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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その20)

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(5)神獣たちの変化

 ミツキを含めた話し合いは、その日のうちにコレット、ピーチ、そしてミアにも伝達された。
 話を聞いた三人は、それぞれに反応を示していたが、それを考助に気付かれることはなかった。
 女性同士がタッグを組んで隠し事をすれば、それを考助が見抜くことなどできない、と考助は思い込んでいる。
 もっとも、本当に考助が知りたいこと、知るべきことは、それこそ神としての力で見抜くことができたりするので、実際にはそんなことはないのだ。
 ともあれ、今回の女性陣が共有している秘密については、しばらくの間、考助に知られることはなかった。

 女子たちが自分に関する秘密の会話を行っているなんてことは露知らず、今日も今日とてくつろぎスペースで寝入っていた。
 今日は、先日一緒だったナナとは違って、ワンリが狐姿で一緒に眠っている。
 最近のワンリは、どこか吹っ切れたところがあるのか、狐姿で本能的に行っている行動については、人の姿に戻っても気にしないようになっている。
 開き直っているともいえるのだが、狐姿のときの行動を恥ずかしがる姿も見ていて楽しんでいた考助にとっては、若干さみしいと思うところもある。
 とはいえ、ワンリ本人(狐?)には、そんなことは言えないのだが。

 それはそれとして、すっかり寝入っている考助の上にワンリが寝ていたのだが、くつろぎスペースに誰かが入ってくるのを感じたのか、ピンと耳をたててそちら(出入口)のほうへと向けた。
 そして、目を開けて入って来たのがシルヴィアだと確認すると、ぴょんと考助の上から飛び降りてそちらに近寄っていった。
 ちなみに、考助の上から飛び降りたときは、しなやかな動きでほとんど音を立てていなかった。
 その辺りは流石というべきだろう。

 シルヴィアに近寄ったワンリは、そのまま足元でくるくると回り始めた。
「あら? なにかありましたか?」
 首を傾げてそう言ったシルヴィアに、ワンリはその場で回るのを止めて、数歩進んでから振り返る。
 それを二度ほど繰り返したのを見たシルヴィアは、ワンリがなにを言いたいのか理解した。
「ついて行けばいいのですか?」
 その問いかけがあっていたのか、ワンリは二度ほど首を上下に揺らした。

 
 シルヴィアの個室のドアを前足でひっかくのを見て、なにか話があるのだと理解してドアを開ける。
 その空いたドアからするりと部屋の中に入ったワンリは、すぐに姿を人型に変えた。
 神具のお陰でしっかりと衣装を身にまとっているワンリは、シルヴィアに頭を下げた。
「ごめんなさい。どうしても話をしたいことがあったので・・・・・・」
「気にしなくてもいいですよ。なんとなく理由はわかっていますから」
 ミツキと話してから気付いたことなのだが、考助が昼寝を多く取るようになってから、ナナとワンリが一緒にいる時間が明らかに増えていた。
 そのタイミングから考えて、ワンリがシルヴィアになにを話したいのかは、すぐにわかった。

 シルヴィアの言葉に、一瞬驚いた表情になったワンリもすぐに納得したように頷く。
「ということは、シルヴィアお姉様も、お兄様に起こっていることに気付いていたのですね?」
「ええ。といっても私が気付いたのは、つい先日ですけれど。コウヒやミツキは、最初からわかっていたようですよ」
「そうですか」
 シルヴィアの言葉に、ワンリはホッとした表情を浮かべた。
 既にシルヴィアたちが考助の状態に気付ているとわかって安心したのと、コウヒやミツキが考助のことを悪い状態のまま放置しておくわけがないとわかっているためだ。

