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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 塔のあれこれ(その19)

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(5)肝心の道具

 第五層の自宅の前におかれた屋台を見て、考助が思わず一言。
「いや。頑張りすぎじゃない?」
 大きさでいえば標準の物よりも少し大きめで、まったく見ないものではない。
 ところが、その設備がほぼ最新式のものが揃っていて、とても中古で手に入れたとは思えないほどの真新しさだった。
 誰かが新規発注していたものを横取りしたと言われてもおかしくないほどの状態の良さだ。
「無理やり横取りしたとかじゃないよね?」
 さすがにそれはないだろうと思いつつ、考助は自分の横に立つシュミットを見た。
「そんなことはしませんよ。以前から店舗を持ちたいと交渉していた主から譲り受けた物です」
 笑いながらそう説明してきたシュミットを見て、考助は頬をひきつらせた。
 確かに元の持ち主にとっては良い話なのかもしれないが、傍から見れば少しばかり強引な手であることには違いない。
「・・・・・・あまり無茶な手段はとらない方がいいと思うけれど」
「いえ。元の主が引き取り手に困っていたのを譲るり受けただけです。屋台欲しさに契約を進めたわけではないです」
 相変わらず疑わしそうな表情になっている考助に、シュミットは苦笑しながら説明をした。

 この屋台の持ち主は、もともと人気のメニューを出すということで有名な店主だった。
 その噂を聞きつけて、商人部門が店舗を持たないかと勧誘をし始めたのだが、そのときにはすでに店主は新しい屋台を手に入れていた。
 店主にとっては高い金を出して購入した屋台を手放してまで店を持つのかと悩む中、ちょうど考助たちの話を聞きつけたシュミットが、それならばと買い取る旨を店主と話したらしい。
 ほぼ新品同然の金額での買取に、店主も気をよくして了承して、晴れてシュミットはこの屋台を手に入れたというわけだ。
 ちなみに、店主が開いた店は、以前からの人気も相まってクラウンが予想した通りの繁盛店になっている。
 契約をした店主は、クラウンに加入しているわけではなく、融資を受ける形でクラウンと契約をしていた。
 もともと屋台の店主をするような人は、どこかに所属をするのではなく、自由にやりたという気概を持つ者が多いので、現在ではこうした契約形態も増えているのだ。

 シュミットから説明を受けた考助は、ようやく納得の顔になって頷いた。
「まあ、そういうことなら、いい・・・・・・のかな?」
 そんなことを言いながら首を傾げる考助の肩を、フローリアがポンと叩いた。
「シュミットがいいと言っているのだからいいではないか。それよりも、良い物が手に入ったと喜ぶべきだろう?」
 目の前にある屋台は、まさに考助たちが売り出そうとしている商品のためには、ぴったりのものだった。
 なぜなら、用意した食品ための保温機能が付いているのだ。
 その気になれば、屋台で調理することも可能だが、別の場所で用意することを考えている考助たちは必要としない。
 それよりも調理用の熱源を保温用のものとして流用できる構造が、考助たちにとってはちょうどいい設備なのだ。
「まあ、確かに物は良いのは認めるけれどね」
 考助としても使い勝手でいえばかなりいいものであることはわかっているのだ。

 そんな考助に構わず、あちこち屋台に付いている機能を見ていたシュレインが、首をひねりながらシュミットを見た。
「最新式という言葉に違わず、ずいぶんと高度な魔道具が使用されているようじゃが、そもそも需要はあるのか? まあ、こうして現に目の前にある以上、まったく売れないということはないのじゃろうが」
 高度な魔道具というのは、それだけで値が張る物になる。
 そんなものを使われて作れた屋台は、下手をすれば、店舗を用意するよりも値が張るのではないか、というのがシュレインの主張だ。
 疑問の顔になっているシュレインに、シュミットは首を左右に振った。
「確かに既存の物よりも使いやすい魔道具が多く使われていますが、そこまで高いというわけではありません」
「そうなのか?」
「ええ。そもそも使われている魔道具が、さほど高い物ではありませんから」
 そのシュミットの言葉に、シュレインは目を瞠った。
 シュレインの見立てでは、かなり高い魔道具が使われていると予想していたのだ。

