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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 西~北方面

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(5)精霊との対話能力

「ふむ。森に異変の可能性か。魔物が・・・・・・?」
 考助とコレットから出発を遅らせるという説明を聞いたフローリアは、コレットにそう問いかけた。
 だが、コレットはフローリアの問いかけの意味を理解して、首を左右に振った。
「それはないわ。もし氾濫の兆候が出ているのであれば、すぐにわかるもの」
「そうじゃの。そんな兆候は、吾にも見えなかった」
 コレットの説明に、同じ場所で森の様子を見ていたシュレインも同意した。

 氾濫が起こるような前兆があれば、いくらなんでもシュレインでもわかる。
 氾濫が起こる原因はわかっていなくても、起こる前に魔物たちの活動が活発になることはわかっているのだ。
 少なくともそんな様子は見当たらなかった。
 それどころか、魔物の活動が他の大陸と比べて活発なセントラル大陸の森にしては、平穏そのものと言っていいほどの静けさだったのだ。
 氾濫の前兆ではないと分かって胸を撫で下ろした一同だったが、もちろん簡単に気を抜いたりはしていない。
 子供たちが見つけた精霊の異変が、なにが原因かもわかっていないのだ。
 いまはまだ人が見つけられる前兆といえるような状態になっていないだけで、精霊たちにはなにか感じている可能性もある。
 いつでも氾濫は起こる可能性があるのだから、いまその兆候が見えないとしても完全に安心することなどできないのである。

 そうしたことを踏まえたうえで、さらにコレットが続けた。
「そもそも精霊たちが騒がしくなるのにも、色々と理由があるからね。私たちにとっては他愛もないことでもあの状態になることはあるし」
「そうなの?」
 自分の説明に首を傾げた考助に、さらに説明を続けた。
「そうなのよ。私が普段から気合を入れて精霊を見ようとしていないのは、そうしたことが結構多発するからなのよね」
 たとえば、ヒューマンやエルフにとってはなんでもないことでも、精霊たちにとっては大変なことがある。
 それは、ちょっとした環境の変化だったり、なにか変わったことが起こったり、理由は様々だ。
 そうしたことにも精霊は危険を示すような変化を起こしたりするので、コレットはあえて普段から精霊たちを深く見ようとはしていないのだ。

 コレットから話を聞いた考助は、納得して頷きつつ、多少不安げな表情を子供たちがいる自走式馬車へと視線を向けた。
「それは、いまの状況を考えれば安心できる要素のひとつだけれど、子供たちのことを考えれば悩ましい問題だね」
 コレットの説明から考えれば、普通は気にしなくていい精霊の警告まで、セイヤとシアは常時見えていることになる。
 ところが、精霊たちの警告は、本当の意味での警告になることもあるので、完全に無視することもできないのだ。
 セイヤとシアが見ている世界は、生来から持っているものになるので、コレットのようにオン/オフすることも不可能なのだ。
「・・・・・・それはね。でも多分、強い警告のときといまみたいな警告には差が出るはずだから、それを見分けられるようにすればいいはずよ」
「そんなことできるの?」
「できなければ、ずっと精霊の警告にいちいち怯えなくてはならなくなるわ。それに・・・・・ああ、いっそのことエセナに頼んで、精霊と会話ができるようにするべきかしら?」
 途中から独り言のようになったコレットに、考助が首を傾げて問いかける。
「精霊と会話って、コレットやシュレインだってできているだろう?」
 普段からコレットやシュレインは精霊から様々な情報を得ている。
 それは子供たちも同じだろうと考えての問いだったが、コレットは首を左右に振った。
「精霊たちにだって力の差はあるわ。力が強い精霊の言葉は、ふたりともなにもしなくても聞こえているみたいだけれど、力の弱い精霊までは聞こえていないわよ。その辺は私とシュレインの間に聞き取れる差があるのと同じね」
 精霊との相性や能力の差によって、精霊から聞き取れる話の内容に差が出てくる。
 同じように、今回森の中で見た異変を起こしている精霊は、力が弱いのできちんと話を聞くのにはかなりの力が必要になる。
「そうか。・・・・・・ということは、かなりの訓練が必要になる、ってことかな?」
「まあ、そうなるわね」
 コレットは苦笑をしながら頷いた。
 世界樹エセナの巫女であるコレットでさえ、かなり集中しなければ見えないような精霊たちだ。
 その精霊たちから話を聞けるようにするには、相当な訓練が必要になることは目に見えている。
 もっとも、生まれながらに彼らの姿が見えているセイヤとシアは、あっさりと習得する可能性もあるのだが。

 ミクも同じだが、子供の能力をどうやって伸ばしていくのか、それは完全に親の教育方針に委ねられることになる。
 勿論、成長する者は、余計な干渉など行わなくても勝手に成長するという考え方もある。
 ただ、それだってある程度の環境が揃っているからこその話だ。
 子供にとって一番身近な存在である親が、それを放棄していい理由にはならない。
 子供が持つ能力をきちんと把握して適切な教育をしなければ、どちらにとっても不幸な結果しか生まないことになるのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 話し合いをした結果、とりあえず今夜はいまの場所で野営をすることになった。
 コレットの話では、半日もあればある程度はわかるということだったが、ついでなので一晩待とうということになったのだ。
 さらにいえば、いまから半日待ったとしてもそこから移動開始しても次の町に着くのは夜更けになってしまう。
 それであれば、下手に移動しない方がいい。
 全員一致して、そう結論付けたのである。

 予定外の野営となったわけだが、いつでもそうなっていいように準備はしてある。
 子供たちも完全に野営に慣れたようで、大人たちの指示に従ってキャンプの準備を進めていた。
 その際に、セイヤとシアが異変を示していた精霊のところへ行きたがったのはご愛敬だろう。
 今回はコレットも一緒について行っていた。
「どうだった?」
 戻ってきたコレットに、考助が問いかける。
 主語は抜けているが、敢えて言う必要もないだろう。

 そんな考助に、コレットは首を左右に振った。
「・・・・・・変わっていなかったわ」
「そうか。一晩様子を見ることにしたのは正解だったかな?」
 腕を組んで首を傾げた考助に、コレットも頷き返した。
「そうね」
 時間的には、最初に見たときから半日経っているわけではないが、それでも結構な時間精霊は騒ぎ続けている。
 もしかしたら本当になにかが起こっているのかもしれないと思うのには十分な時間だ。
 勿論、まだまだ結論付けるには早いので、これから先も様子を見続けることになった。

 
 当然だが野営をするときは、日が沈む前に夕食を終える。
 月明かりの下でも食事はできなくはないが、子供たちにとっては危険がいっぱいだ。
 敢えてそんな危険を冒す必要ないので、日が沈む前に食事を終えた子供たちは自走式馬車の中に入って、日が沈むとともに就寝の時間となる。
 子供たちが完全に寝静まってから、コレットは夜目が聞くシュレインとミツキを伴って、再び例のポイントへと確認しに行った。
 そして、野営場所へと戻ってきたコレットは、やはり昼間と状況が変わっていないと報告してきた。
 さすがにこれだけの長時間となると、いつものことと完全放置しておくには問題がある。
 朝方にもう一度確認をしに行って、今後の対応をきちんと決めようということになるのであった。
見えすぎるのも問題がありますよ、というお話でした。
そして、なにやら森に異変が?
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