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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

終章 神の領域(神域)

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(3)船での移動

 最後の儀式を想定外の理由で失敗した翌日の昼。
 フローリアの活躍によって、考助たちは船上の人となっていた。
 当初の予定では朝に出るはずだったのだが、急遽別の要素が加わったことにより、半日ずれることになったのだ。
「今日は、良い天気で良かったですね」
 その原因が、考助の隣で笑顔を見せながらそう宣ってきた。
「・・・・・・トワ。本当に良かったのかい?」
「なにがでしょうか? 船のことでしたら心配ご無用ですよ?」
 笑顔のままそう答えたトワに、考助が首を左右に振った。
「そうじゃなくて・・・・・・いや、それもそうなんだけれどね。仕事は大丈夫なのかい?」
 そもそも考助がこうしてラゼクアマミヤの軍船を使って旅をすることなど予定になかった。
 いまの旅は、急に決まったはずなのに、一国の主であるトワが、急に予定を変更して大丈夫なのかという考助の心配も当然のことだ。

 ところが、そんな考助の問いに、隣にいたトワではなく彼らの後ろから別の人物が笑いながら答えた。
「心配するな、考助。この船は、王が日常と変わらない業務が行えるような機能を兼ね揃えている」
 フローリアがそう言うと、トワがコクリと頷いた。
「そういうことです。ついでに、緊急の連絡が入っても大丈夫なように、しっかりと通信具は備え付けてあります」
「通信具って・・・・・・ああ、あれか」
 考助提供の通信具の中には、船で場所を移動しても使える物がある。
 その通信具は、王城にある通信具と対になっているので、不意の事態が発生した場合でも連絡を取ることができる。
 つまりは、いま考助たちが乗っている船は、フローリアが言った通り、ラゼクアマミヤの王が通常業務ができるようになっているのだ。
 ただし、FAXのように実際の紙面での承認はできないので、船にいる間は口頭で承認を行い、実際の紙面は後日処理することになるのだが。

 そんな裏事情はともかくとして、トワはいま、考助たちと同じ船上の人となっていた。
 建前としては、国の旗艦を動かすのだからそれ相応の人物が乗っていなければならないということになるが、引退したとはいえ、前女王であるフローリアがいる時点でそんな建前は必要なくなる。
 では、なぜトワが旗艦に乗り込んでいるのかといえば、
「折角の機会ですから、父上、母上と一緒に旅をしてみたいではありませんか」
 ということだった。
 このトワの台詞を聞いた考助は、それでいいのか、と思わず突っ込んでいたが、フローリアは苦笑をしていた。
 実際にトワが重鎮たちにそう言って押し切るところを見ていたフローリアは、彼らがトワの言葉に全面同意して頷くところを見ていたのだ。
 そもそもトワは、同じ兄弟であるミアやリクと違って、両親と一緒に旅行など行く機会は非常に少なかった。
 当然のようにトワのスケジュールを知り尽くしている重鎮たちは、そのことを知っていたので、今回の件がちょうどいい機会だという言葉に同意したのだ。
 基本的に家族で過ごす機会を最大限生かすように普段から口を酸っぱくして言っているトワなので、これ幸いとばかりに重鎮たちも笑顔で送り出したというわけである。
 普段の行いがいい結果(?)をもたらすという、好例であった。

