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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その20)

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(4)考助の変化

 はっきりしないミツキの態度に、シュレイン、シルヴィア、フローリアの三人は戸惑っていた。
 考助のことに関しては一切の妥協を許さないミツキ(とコウヒ)が、こんな状態になること自体が初めてに近いことなのだ。
「どういうことなのでしょうか?」
 どう聞いていいのかわからないと言った表情になっているシルヴィアに、ミツキが頷きつつ答える。
「そうね。きちんと話をするには、いまの考助様の状態を理解してもらわないといけないのだけれど・・・・・・」
 どう説明したものかしらと呟いたミツキは、少し考え込むようにうつむいた。

 ほんのわずかな時間、考えていたミツキは、三人の顔を交互に見てから話し始めた。
「まず、あなたたちが予想していた儀式からではないかというのは、正しいわ」
 そのミツキの言葉に、シュレインたちが顔を見合わせながらやっぱりという表情になった。
 そして、やはり神事に詳しいシルヴィアが、代表してミツキに問いかけた。
「あの儀式が、コウスケ様に何かの影響を与えていると?」
「そう。考助様が作った神域、というよりも聖域と言うべきでしょうけれど、あれは、考助様の神としての格を上げる意味もあるわ」
「格を・・・・・・そうでしたか」
 さすがにシルヴィアは、ミツキの説明で考助が行った儀式の意味をある程度理解した。

 考助たちが旅を行っている最中に起こっていた精霊たちの変化のように、儀式によって大陸には少なからぬ影響を与えていた。
 その影響が、実際に儀式を行った考助に対しても変化をもたらしているのだ。
 具体的には、いまミツキが一言で表したように、神としての格を上げているということになる。
「でも、いくら現人神になっているとはいえ、考助様はもとはヒューマンの身体よ。神としての格を上げるのには、器が弱いからいま少しずつそれに適応していっている・・・・・・はずなのよ」
 最後に微妙な言い方になったミツキに、シルヴィアが疑問の表情になった。
「はず・・・・・・ですか?」
「理屈上ではそうなのだけれど、なにしろ現人神自体が初めての存在なのだから、それが正しいのかどうかは私たちにもわからないのよ。ただ、見ている感じでは、悪い方向には向かっていないわよ」
 ミツキとシルヴィアの会話を黙っていたシュレインが、そこで納得したように大きく頷いた。
「なるほどの。コウスケの睡眠時間が増えているのは、身体を適応させているためじゃの」
「その通りよ」
 シュレインの言葉に、ミツキも同意するように頷いた。

 ここで、三人の中でただひとり、いまいちピンと来ていなかったフローリアが、首を傾げながら訪ねた。
「既にコウスケは神となっていたのだが、それでもそこまで負担が大きくなるような変化なのか?」
「なにを言っておるんじゃ。吾らが、それぞれの上位種族に変わったときのことを思い出してみよ」
 シュレインたち女性陣が、現人神としての考助と釣り合うようにそれぞれ進化を果たしたときも、彼女たちに少なからぬ影響を与えていた。
 勿論、日常生活に大きな支障を与えるほどではなかったのだが、時折睡魔に襲われたり、倦怠感を覚えたりと、体にさまざまな不調が出ていた。
 もっともそれは、あとから考えればあれがそうだったかもといった程度のものだったので、当時はあまり気にはしていなかったのだ。
「言いたいことはわかるが、睡眠時間が強制的に増えるようなものではなかったが・・・・・・」
 そのときのことを思い出しながらそう言ってきたフローリアに、シルヴィアがため息をつきながら反論した。
「こういうと怒られるかもしれませんが、私たちが上位種に変わったときと、コウスケ様にいま起こっている変化を一緒にしては駄目です」
「そうじゃの。それに、コウスケが現人神になったときは、あくまでも神々の神域に向かったときだから、これほどの影響も出ていなかったのじゃろう。もしかしたら起こっていたのかもしれないが、神域にいるときに適応を終えたのかもしれぬの」
「そうかもしれませんね」
 シュレインの補足に、シルヴィアが頷いた。
 ミツキも話には加わっていなかったが、シルヴィアと同じように頷いている。

