挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その20)

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

944/1284

(3)異変?

 考助がくつろぎスペースでだらけているときに、ふらりとナナがやってきた。
 小型犬ほどの大きさになっていたナナは、考助が寝転がっているソファにとことこ近付いて行き、ぴょいと考助の足元に飛び乗り、そのまま考助の腹の上まで歩いて行った。
 うとうととしていた考助だったが、さすがにナナが乗ってきたことに気付いて、少しだけ目を開けてそのまま自身の腹の上に乗っているナナの背中を撫でる。
 撫でられているナナは、忙しそうに尻尾を振り振りしていたが、そのときには考助は目を閉じて、再び寝る態勢に入った。
 それを確認したナナは、持ち上げていた頭を考助の胸の上に下ろして、眠るように目を閉じた。
 これが、いつものくつろぎスペースでの何気ない風景である。

 一連の流れるような光景を見ていたフローリアは、苦笑しながら隣に座っていたシルヴィアを見た。
「いつものことながら、ごく自然な流れだったな」
「これを見てナナが飼い犬ではないと思う人は、少ないでしょうね」
 フローリアの言葉を受けて、シルヴィアも同じように少しだけ苦笑しながら同意する。
 どこからどう見てもいまのナナは、人に飼われるために改良された愛玩動物にしか見えない。
 実はその中身は、Aランク冒険者すら返り討ちにすることができる存在だとは、誰も気づかないだろう。
「だらしなく寝ている人の上で、無防備な状態で同じように寝ている姿を見て、実は最高の護衛だと見抜ける者はどれくらいいるだろうな」
 まじめな顔でナナのことをそう論評したフローリアに、シルヴィアがクスリと笑った。
「普通はいないでしょうね。そこまで実力があるのでしたら、私たちの耳にも入ってきているでしょう」
「まあ、それはそうだな」
 シルヴィアの答えに、フローリアが頷きつつ同意した。

 いまのナナの実力は、Aランクモンスターを超えてSランクになり、さらにはSSランクに近付きつつある。
 ちなみに、Sランク以上のモンスターは、現在ではドラゴン以外には確認されていないほどの幻のモンスターだ。
 とはいえ、塔の上層にはゴロゴロとそんなモンスターが存在しているのだが、せいぜいがSランクである。
 ただ、アマミヤの塔の第九十八層や第九十九層になれば、SSクラスのモンスターがエリアボスのような感じで存在している。
 それらのクラスに近付きつつあるのだから、ナナがどれほど規格外なのかがわかるだろう。
 ただし、いまの外見ではそれはまったく見抜けないうえに、高ランクのモンスターから感じるはずの圧力のようなものもまったくないので、先のふたりの台詞に繋がるのである。

 シルヴィアとフローリアのふたりがなごんでいると、シュレインがくつろぎスペースに入ってきた。
「なんじゃ。考助はいつもの通りか」
「うむ。本当に、いつものことながら、気持ちよさそうに寝ているよ」
 半分呆れ口調のフローリアだったが、その視線はどこまでも優しかった。
 そのフローリアの表情を見て、シュレインは一瞬だけ楽しそうな顔になったが、すぐにその表情を真面目なものにした。
 そして、その視線をシルヴィアへと向ける。
「最近は、特にこうして昼寝をする時間が増えていると思わぬか?」
 その問いかけに、気にすることはないと答えようとしたが、ふと気になることを思いついて、シュレインと同じような顔になった。
「・・・・・・儀式のあとから?」
 ぽつりと呟かれたシルヴィアの言葉だったが、しっかりとシュレインとフローリアの耳にも届いた。