 そのふたりの会話に興味を持ったのか、考助も屋台に近付いて確認をし始めた。
 正確には、その屋台に使われている魔道具を見始めたのだ。
「えーと・・・・・・。ふむふむ。・・・・・・なるほど、それで・・・・・・」
 屋台の下にもぐったり周りをぐるぐる回りながらぶつぶつ呟くその姿は、端から見れば奇妙極まりない。
 ただ、その周囲にいる者たちは、シュミットを除けば、こうなったときの考助をよく見ているので、特に何も言わずに注目していた。
 ついでにいえば、考助がこういう状態になるということは、それだけ注目度が高い魔道具だということを示している。

 思う存分屋台に付いている魔道具を調べた考助は、満足した表情でシュミットを見た。
「シュミット、この魔道具、もしかしなくてもルカが開発に関わっている?」
 考助の言葉に一瞬目を見開いたシュミットは、すぐに感嘆のため息をついた。
「そこまでお判りになるのですか」
「うん。まあ、ルカの場合は、それこそ基礎の基礎から見てきているからね。分かり易い癖をしているよ?」
 そんなことを宣った考助だが、そもそも作った魔道具の魔法陣の癖を見抜いてさらに人物まで特定するなんて真似は、普通はできない。
 少なくともシュミットが知る限りでは、考助しかいない。
「・・・・・・魔法陣の癖を見抜くなんてことは、簡単にできるのですか?」
「んー、どうだろ? 少なくとも新しく作られたものか、改変された物じゃないと無理だと思うよ?」
「と、言いますと?」
 意味が分からずに首を傾げるシュミットに、考助は考え込むように空を見上げながら説明を加えた。
「それこそ昔から存在している魔道具って、使われている魔法陣もそっくりそのまま使われていることが多いからね。師から受け継いでそのまま使われている魔法陣だと、その人の癖までは出てこないよ」
 少し極端な例になるが、手書きの写本とコピーで作った本の違いのようなものだ。
 コピーの場合も完全にそっくりそのまま写しているわけではないが、手書きの写本ほどその当人の癖が出るわけではない。
 魔道具で使われる魔法陣もまた、受け継いだものではなく、一から作った場合にはそうした癖が出るというのが考助の説明だ。

 大いに納得したシュミットは、大きく頷いた。
「なるほど。――――では、」
 さらに続けて聞こうとしたシュミットだったが、そこでフローリアに止められた。
「あ~、待て。魔道具談義は、戻ってからゆっくりと話をしてくれ。いまは屋台の話が先だ」
「・・・・・・そうでしたね」
 ついつい話し込んでしまいそうになったシュミットは、苦笑しながら頷いた。
「それで? 考助から見て、問題はあるか?」
「いいや。高度なつくりになっているのは、見た目だけで、中身はごく単純なもので作られているからね。ルカも随分と良い発想をするようになったね」
 昔のルカは、これでもかとばかりに小難しい魔法陣を作っていたが、目の前にある魔道具はそうした面影はなりを潜めている。
 勿論、先ほど言った通り、癖そのものは無くせないのであっさりと考助に見破られたのだが。
「そうか。それでは、特に問題ないということで、この屋台で開始するとしようか」
 そもそもの目的は、考助たちが使うための屋台を品定めすることだった。

 シュミットが用意した屋台が問題ないとなれば、ようやく大方の準備が整ったことになる。
「場所もしっかりと確保した。肝心の屋台も手に入った。メニューの調整も終わっている。・・・・・・・・・・・・よし。これで準備は整ったな」
 指折り数えて問題ないことを確認したフローリアは、ニンマリとした笑みを浮かべた。
 それを見たシュミットが、期待するような視線をフローリアに向ける。
「――――では?」
「うむ。明日は仕込みの日として、明後日から営業を開始しようか」
 フローリアのその言葉に、その場に集まっていた他の面々は、それぞれ思い思いの表情を浮かべるのであった。
屋台シリーズ第三弾。
何となく書き始めましたが、続いていますね。
折角なので、詳しく書こうと思ったらどんどん字数が増えていますw
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