 フローリアは既に、ミツキたちの話が理解できていないわけではない。
 色々な角度から検証することで、なにか見落としや抜けがないかを確認しているのだ。
「コウスケに起こっている変化が、いまの長時間の睡眠時間に現れているというのはわかったが、それはどれほど続くのだ?」
 さすがにこのフローリアの問いには、シュレインもシルヴィアも答えられずにミツキを見た。
 だが、そのミツキも肩をすくめて首を左右に振った。
「それはいくらなんでもわからないわよ。なにしろ、いまも聖域から受けている影響は変化しているのだもの」
 ミツキが答えを出せない理由は、単に考助の身体にどれほどの影響があるのかわからないというだけではなく、いまもまだまだ聖域からの影響が増え続けているのだ。
 その変化がしっかりと終わりを迎えるまで、コウスケがどれくらい影響を受けるかは、答えが出せないのである。

 ミツキの答えに納得しているフローリアの横で、今度はシルヴィアがなぜか心配そうな表情になっていた。
 それに気づいたシュレインが、首を巡らせて問いかける。
「なんじゃ? なにか心配になるようなことでもあるかの?」
「ええ。いえ、心配というか、不安、というべきかもしれません」
 そのシルヴィアの答えに、フローリアが首を傾げた。
「いままでの話でなにか不安になるようなことでもあったか? いや、勿論、いつまで続くかわからないというのは、あるだろうが」
「いえ。そういったことではなく、コウスケ様自身についてですわ」
 シルヴィアは、そう言いながら視線をミツキに向けた。

 シルヴィアが心配しているのは、神としての格を上げている考助が、自身の変化についてどう思うかということについてだ。
 いまでこそ受け入れてしまっている考助だが、現人神になった当初は自分が神になったことを、どちらかといえば否定的にとらえていた。
 それは、普通の人間としての意識が強かったからというのもあるのだが、そもそもの考助自身の性格もあるだろう。
 現人神として受け入れているいまでも、考助はどこかでたくさんいる神の中の一柱、という意識を持っている。
 実際には、アスラを始めとした大神と深い交流を持っている時点で、名のある神の一柱になっているのだ。
 さらにいえば、すでにセントラル大陸中に信仰を持たれているので、実績(?)という部分でも上から数えたほうが早いほどになっていた。

 それが、今回の儀式ではっきりと名実ともに、間違いなく十本の指に数えられるほどの神として認められることになった。
 それは、儀式の際に神々が降臨したことで、すでに一般にも認められている。
 その流れは、考助がどう思っていたとしてもすでに止められない状態にまでなっていた。

 そうした流れと肉体の変化を合わせて、考助が受け入れることができるのかどうか、シルヴィアが不安になるのも当然と言えた。
 だが、そんなシルヴィアの不安をミツキが笑って吹き飛ばした。
「あのね、シルヴィア。忘れてもらっては困るわ。考助様は、そもそも最初からそういった大きな変化を受け入れ続けて、ここまできているのよ?」
 そんな心配は必要ない、と言い切ったミツキに、シルヴィアと同じようなことを考えていたシュレインとフローリアが、顔を見合わせて苦笑した。
「確かに、そうじゃの」
「心配するだけ無駄とまでは言わないが、今回のことも飄々として切り抜けるだろうな」
 考助自身がここで聞いていればそんなことはないと、抗議の声を上げそうな台詞だったが、それは紛れもなくシュレインたちの考助に対する評価の一部だった。
 勿論、シュレインもフローリアも、悪い意味ではなくいい意味で捉えているのだ。
「ないとは思うけれど、もし考助様が潰れてしまいそうになれば、そのときは私たちが支えてあげればいいのよ」
 ふたりの言葉を笑みを浮かべながら聞いていたミツキが最後にそう駄目押しをすると、ようやくシルヴィアも笑顔になって頷くのであった。
考助がメインの話でありながら、一度も考助本人は出てきませんでしたw
でも、閑話にするには話の内容が内容ですので、閑話にはしません。
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