 独り言のようなシルヴィアの台詞を耳にしたフローリアは、どういうことかと視線だけでふたりに問いかける。
 それに対してシルヴィアは首を左右に振り、シュレインは視線を出入り口へと向けた。
 考助が寝ているので、その場で話すことではないという意味だった。
 それを察したシルヴィアとフローリアは、頷きつつそっと部屋を出て行った。
 勿論その様子は、ナナは気付いていて耳をぴくぴくと動かしていたが、考助自身は気付いているのかいないのか、目を開けることなくすやすやと(?)寝続けるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 くつろぎスペースを出た三人は、フローリアの私室へと集まった。
 会議室はトワやリクであれば簡単に出入りできるため、秘密の会話をするには、誰かの私室の入るのが一番いい。
 もし誰かが訪ねてきてもメイドゴーレムが部屋の前まで案内して必ずノックしてくれる。
 フローリアたちの私室には、ひとつひとつ音漏れ防止の魔道具も備え付けられているので、声が外に漏れることはないのである。

「それで、どういうことだ?」
 シルヴィアが扉を閉めるのを確認してから、フローリアがシュレインに問いかける。
 だが、そんなフローリアに、シュレインは首を左右に振った。
「吾もはっきりしたことがわかっているわけではないの。なんとなく、ここ数日寝ているコウスケを見て、違和感を覚えていただけじゃ」
「私も同じですわね。現に、指摘されるまで気付けませんでしたから。あくまでも儀式から帰ってきてからの様子が、以前と比べて違っていると感じただけです」
 シュレインとシルヴィアの答えに、フローリアは納得したように頷いた。
「なるほどな。確かに私も、言われてみれば、という感覚を持ったからな」
 わざわざ自分の私室にシュレインとシルヴィアを連れ込んだのは、フローリア自身がなにかおかしいと感じたからに他ならない。
 儀式を終えて帰ってきてからの考助は、確かに昼寝をする時間が増えていた。
 しかも、単にうとうととしているだけではなく、深い眠りについているようだった。
 これだけの条件が揃っていて、たまたまだと主張する者は、管理層にはいない。

 何度か頷いていたフローリアだが、とあることを思い出して、シュレインとシルヴィアを見た。
「だが、コウヒとミツキは、まったく心配する様子を見せていないようだが?」
 シュレインに言われるまでシルヴィアとフローリアが、考助の異変(?)に気付かなかったのには、このことにあった。
 もし、考助に危険があるようななにかが起こっていれば、間違いなくコウヒかミツキが動いているはずだ。
 だが、いまのところふたりとも動いている様子もない。
「あのふたりが本気で隠れて行動すれば、吾らは間違いなく気付けないがの」
「それはそうですが、逆にそれは私たちが動かなくても解決できるか、動いても意味がない問題ということになります」
 両極端なシルヴィアの答えに、シュレインとフローリアが悩ましい顔になった。
 いまシルヴィアが言ったことは、動かしようのない事実なのだ。
 どちらにしてもシュレインたちが動く意味はないということになってしまう。

 難しい顔になって沈黙していた三人だったが、ドアのノックの音でその静寂が破られた。
 部屋の主であるフローリアがドアを開けると、そこにはミツキが立っていた。
「さっきあなたたちが話していたことについてなんだけれど・・・・・・入ってもいいかしら?」
「あ、ああ。勿論」
 ミツキだけがこの部屋に来ることなど滅多にない。
 そのため若干驚きつつ、フローリアはミツキを部屋に招き入れた。

 部屋を見回してシュレインとフローリアがいることを確認したミツキは、さっそく本題に入った。
「突然ごめんなさいね。さっきあなたたちが話していたことは、私たち(・・)も少し気になったから、話に混ぜてもらうわ」
 そのミツキの言葉に、他の三人は同時に顔を見合わせた。
 やはりなにか考助の身に起こっているのではと思ったのだ。
 その反応を見たミツキは、右手をひらひらさせた。
「勘違いしないでね。別に考助様の身に、危機的ななにかが起こっているわけではない・・・・・・と思うのよ。たぶん」
 珍しく曖昧な物言いをしたミツキに、シュレインたちは再び顔を見合わせた。
 少なくともミツキがこんな言い方をすることは、よほどのときでもない限りありえない。
 ミツキの曖昧な言葉は、いまの考助に、そのよほどのことが起こっているということに他ならないのであった。
なにやら思わせぶりに終わってしまいました。
続きは次話です。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