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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 西~北方面

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(9)六回目の儀式

 結局、翌朝になっても精霊たちの様子は変わることがなく、コレットたちはコウヒの転移魔法を使って一度西の街に戻ることになった。
 そのあとは、コレットとコウヒだけが考助たちの自走式馬車へと転移した。
 ただ、リクたちを西の街に送ったときにはすでに考助たちは移動を開始していたので、コレットとコウヒが合流したのはお昼のときだった。
「お疲れ。やっぱり変化なしだったね」
 コウヒの転移魔法で戻ってきたコレットに、考助はまずそう声をかける。
「そうね。変化が起こっているとわかっているのが、一か所だけなのが駄目なのよね」
 たとえ西の街より前の街道に戻って森を調べたとしても、それが以前からそうだったのか考助の儀式以降に変わったのかがわからない。
 子供たちが本格的に同行するようになり、さらにその能力がわかったのも、旅の後半からになってからなので、いままでそうした変化を見つけられなかったのだ。
「まあまあ。今更過去を嘆いても仕方ないよ。それに、子供たちだって、色々と都合があったんだし」
 主に旅になれるための訓練とかなのだが、それはそれで重要なことだったのだ。

 嘆くコレットに、考助が宥めるようにそう言いつつ、さらに付け加えた。
「それに、コレットは確信しているみたいだけれど、まだ儀式のせいだというわけじゃないからね?」
 その考助をジト目で見たコレットは、
「それならあそこの変化はなぜ起こったのかしらね?」
「えーと・・・・・・ぐ、偶然?」
 目を泳がせてそう言った考助に向かって、コレットはわざとらしくため息をついて見せた。
「まったく説得力がないわね」
「うぐっ!」
 自分でもそう思っていたところをコレットに突かれて、考助は言葉に詰まった。

 そこで、考助とコレットのやり取りを見ていたシルヴィアが、笑いながら間に入ってきた。
「まあまあ。コレットもそれくらいにしておきましょう。コウスケさんだって、わかっていてそう言っているのでしょうから」
 いまのコレットと考助のようなやり取りが発生したときは、大抵他の誰かが間に入って止めるのが、いつものパターンとなっているのだ。
 コレットとしても、別に考助をやり込めるために話をしていたわけではないので、シルヴィアの仲裁(?)に素直に頷いた。
「そうね。これ以上は不毛かしらね。・・・・・・ところで、子供たちは?」
「シュレイン、ピーチと一緒に薪拾いに行っていますわ」
 予想通りのシルヴィアの答えに、コレットはやっぱりかと首を縦に振った。
 いつの間にか薪拾いは子供たちの仕事になっている。
 それは、普段からストリープを弾き続けているミクも同じことだ。
 現にいまは、一緒に薪拾いに行っているのか、ミクの姿も見えなかった。

 周囲を見渡してそれを確認したコレットは、視線を考助へと向き直して確認した。
「それで? これからはどうするの?」
「どうもしないよ。最初の予定通りにケネルセンに向かって進むさ」
 肩をすくめてそう答えた考助に、コレットは頷き返した。
「なるほどね。まあ、それが一番無難かしらね。ここまで来て儀式をやめるわけにも行かないだろうし」
「そういうこと。それに、コレットはコウヒと一緒に、例の場所に確認しに行ってもらうからね」
 そのために、わざわざコウヒにいつでも転移できるようにしてもらったのだ。
 一日か数日おきには確認したほうがいいだろうと判断してのことである。
「わかっているわよ。私もあそこの場所については気になるからね」
 原因がなににせよ、あそこまで顕著に精霊たちが変化をしたのを見るのは、コレットにとっても初めてのことだった。
 それならば、後学のためにも見守り続けるのが当然だと考えている。
 勿論、一カ月も二カ月もずっと確認し続けるつもりはないのだが。

