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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

終章 神の領域(神域)

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(2)緊急事態?

 ラゼクアマミヤ国王トワは、そのとき国の重鎮たちとの会食を行っていた。
 会食といっても、多くの貴族を集めてやるようなパーティではない。
 そもそも現在のラゼクアマミヤには、貴族が少数しか存在していないので、そのような大掛かりなパーティは基本的には他国の貴族たちを招いてやるものくらいである。
 この場合の会食というのは、あくまでも重鎮たちが集まって国王と夕食の席を一緒にしていることだ。
 ただし、当然というべきか、集まっているメンバーがメンバーなので、話している内容は国に関わる濃い話となる。
 それこそ役割的には、貴族が集まって行うパーティとほとんど変わらない役目を持っているのだ。

 そんな会食のため、よほどのことがない限りは第三者が乱入してくることはない。
 ところが、非常に珍しいことに、この時ばかりはその第三者が会食の場に入ってきた。
 いささか乱暴に叩かれたドアの音に続いて、中からの返事を待つことなくガシャガシャと金属鎧の音を立てて、軍人のひとりがきたのだ。
「何事だ!?」
 自分の部下に当たる将軍が、その者の無作法を咎めるように鋭い視線を向けた。
 その前に一瞬だけトワに確認の視線を向けてきたことからも、将軍にとっても予想外の出来事だということがわかる。
 そんな将軍に、室内に入ってきた軍人は、慌てた様子で報告をしてきた。
「お楽しみのところ申し訳ございません! しかし、緊急事態でして・・・・・・」
 そのあとも将軍に言い訳を続けようとしたその軍人に、トワが割って入ってそれを止めた。
「様子を見れば緊急事態なのはわかります。まずは、報告を先にお願いします」
 将軍よりも立場が上のトワがそう言ったことで、無作法をした軍人は緊張した面持ちでトワを見た。
「その・・・・・・王に客人が来ています」
 その簡潔な言葉に、トワを含めたその場にいた重鎮たちが戸惑った様子で顔を見合わせた。
 その理由は単純なことで、たったそれだけのことで、わざわざ緊急だとして会食に割り込んでくる必要性が感じられなかったのだ。
 たとえ急ぎの客人が来たとしても、食事を運んでいるメイドなりを通して伝えればいいだけのことだ。
 わざわざ軍人を使って乱入してくるほどの緊急事態とは思えなかった。

 そんな一同の戸惑いを見て取ったのか、報告に来た軍人が慌てて続けた。
「その、客人と言うのが・・・・・・」
 続けて出されたその名前に、一同は、今度は別の表情で顔を見合わせた。
 あまりに意外で、重要なその名前に、ようやくその軍人のいままでの対応に、納得したのだ。
 そして、その名前を聞いたトワはといえば、
「なるほど。それは確かに緊急な案件ですね。・・・・・・とりあえず、こちらに来てもらってください」
 大きな厄介事が発生したと理解したトワは、内心で頭を抱えながら、それをおくびにも見せずに笑顔になりながら軍人にそう伝えるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 本来であれば、国の重鎮が集まっているこの場所に来れば、大抵の者は緊張のあまり言葉少なになるだろう。
 ところが、その人物は部屋に入ってくるなり、右手を上げながらのんびりとした口調で言ってきた。
「皆、久しぶりだな。せっかくの食事を楽しんでいる最中にすまない」
 いくら身分におおらかなところがあるラゼクアマミヤといえど、これだけのメンバーが集まっている中で、このような口をきいてくるものなどほとんど存在しない。
 そして、そう言ってきた者は、紛れもなくその態度が許される人物だった。
「母上。いったい何事ですか?」
 トワがそう言った通り、中に入ってきたのは、ラゼクアマミヤ王国建国の母であり初代女王でもあるフローリアだったのだ。

 そもそもフローリアが国政から身を引いてから、すでに五年以上経っている。
 それまで一度もこうした場には姿を見せてこなかったフローリアの登場に、その場に集まったすべての者が、何事かと内心で訝しがっていた。
 フローリアはそのことを重々承知のうえで、トワの問いに鷹揚に頷いてから自分がここに来た目的を告げた。
「いや、済まないな。集まっているメンバーを聞いて丁度いいと思って、割り込ませてもらった」
「ちょうどいい?」
 首を傾げるトワに、フローリアがもう一度頷いた。
「ああ。例の話は、ここにいるメンバーには話しているのだろう?」
 フローリアは言葉を濁して言ったが、トワにはすぐになんのことだか見当が付いた。
 それもそのはずで、フローリアはいま現在、その目的ために大陸を旅しているはずなのだ。

 トワは、フローリアが言う「例の話」を聞いた時点で、ここにいるメンバーには話をしてある。
「ええ。勿論です」
 そう応じたトワに、フローリアが満足げな表情になってから話を続けた。
「実はその件で、いまちょっとした問題が起こっていてな」
 その前置きに、トワは本心を隠すことも忘れて驚愕の表情をフローリアに向けた。
 問題が起こっているということは、なにか障害になるようなことが発生したということだ。
 はっきり言えば、「例の件」で動いている人物の集まりを考えれば、トワにとってはあり得ないということになる。
 思わずトワが周囲を見渡せば、話の流れから何の件かを察していた重鎮たちも驚きの表情になっていた。
 彼らの言いたいことを理解してか、フローリアが苦笑しながら彼らの顔を見回した。
「いくらかの方でもどうしようもないこともあるものだ。特に、時間的な制約については、いくら神といえどもどうしようもない」
 フローリアがはっきりと「神」と言ったことで、この件に誰が絡んでいるのかこの場にいる全員に周知された。
 もともとわかっていたが、フローリアが宣言したことによって、それが裏付けされたということになる。

 フローリアは一同にそれが伝わったのを表情から確認して、さらに今回の件の「問題」について話し始めた。
 言葉にすればそれは非常に短いものだったのだが、一同はフローリアがわざわざこの場に現れたことについて、大いに納得した。
 それは勿論、この場にいる誰よりも身分が高いトワも同様だった。
「・・・・・・というわけで、今すぐ用意してもらいたいのだが、問題はあるか?」
 念を押すようにそう確認してきたフローリアの視線を受けて、トワは自身の視線を将軍へと向けた。
「将軍、どうだ? この場合は、旗艦を動かすのが適当だとおもうが」
 旗艦と聞いて一部の者はざわりとしたが、トワに問われた将軍は特に反論することなく頷いた。
「確かにそれがよろしいでしょうな。急ぎでしょうから私が直接動きましょう。・・・・・・移動するのは明日の朝でよろしいですか?」
 将軍の後半の確認はフローリアに向けてのものだった。
「ああ、それで頼む」
「よし。将軍、食事の途中で済まないが、手配を頼む。他の者たちもそのつもりで動いてくれ」
 フローリアが頷くのと同時に、トワが将軍を始めとした重鎮たちに指示を出した。
 トワのその指示に、重鎮たちは表情を引き締めて、直接の命令が下った将軍は早速とばかりに、トワとフローリアに一礼をしてからその部屋から出て行った。

 フローリアの乱入によりとんだ会食になってしまったが、それについて文句をいう者は誰もいなかった。
 この場に集まっている者たちは、それぞれの分野で生え抜きの者たちが揃っている。
 なにが優先されるべき事項なのか、よくわかっているのだ。
 一同の顔を見て、そのことを察したフローリアは、内心で満足げに頷くのであった。
フローリア、トワたちの会食に乱入編! でしたw
折角なので、盛大に国の力を借りることにしたわけです。
しかも、動かすのは旗艦。
他国から見れば、何事か、という事態でしょうねw
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