 考助としても別にトワと旅することに不満があるわけではない。
 特に今回のことに関しては、わざわざ国の船まで動かしている。
 感謝こそすれ、文句があるわけではない。
 単に国王としての業務が大丈夫なのか、気になっただけだ。
「まあ、他の人たちが納得しているんだったらそれでいいんだけれどね」
 敢えて考助がそう言うと、ここぞとばかりにフローリアが突っ込んできた。
「素直じゃないな。はっきりとトワと旅ができてうれしいといえばいいだろうに」
「そこは、ほら。父親としてのプライド?」
 息子トワを目の前にしていってしまうと台無しなのだが、考助は気にせず首を傾げながらそう言った。
 半分冗談も混じっているので、ちょっとした会話の遊びだ。
 現にトワも笑顔を浮かべてはいるが、深くは突っ込んでこなかった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 船での移動は、特に天候が荒れることもなく順調に進んで、半日ほどで目的地に着いた。
「あ、あの小島がちょうどいい感じだね。上陸って出来る?」
 場所が海であれば、そのまま船の上で儀式を行う予定だったのだが、ちょうどいい感じの場所に小島があったので、考助はその小島を指さしながら確認した。
 確認した相手は、旗艦の船長だ。
 本来であれば、トワや同乗している将軍を間に挟んで聞いた方がいいのだろうが、船の場合は急には止まれないので、直接船長に確認したほうが速い。
 船長もそれがわかっているので、緊張した面持ちながらもはっきり頷いた。
「はい! さすがにこの船で直接乗りつけることはできませんが、小舟から移動することは可能です!」
 船長には考助が誰であるかということをはっきりとは言っていないが、それでもフローリアやトワと親し気に話していることで、重要人物だということはわかっているのだ。
「そう。それじゃあ、それでお願いしていいかな? こっちが上陸するのは六人で」
「かしこまりました」
 考助の言葉に、船長はチロリと将軍へと視線を向けて再度頷くのであった。

 船員が操る小舟から島に上陸した考助は、早速儀式の準備を始めた。
 ちなみに、考助&嫁さんズ以外にも、なぜかトワや将軍、宮廷魔術師がついてきている。
 折角なので、考助が行う儀式を近くで見たいという名目だ。
 宮廷魔術師は、そのためにわざわざトワが連れて来ていた。
 考助もそのくらいだったらいいかという感じで許可を出している。
 これまでは、大勢の人に見つかって騒ぎになるのが嫌で隠れるようにして儀式を行ってきたが、なにがなんでも隠すつもりはないのだ。
 とはいえ、何でもかんでも質問されるのは面倒なので、その辺りは抑えるように言ってある。
 そうしたことをお互いにしっかりと確認したうえでの見学許可なのだ。

 
 周囲を旗艦の乗組員に警戒してもらいつつ、フローリアたちは準備を進める考助を見ていた。
 今回は、大陸から離れた小島ということで、コウヒやミツキが魔法で隠すこともしていない。
「・・・・・・随分と大掛かりなのですな」
 フローリアにそう声をかけてきたのは、ラゼクアマミヤの筆頭宮廷魔術師だ。
 この魔術師は、フローリアが女王の時代から筆頭宮廷魔術師として仕えているので、お互いによく見知っている。
「それはそうだろう。なにせ、大陸中に効果を及ぼすような儀式だぞ。むしろ、あの程度の準備で事足りるほうが不思議じゃないのか?」
 フローリアのその言葉に、筆頭宮廷魔術師は、驚愕のあまり口を大きく開けた。
「それ以上口を開けると、顎が外れるぞ。なんだ、詳しい説明はしていなかったのか?」
 フローリアは、冗談っぽく笑いながらそう言いつつ、後半はトワに視線を向けていた。
 その視線を受けて、トワも笑いながら頷いた。
「ええ。その方が楽しいではありませんか」
 いたずら小僧のような笑みを浮かべてそう言ったトワに向かって、フローリアは大きくため息をついた。
「・・・・・・まったく。トワは、似なくていいところまで似るんだな」
 フローリアははっきりと誰に、とは断言しなかったが、なぜかトワの隣に控えていた将軍が大きく頷いた。
「・・・・・・ほほう。一度そなたたちの認識を確かめないといけないようだな」
 ぽつりと言ったフローリアのその言葉に、将軍はわざとらしくついと視線を外すのであった。
トワはしっかりと両親・・の血を引き継いでおります!
別にフローリアだけではありません。
(こういえば、どういう意味かは察してくださるとおもいますw)

旗艦がなぜ都合よく北の街にあったのかは、突っ込まないでください(´・ω・`)

次こそ、最後の儀式です。
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