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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第9部 第1章 塔のあれこれ(その18)

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(6)他国の様子と訪問者

 ミクについての話を終えたあとは、最近のラゼクアマミヤや考助が行った儀式で降臨した神々についての話になっていた。
「・・・・・・ということは、儀式自体はさほど騒ぎになっているわけではないと?」
「そういうことですね。噂話の主体はどちらかといえば、神々の降臨のほうになっています」
 考助の行った儀式では、大陸中にある町や村に神々が降臨していた。
 そもそものきっかけが考助の儀式である以上、噂されていないわけではないが、トワが言った通り話の中心は神々の降臨についてが中心になっている。
 注目されているのが自分だけではなく、他の神々だということに気をよくした考助は、嬉しそうな顔になっていた。
 だが、そんな考助に、トワの冷静な一言が突き刺さった。
「父上については、さすが現人神とか、いつものとおりだとか、またかといった認識でいるようですね」
「うぐっ!?」
 何故にさほど表に出ているわけではない自分がそんな評価を得ているのかわからない考助は、トワの言葉に目を剥きつつ、うめき声を上げた。

 どうにか反論する余地はないかと考えた考助は、なんとかその答えをひねり出してみた。
「前にやらかしたときから結構時間が経っているのに、なんでそんな評価なのか・・・・・・」
 ぼそりと出されたその呟きに、息子の冷たい視線が突き刺さった。
「父上・・・・・・。そもそも神の行いが人々の噂に乗ることなど、十年単位のことになります。ましてや、同じ神について続けざまに噂が立つことなど、これまでなかったと言っていいでしょう」
 頻繁にアースガルドに降臨することのない女神たちは、必然的に人々の噂に乗ることも十年単位、ともすれば数十年単位でのことになる。
 しかも、その内容は、せいぜいがどこどこにほにゃららの神が降り立ったらしい、などの極めて曖昧なものだ。
 歴史的な大事件が起こったような場合でもないとその程度の頻度でしかなかった神々についての噂話が、考助が現人神として認められてからは異常と言っていいほどの精度の噂が出回っている。
 つまり、間違っているのは人々の認識ではなく、考助の呟きなのだ。

 どうにかひねり出した言い訳(?)があっさりと否定されてしまった考助は、それ以上の反論を諦めてついとトワから視線を逸らした。
「まあ、そうともいう、かな?」
「そうとしか言いませんよ。・・・・・・まったく」
 ため息をつきながらそう答えたトワに、フローリアが笑いながらその肩をポンと叩いた。
「まあ、そう責めるな。コウスケのことだからな」
 たった一言でそう締めたフローリアに、考助は一瞬その言い方はおかしいと返事をしようとしたが、やめておいた。
 この件に関しては分が悪いと、周囲の視線からもわかっているのだ。

 分が悪いと察した考助は、さっさと話題を逸らすことにした。
「それで、神域に関しての他国の様子はどうなっているの?」
「いまのところは、表だってなにか言ってくるところはありません。前もって塔の権限移行の話は伝えてありましたからね。むしろそちらの方が影響が大きかったですよ」
 アマミヤの塔の持つ大陸全体に及ぼす攻撃兵器と防御兵器は、各国にとっては目の上のたん瘤といっていいものだ。
 いままでは表に出てくることのなかった現人神が握っていたことで、その武器を使って他大陸に攻め込んでくることはないと判断していた。
 それが、突如として神ではない血族の者に譲ると発表したのだ。
 神はよほどのことが無い限り、人の作る国家や機関に直接の影響を及ぼすことはしない。
 だからこそ安堵していた部分もあったのが、その前提が崩れてしまった。
 これから先、強大な力を持つ武器をどのように運用していくのか、注目が集まるのは当然のことだった。

