわけないことはわかっているよね? ・・・・・・どうせ追い出されましたよ」
 考助がそう答えると、シュレインが納得顔で頷いた。
「まあ、わかり切った答えじゃったの。いまの考助を前にして、まともに受け答えができる巫女などおらんじゃろ」
「無差別に神威を放っていますからね~」
 そのシュレインに追随するように、ミアもしたり顔で頷いた。

 ふたりの言葉に、考助はガクリと項垂れた。
「人を歩く無差別魔法みたいに・・・・・・」
「なかなかうまいことを言うの」
「的確な表現です」
「ひどい」
 考助は、ふたりの追撃に、そんなこと答えつつ内心ではホッとしていた。
 別にMとかそういうわけではなく、気楽なやり取りに安心したのだ。
 先ほどの巫女たちの態度は、あれはあれで正しい反応だとはわかっていても、やはり思うところはいろいろとあったのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助がくつろぎスペースでシュレイン、ミアと気楽な会話をしていると、シルヴィアが入ってきた。
「コウスケさん、よろしいですか?」
「うん? どうかした?」
 首を傾げる考助に、シルヴィアは小さく頷いて、
「十分に言い聞かせましたから、もう一度あの三人と会ってもらえませんか?」
 申し訳なさそうに言ってきたシルヴィアに、既に落ち着いていた考助は特に表情を変えずに答える。
「それはいいけれど、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫ではないかもしれませんが、いつまでもあのままではいけませんから」
 シルヴィアの言い回しに、考助は納得したように頷いた。
「ああ。ということは、能力的には問題ないんだ」
「はい。まったく問題ありませんでした」
 シルヴィアがあの場に残っていたのは、三人の能力を測るためだ。
 勿論、たった数十分の面接ですべてを知ることなどはできないが、ある程度の情報はココロから上がってきている。
 それをもとに質問を投げかけて、間違いがないかを確認したのだ。
 当たり前だが、人間性も一応確認している。

 そうしたことを行ったうえで問題ないと判断したのだが、ひとつ懸念材料があるとすれば、先ほど考助と対面したときの態度だ。
 百合之神宮に務めることになる以上、考助と直接対面する機会は今後何度も出てくる。
 そのたびにあのような態度を取られてしまうと、考助のほうが百合之神宮から足を遠ざけてしまうことになる。
 百合之神宮の中の百合之神社には、ユリという妖精がいる以上、塔を運営していくうえで出来るだけ避けたい。
「うーん・・・・・・。まあ、シルヴィアが会えっていうんだったら別にいいんだけれどね」
「すみませんが、よろしくお願いいたします。これで駄目でしたら、今後も駄目でしょうから」
 きっぱりとそう言い切ったシルヴィアに、考助は苦笑を返した。
「それはそれで思い切りが良すぎると思うけれどね」
「事実ですから仕方ありません。それに、あまりに続けばコウスケさんにも負担でしょうし」
「そっか。・・・・・・ありがとう」
 自分を気遣ってくれていると分かった考助が礼を言うと、シルヴィアは言葉では返答せずに、ただ笑みを向けて来た。

 
 シルヴィアが考助と一緒に会議室に向かい、そのドアをノックすると中からすぐに返事が来た。
 その声で返事をしたのはココロであることがわかった。
 シルヴィアがそれに応じてドアを開けて中に入ると、ココロを含めた四人にいきなり頭を下げられた。
「わざわざ来ていただきありがとうございます」
「「「先ほどは申し訳ありませんでした!!」」」
 数十分前はガチガチで声を出すこともできなかったのに、きっちりと返事をしてきた。
 いささか気合が入りすぎてうるさく感じなくはないが、十分許容範囲である。

 一体どんな話をしたのかと思った考助だったが、藪蛇になりそうだったのでそれには突っ込まず無難な答えを返した。
「ああ。別に気にしなくてもいいよ。それから、もう十分気持ちは伝わってきたから、それ以上の謝罪もいらないから」
 そのまま何も言わないでおくと、いつまでたっても謝罪されそうだと判断した考助は、そう釘を刺しておいた。
 考助の言葉にひとりの巫女が顔をわずかに引きつらせていたのは、謝罪を続けようとしていたのか、その念押しが叱責かと感じたのかのどちらかだろう。
 考助だけではなくシルヴィアも気づいていたが、それには突っ込まなかった。
 ガチガチで緊張され続けているよりも、たとえ負の感情だろうと、いまはそれを素直に(?)表に出せるようになれば十分だ。

「先ほども言いましたが、いまのコウスケ様は神威が漏れている状態です。普段はしっかりと消していますから、これほどの威圧は感じないです」
 シルヴィアはきちんと今の考助の状態を説明していた。
 とはいえ、儀式によってコントロールができなくなっているなんてことまでは言っていない。
「とはいえ、あなたたちはこれからそれぞれの神社で筆頭として勤めることになるのですから、これくらいのことには慣れてもらわなくては困ります」
 同じことの繰り返しなのだろうが、それでも三人の巫女たちは神妙な顔で頷いていた。
 ただの言葉だけで言われるよりも、実際に考助の神威に触れながら言われるのでは、重みがまったく違うのだ。
 シルヴィアは、だからこそわざわざ考助にこの場に来てもらったのである。

 考助が混じっての巫女たちとの再対話は、五分ほどで終わったが、どちらにとっても少しは実りのあるものになったのであった。
三人の巫女たちは今回、名前が出てきませんでしたが、いずれ出てくる予定です。
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