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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

終章 神の領域(神域)

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(4)最後の儀式

 半径三メートルほどの大きな魔法陣の中心に考助が立っている。
 考助が祝詞を唱えるたびにその魔法陣が光り輝くが、考助自身がなんと言っているかは、フローリアたちのいるところまでは聞こえていない。
 それに、そもそも聞こえたところで何かができたわけではないだろう。
 考助が使っている祝詞は、言葉そのものだけを言ってもただの音だけを発するものでしかない。
 勿論、文章としての意味は持っているのだが、なんの素養も持たない一般人が口にしたところで、本に書いてある文章を口に出しているのと変わらない。
 その祝詞と考助の持つ神力があって、初めて儀式としての意味を持つのだ。
 勿論それは、考助の儀式を見守っているシュレインたちでも同じことだ。
 考助は意識していないが、今行っている儀式は、完全に現人神コウスケとしての力を示す一端なのである。

 考助から感じ取れる力の奔流に、儀式を見ていた者たちが息を呑んだ。
 それは、これまで六回の儀式を見て来たシュレインたちも同様だ。
 今回の儀式は、いままでと比べても、それらが児戯だったと言わんばかりに莫大な神力が込められている。
 神力のことなどわからない者たちにとっても、その力ははっきりと感じ取ることができるだろう。
 現に、トワが選んでこの場に連れて来た者たちは、考助から力を感じ取っているからこそ驚きの表情になっているのだ。
「これは・・・・・・大丈夫なのですか?」
 儀式の邪魔にならないように小声でそう呟いたのは、考助のことに慣れているはずのトワだった。
 さすがのトワも考助がこれほど本気で力を発揮することは見たところが無かった。

 そして、それは女性陣も同じである。
 ただし、トワ以上に考助のやることを見てきていたので、力の大きさに驚きはしても不安になるようなことはなかった。
「コウスケができると考えてやっているのだから大丈夫なんだろうな」
 考助は、彼女たちから見て、無茶や無理だと思うことを結構平然としてやってしまうことがあるが、それはきちんと自分の持つ力を見極めたうえでのことだと知っている。
 だからこそ、今回の儀式も考助自身はできると考えてやっているのだとわかっている。
 なによりも、コウヒとミツキがまったく焦らずに平然としているので、考助に重大ななにかが起こるとは考えていないのである。

 フローリアがコウヒとミツキに視線を向けるのを見て、トワもようやくそのことに気が付いた。
 コウヒに育てられたようなところがあるトワは、彼女の考助に対する思いを誰よりもよく知っている。
「・・・・・・それならばいいのですが・・・・・・。いや、しかし、なにをするのかは聞いていましたが、これだけの力を必要とするのですね」
 コウヒの様子を見て、多少の余裕が出て来たのか、トワが呆れ半分でそんなこと言った。
 だが、それに対してフローリアは首を左右に振った。
「残念ながらな、トワ。さすがに今回ほどではないが、コウスケは同じような儀式をすでに大陸内で六度行っている。全部の力を合わせれば、とんでもないことになるぞ?」
「それは、また・・・・・・。さすがは神の一柱、といったところでしょうか」
「まさしくな。・・・・・・普段のあれからは、かけらも想像できないが」
 冗談半分で呟かれたその言葉に、トワは思わず小さく笑みをこぼすのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助は、周囲に見守られながら順調に儀式を進めていった。
 普段の決まったメンバー以外にみられることなどほとんどないので、最初のうちは多少緊張していたのだが、儀式を進めていくうちにそれはきれいさっぱり消えてしまっていた。
 大きな失敗もなく儀式は進んでいるので、多少のことは許容範囲だろう。
 なによりも、儀式を行っている考助が、失敗したという感触を得ていないので問題ない。
 もうすでに考助が唱えるべき祝詞は、ほとんどが終わっている。
 足元の魔法陣も光り始めていて、あとは考助が起動の文言を唱えれば、発動するという状態になっていた。

