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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 塔のあれこれ(その19)

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(4)屋台準備

「それでは、第一回屋台の品をどうしようか会議を開催する!」
 ワー。パチパチパチパチ。
 フローリアの宣言を聞いた一同が盛り上げるように拍手をした。
 さすがに一国の長をやっていただけあって、フローリアの宣言も様になっている。
 考助としては、こんなところで無駄に才能を使うなと言いたいところだが、残念ながらこの場にはいなかった。
 いまくつろぎスペースにいるのは、普段管理層にいる女性陣に加えて、屋台のメイン調理人になるエリと料理を教えることになるミツキだ。
 この場に考助(とコウヒ)がいないのは、別にハブられているわけではない。
 エリとミツキから屋台に出すメニューをどうするのかと相談を受けたフローリアが、ノリで会議をしようと言い出したときに、たまたま階層の視察でいなかっただけだ。

 フローリアの宣言から十分ほどたった。
 どちらかといえば、女子会のような感じになっていて、話があちこちに飛んでいる。
 それでもメインのメニューをどうするかという軸からは外れていないのは、さすがというところだろう。
 その様子を傍で見ていたミツキは、そろそろいいだろうかということで、起爆剤を落とすことにした。
「カレーでいいんじゃない?」
 その一言に、好き勝手にいろいろな意見を出していたメンバーがピタリと止まった。
「「「――――できるの?」」」
 集まった視線が怖い、とミツキは思ったが、口には出さなかった。
 たとえミツキであっても、食に関わる女性の集団の視線は怖いのだ。
「できる、できないでいえば、できるわよ? すこしエリが大変になるけれど・・・・・・まあ、慣れれば大丈夫よ。たぶん」
 途中でエリが悲壮な顔になったが、ミツキが安心させるように微笑んだ。
 エリが、最後の一言で顔が引きつったりしていたが、そこは見なかったことにした。

 フローリアが腕を組みながらひとつだけ頷いた。
「ふむ。カレーができるのであれば、私としては異存はないが・・・・・・皆はどうだ?」
「「「異存なし!」」」
 全員そろっての返答に、フローリアは満足そうな表情になった。
「よし。ではメインはカレーで決定だな」
「メイン?」
 フローリアの言葉に反応して首をかしげたのは、ミアだった。
 その顔は、まだなにかするつもりなのかと言っている。

 ミアの顔を見たフローリアは、気付かなかったふりをして大きく頷いた。
「うむ。カレーだけでも十分商売にはなるとは思うがな。そもそも今回の話は、考助の故郷の料理を広めるということだ。せっかくだから、サイドメニューを増やしてもいいと思わないか?」
「唐揚げ!」
 フローリアの提案に、すぐにミアが反応した。
「なるほどの。だとすれば、コロッケもいいのではないかの?」
「男の方でしたら、ハンバーグなどもありでしょうね」
 ミアに続いて、シュレインとシルヴィアが乗ってきた。
 ちなみに、三人とも揃って単品でも売れる物を上げているのはわざとだ。
 メインのカレー以外にも名物になるような物があれば、それだけで屋台の人気は高くなる。
 注目されればされるだけ、本来の目的も達成されやすくなるのだ。

 三人の意見が出たところで、視線は再びミツキへと集まった。
「うーん。コロッケと唐揚げはともかく、ハンバーグは今回は見送ったほうがいいかな?」
「それはなぜだ? 調理の問題か?」
 フローリアの問いに、ミツキは首を左右に振った。
「勿論それもあるけれど、どうせだったらハンバーグは別口で出したくない?」
 だったら唐揚げやコロッケはどうなるんだと、一部からクレームが来そうなミツキの言葉だったが、他の面々は考え込む表情になった。
「・・・・・・ソースをいろいろと考えて出すということですか?」
 もしかして、という感じで口を開いたのは、ミアだった。
「そういうことね。一気にいろんな種類のソースを出すのには、ちょっと準備が足りないからね」
「ふむ。なるほど。そういうことか。・・・・・・それに、実際に調理をすることになるエリのことを考えれば、最初は二品くらいが丁度いいか」
「それもあるわね」
 フローリアとミツキの会話に、エリがそっと安堵のため息をついていた。

 そんなエリに気付いたシルヴィアが一言。
「エリ。あなたの立場では無理もないでしょうけれど、そんなに気負う必要はないのですよ」
「ああ、そうだな。そもそも失敗したところで大した問題ではないからな」
 失敗するなんてことは微塵も考えていないフローリアだが、エリの緊張をほぐすためにも敢えてそう強調した。
「そうじゃの。それに、最初のうちは、きちんとミツキ殿がサポートに付くことになっておる。そなたはいつも通りに料理をするのを楽しめばよい」
 エリが未だに奴隷のままで百合之神社の管理員として残っているのは、料理好きの彼女がミツキから新しいレシピを知ることができるから、というのもあった。
 それを考えれば、今回の件はエリが一番の適役というのも間違ではないのだ。
「は、はい!」
 それでもやっぱり緊張が解けないのか、上ずった声で返事をしたエリに、他の面々は苦笑を返したがそれ以上はなにも言わなかった。
 彼女の性格上、そのうち慣れて行くだろうと考えたのだ。これ以上、この場で慰めても(?)逆効果になるということもある。

 エリに関してはそれ以上触れるのはやめて、フローリアは別の問題をミツキに確認することにした。
「商品を作るのは、第五層の屋敷でということになるが、なにか不足している物はあるか?」
「そうねえ。どうせ屋台用と割り切ってしまうのであれば、いっそのことキッチンを改築したらどう? 庭に新たに作ってもいいと思うけれど」
 原案では、屋台で料理を出すといっても調理そのものは、せっかくある家で作って出すことを考えている。
 その方が、あとで品を増やすことも容易なのだ。
「むっ。それは私も考えたが、それだと屋台を出すのが遅くなるのではないか?」
「最初のメニューが定着するまでは、数もさほど多くは出さないのでしょう? それだったら、とりあえず家庭用でも十分じゃないかしら?」
「ああ、なるほど。そういうことか」
 後々のことを考えて、いまのうちから大型のコンロなどを用意しておけと言う提案に、フローリアも納得の表情になった。
「それは確かに考えておかなければならないが・・・・・・問題はどこまで関わるか、ということになるな」
 今回の件は、あくまでも考助発の料理をラゼクアマミヤ内に広めることだ。
 独占して販売することを目的にするならどんどん規模を拡大していくのが普通なのだが、この場にいる誰もそこまですることは考えていない。
 レシピも取引してほしいと言われれば表に出すことも考えている。
 勿論、独占されては困るので、あくまでも権利は握ったままにしておくつもりなのだが。

 商品を作る設備につい話していると、シュレインがふとなにかを思い出したような顔になった。
「そういえば、屋台そのものはどうするのじゃ? 手に入れる目途は立っておるのか?」
「具体的にはまだだな。とはいえ、シュミットあたりをつつけば、喜んで新しい物を手配してくれると思うぞ?」
 考助(たち)がなにか新しいことを始めるたびに目を輝かせるシュミットのことだ。
 今回も話をすれば、張り切って動いてくれるだろう。
「それもそうじゃの」
 嬉しそうに動き回るシュミットを容易に想像できたシュレインが、苦笑しながら頷いた。

 ちなみに、フローリアからこの話を聞いたシュミットは、どこからどう手配をしたのか、三日後には要求した屋台の手配を済ませてしまうのであった。
何となく書いてみたくなったので、屋台話はもう少し続きますw
ただ、考助の出番が中々見当たらないです(´・ω・`)
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