 そんな会話を続けていた三人に、これまで黙っていたフローリアが禁断の言葉を口にした。
「ところで・・・・・・エセナに聞くつもりはないのか?」
 その言葉に、考助とコレットが一度顔を見合わせてから、同時に首を左右に振った。
「それは禁断の一手だね」
「私もあまりとりたくない手段よ」
 フローリアの言う通り、精霊のことであればエセナかもしくは考助と仲のいい(?)妖精たちに聞けば答えてくれる可能性は高い。
 高いどころか、十中八九は答えが返ってくるだろう。
 それでもあえてふたり揃ってその手段をとらないのにはわけがある。
「ほう? そうなのか?」
 フローリアもふたりの答えがわかっていて、敢えてその問いかけをしている節がある。
 面白そうな顔をして考助とコレットを見たフローリアに、ふたりが同時に答えた。
「「だって、面白くないじゃない(か)!」」
 答えを得るだけが目的ならば、さっさとエセナを呼ぶなりして聞いている。
 というよりも、アスラ辺りに聞けば一発で答えてくれるだろう。
 そうしていないのは、あくまでも自分たちで調べることに意味がある(面白い)と考えているためなのだ。
 それは、これまでも、そしてこれからも、それはずっと変わらない考助たちの暗黙のルールといえるかもしれない。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 コレットが合流した翌日の夕方は、念のため例の場所の確認を行った。
 ただ、その日以降は、丸一日を開けて確認したりしていた。
 どちらにせよ、精霊たちの様子に変化は見られなかったので、結果としてはあまり意味がなかったのだが。
 それ以外にもいくつかの森の中に入って、同じような変化が起きていないかを確認したのだが、特にそうした変化は見られなかった。
 そうこうしているうちに考助たちは、ついに六か所目の儀式を行うケネルセンの街に到着していた。

 儀式に関しては、ナンセン近郊で行ったときとほとんど変わらずに行うことになった。
 子供たちは、久しぶりの実家帰りという名目で近づけさせず、コレットやピーチと一緒にそれぞれの里に戻っている。
 儀式自体もすでに六度目なので、考助も慣れた様子で準備を進めていった。
 大きく変わっているところといえば、例によって魔法陣の一角に置かれているものだろう。
 今回の儀式では、劔がその場所に収まっている。

 準備を終えて儀式を開始した考助は、気負うこともなく最後までしっかりと祝詞を唱え終えた。
 そしてすでに六度目となる魔法陣の上昇も、いままでどおりに進んでいく。
 今回魔法陣から伸びた光は、東と南東方面に向かって伸びていた。
 これで、六芒星の逆三角形が完成した。
 既にナンセン近郊で行った儀式のときには正三角形が完成しているので、これで六つの頂点を基準にした星ができ上がったことになる。
 ただし、魔法陣的な意味での六芒星は最後に円を書き上げて完成となるので、儀式自体はまだ続く。
 ケネルセンから北の街まで移動をして、最後の儀式を終わらせれば、本当の意味での終わりとなるのだ。

 特に妨害なども発生せずに、無事に儀式を終えた考助たちはケネルセンの町へ戻った。
 その日は子供たちもいないので、のんびりと残りの旅の準備をしながらケネルセン観光と洒落込んだ。
 ケネルセンのありようは、いまも昔も大きくは変わっていない。
 単純な食料生産量という意味では、アマミヤの塔の第五層周辺からの収穫と比べて抜かされてしまっている。
 ただし、第五層での生産は、そのほとんどが街の人口を維持するために使われるために、大陸中への輸出という意味では、まだまだ引けを取らないのである。
 もっとも、それも時間の問題だと言われているが、だからといってケネルセンの重要性はこれからも変わらないだろう。
 そして、考助たちはといえば、その豊富な食糧生産から生み出される様々な料理を、街中にある屋台を通して知ることにより、その恩恵を受けるのであった。
ちなみに、六侯があれほど苦労していたケネルセンの拡張ですが、転移門ができて冒険者の移動が容易になったことにより、開発に成功しています。
ただし、勿論ですが、一気に広げたわけではなく、常駐している冒険者が対応できるように、徐々に広げて行っている感じです。

儀式に関しては、特筆することはありませんw
最後の場所ということで、これで神獣と神具が出そろったくらいでしょうか。
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