「六方に配するは、我が眷属である三つの神獣、神具。かの力をもって六方の力と成す」

 しっかりと、それぞれの場所に置いてきた神獣と神具のことも盛り込めば、あとは最後の総仕上げとなる。
 いままで行ってきた儀式の魔法陣とそれらを繋いだ神力を使って、大陸を覆うように巨大な六芒星を起動させるのだ。

「我が考助の名において命ずる。六の輝きを持って星を成し、我が力を満たす聖域と成さん!」

 最後の祝詞を考助が唱えると、足元にあった魔法陣がさらに力強く光を放った。
 ただし、不思議なことにその光は目を焼くことなく、見ていた者たちは、その光景のすべてを見届けることになった。
 足元にあった魔法陣が徐々に上空に浮いて行き、十メートルほどの高さで止まった。
 上空に止まった魔法陣は、込められた力を収縮するように、徐々に小さくなっていく。
 五十センチほどの球体になった魔法陣は、両手と両足を生やすように、四方向に向かって光の線を伸ばしていった。
 もし、このとき、遥か上空からセントラル大陸の様子を見ている者がいれば、考助たちのいる島から四方向に伸びた光が、六芒星を形作っていくところが見えただろう。
 左右に伸びた光は正確な円を形作り、下方に到達したあとは、そこから逆正三角形を作る。
 下の二方向に伸びた光は、そのまま正三角形を形作った。

 光の線が正確な六芒星を作れば、儀式はいよいよ最終盤となる。
 といっても、ここまで来れば考助が出来ることはなにもない。
 出来上がった六芒星が、正確に起動するのを待つだけだ。
 空にある六芒星の光は、夜空に浮かぶ星のように何度か強くなったり弱くなったりを繰り返してから、やがて強い光を放った。
 ここまで来れば、セントラル大陸中にある町や村の住人たちも儀式に気付く者たちが出て来ていた。
 とはいっても、巨大な六芒星の全体像が見えているわけではない。
 六芒星から出て来た光が、空から降り注ぐところを確認していたくらいである。
 それでも、その不可思議な現象が、なにか大きな力を持つものの仕業で起こったということは、本能的に察した。
 なによりも、降り注ぐ光が無くなるのとほぼ同時に、この世界に住まう者たちにとっては驚嘆すべきことが起こった。

『お聞きなさい。セントラル大陸に住まうすべての者たちよ』

 その音なき声に、光に注目して外に出ていた者たちが、揃って上空を確認した。
 そして、そこに彼らが敬うべき神の一柱が存在していることを、全員が認識する。
 中には、その信仰心のあまりに膝をつく者さえ出ている。
 上空にいる神がどの名で呼ばれている神であるかまではその場にいる者たちには確認できない。
 それでも、この世界を統べる神であることには違いないのだ。

 各所で起こった突然の神の降臨に、セントラル大陸中の人々は何事かと驚いたが、降臨した神々はそれを気にすることなくすべての人々に神託を下した。
 その内容は、現人神がたったいま儀式を完成させて、セントラル大陸をかの神の聖域(神域)と成したということだ。
 人々にとっては唐突な神託だったが、それでも反発する者は出なかった。
 それもそのはずだ。
 アースガルドに住まう者たちにとって、神からの信託は、絶対のものなのである。
 なによりも、神の一柱が地上に聖域を作るということは、大陸にすむ者たちにとって良いことはあっても悪いことは起こらない(とされている)。
 人々は、ただ黙って神からの神託を受け入れるのであった。
やっと儀式が完成しました。
最後のサプライズは、当然考助も知りませんw
まあ、もともと神域(聖域)化したことは、ラゼクアマミヤを通して知らせるつもりだったので、問題ありません。
ないったらないのです。

ちなみに、最後の最後であえて「聖域」という表現を使いました。
いままで使っていなかったのは、「聖力をつかった結界」を限定して聖域ということもあるので、混ざったりしないようにするためです。
むしろそちらのほうが一般的なので、いままではあえて神域としていました。
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