 考助が行ったセントラル大陸全体の神域化は、むしろ塔の機能の譲渡を裏付けるものとして注目されているのが現状だ。
「ふむふむ、なるほどね。一応、狙った通りになったってことかな?」
「そうですね。これで塔の機能は、神の行いとは別に起動できるようになったのですが・・・・・・その意味に気付いているのはどれくらいいるのか」
 トワとしても、いつまでたっても各国が本当の意味に気付かないとは考えていない。
 だが、その前にこれ幸いと手を出してくるところがあるのでは、というのが懸念材料となっているのだ。
 そもそも考助がミアに塔の機能の譲渡を行って、セントラル大陸を神域化したのは、大陸に余計なちょっかいを出してこないようにするためだ。
 現人神(塔)が守る大陸というタガが外れたとたんに、馬鹿なことを考える国がないとも限らない。
 これまでの例からいっても、色々な理由を見つけてはちょっかいをかけてくることは否定できないのである。
 そのちょっかいが煩わしくても、いままでは考助が管理していたために自制していたのだが、ミアに権限が変わったことで現人神という枠組みから外れて気楽に(?)使えるようになった。
 それをきちんと理解してくれればいいのだが、大陸の神域化で逆に誤解する可能性もあり得る。
 結局、自国にとって都合のいいように解釈をして、最大限の利益を得ようとするのは、これまでの人の歴史のなかで一度も変わることのない真理なのであった。

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 まじめな話を終えたあとは、それぞれで解散をして部屋に戻って行った。
 考助は、フローリア、トワとともに久しぶりに親子水入らずの晩酌を続けていた。
 といっても、宴会というほど飲むようなメンバーではないので、シュミットが持ってきてくれた珍しい酒を喉を潤す程度に飲んでいる。
 ただし、親子の会話といっても、話している内容は国の話などの固い話になりがちだ。
 このメンバーで飲むときは、どうしても政治的な話に偏りがちになるのは、立場的に仕方ないことだろう。
 それでも本人たちは、楽しく話をしているのだから、特に問題はない。

 このとき、三人は、くつろぎスペースで飲んでいたのだが、珍しい乱入者が部屋に入ってきた。
「なんだ。随分と珍しいんじゃないのか? 兄上」
「貴方こそ、なかなかここに寄り付かないという話を聞いたばかりなんですがねえ、リク」
 深夜に近い時間になって管理層に来たのは、冒険者である装備をつけたままのリクだった。
 その姿を見て、母親フローリアの両眉がつり上がった。
「泥が付いたままの姿でこの部屋に来るな。まずは風呂に入って着替えて来い。掃除が大変になるだろうが!」
「おっと。しまった! 兄上がいると聞いたからつい」
「ハハハ。まあ、気持ちはわかるけれど、とりあえずフローリアの言う通りにした方がいいかな?」
 肩をすくめるリクに、考助は笑いながら風呂場のある方を指し示した。
 それを見たリクは、素直に頷いてその方向に向かって歩き始めた。

 リクが管理層に来たと知った三人は、風呂からあがってくるまでちびちびと飲み続けていた。
「それにしてもリクはなにをしに来たのでしょうねえ」
「あれ? 言ってなかったっけ? 僕らが旅に出る前のリクは、暇を見つけてはこっちに来ていたよ? 主に訓練の目的もあるだろうけれど」
「え? そうなのですか?」
 驚くトワに、考助は深く頷いた。
 管理層が生活拠点であるミアを除けば、実は管理層にくる頻度が高いのはリクだったりする。
 学園を卒業したての頃は、それこそ親を避けるようにして来ていなかったのだが、リクの仲間たちがシュレインたちと繋がりを持つようになってからは、特によく訪ねて来るようになっていた。
 勿論、頻繁にとはいっても他の子供たちに比べてという意味で、考助やフローリアにしてみれば、もっと来てもいいのにと思っていることはまた別の話である。
なんだかまだ第8部として続けておけばよかったと思う今日頃ごろ。
話の内容が完全に、旅の成果の発表になってしまっています。
まあ、せっかく分けたので、いまさら直したりはしませんが。
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