 安心した顔になっているワンリに、今度はシルヴィアが問いかけた。
「ナナもそうみたいだけれど、あなたたちはコウスケさんのことに最初から気付いていましたか?」
「はい。儀式を終えたときから。たぶん、スーラもそうだと思います」
「えっ!? そうなの?」
 思わぬ情報に、シルヴィアが目を丸くした。
 ナナとワンリが頻繁に来ていたのは気付いていたが、管理層のどこか(・・・)にいるスーラは、基本的に物陰に隠れていることが多いので、どこにいるのか気付きにくいのである。
「私もお兄様の変化に気付いたのが儀式のあとですから、恐らく間違いないかと。以前、狐の仲間に来てもらったときは、わかっていなかったみたいですから」
「ああ、なるほどそういうことね」
 確かに前にワンリが何匹かの狐を連れて、くつろぎスペースで考助の傍に寄り添っていたときがあった。
 あれにはそういう意味があったのかと、シルヴィアは今更ながらにそのときのことを思い出していた。

 ワンリはワンリでいろいろ確認していたと知ったシルヴィアは、ふと首を傾げた。
「ワンリとナナは考助にべったりだったけれど、なにか意味があるのかしら?」
「あ、いえ、あれは、その、つい?」
 途端に慌てだしたワンリに、シルヴィアはクスリと笑った。
 恥ずかしがっているのがまるわかりの態度だったので、思わずなごんでしまったのだ。
 ナナやワンリが、考助にべったりくっつくのは、すでに見慣れた光景なので、今更なにかをいうようなことはしない。
「そう。それはいいのですが、それでしたらスーラはどこにいるのでしょうね?」
 考助の変化に気付いているのであれば、ナナやワンリのように近くにいてもよさそうなのだが、いまも管理層のどこかにいるのはわかっているが正確にどこにいるのかはわからない。

 そんなことを言って首を傾げるシルヴィアに、ワンリも同じように首を傾げた。
「スーラでしたら、いまもくつろぎスペースにいると思いますよ?」
「えっ!?」
「あ、気付いていなかったのですか。先ほどお姉様が部屋に入ってきたときは、お兄様が寝ているソファにペットリと貼り付いていました」
 スライムらしく粘体質のスーラは、ちょっとした隙間さえあれば、形状を変えて入り込むことができる。
 ソファの下にわずかに空いた空間に入り込むことなど、容易なのだ。
 そんなスライムの気配をしっかりと感じ取っているワンリは、さすがというべきだろう。

 スーラもしっかりと考助のそばにいたとわかったシルヴィアは、ふと思い出したような表情になった。
「儀式に参加した神獣が、そろってコウスケさんのそばに来ているのは、ただの偶然ですか?」
「偶然ではないと思います。以前もそうでしたが、そばにいると以前よりも気持ちよく感じますから」
「気持ちいい?」
 意味がわからずに首を傾げるシルヴィアだったが、それを見たワンリはなんとか言葉にしようと「あの、えーと」などと言っていたが、やがてカクリと首を落とした。
「・・・・・・言葉で説明するのは、難しいです」
 ワンリたちが感じとっている者は、感覚的なもので、言葉で理屈的に説明できるようなものではないのだ。
「そう。とにかく、ワンリたちがなにかを感じ取っているのは、間違いないのでしょうね」
 ワンリは、人と狐の両方を取れることで、そうしたギャップを感じることなどよくある。
 だからこそ、今回も同じなのだろうとシルヴィアも納得した。

 ワンリたちが考助から感じている「優しさ」が、具体的にどういったものなのかはわからないが、それこそ感覚的に悪い物ではないことはわかる。
 それだけで、いま考助に起こっている変化は、少なくともおかしなことではないことは、ワンリの話から推測することができる。
 あとは、その変化を考助がどう受け止めて行くかなのだが、それは考助がそのこと知ったときにどう思うかで変わってくる。
 考助がどう変化しようと、自分もそのことをしっかりと受け止めて行こうと思うシルヴィアなのであった。
今回はワンリメインで、神獣たちが感じている考助の変化でした。
勿論、神獣たちも変化しています。
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