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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 西~北方面

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(1)甘くない世の中

 ミクにとっての初めての演奏会を終えた考助たちは、さらに何日かかけて移動を行い、ついに西の街へと入った。
 これでセントラル大陸にある東西南北すべての街を回ったことになる。
 勿論旅はこれで終わりではなく、北の街まで回り切ることになるのだが。
 とにかく、セントラル大陸にある四大都市すべてを訪れたというわけだ。
 ちなみに、アマミヤの塔の第五層にある街は、セントラル大陸内にあるとは言い難いので、四大都市とはまた別に分類されていたりする。
 これは、塔にある街がラゼクアマミヤの住人にとっては重要な位置にあることを示している。

 四大都市の中でも西の街は、良い意味でも悪い意味でも特徴のない都市である。
 勿論、西大陸からの文化の影響を受けているので、その辺の違いはあるが、発展度や影響力といった意味では大体三番目に数えられる。
 これは、西大陸に転移門ができたのが東や南大陸よりもあとだったということもあるし、西大陸が東大陸や南大陸ほど積極的に貿易をしていないこともある。
 北大陸と違って、西大陸はラゼクアマミヤに対して、少なくとも表だって反発していたわけではない。
 それでも、東や南大陸と違って、強い結びつきができて来たということもないのだ。
 そういうわけで、西の街はいまの中途半端な立ち位置にいるのである。
 勿論それは、他の四大都市と比べてという意味で、セントラル大陸にある他の町や村に比べれば、大きく発展しているのは紛れもない事実である。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助はいつものように、子供たちと一緒に西の街を歩き回っていた。
 各町をこうして回ることができるのも旅の醍醐味である。
 儀式の関係で最大でも三日ほどしか同じ場所に滞在できないのが寂しいが、その分、存分にその町の雰囲気を楽しむことにしていた。
 大都市に着いてハイテンションになっている子供たちとともに、屋台を冷やかしたりして街を回る。
 ちなみに、当然というべきか、聖職者の巡礼はあっても旅をしながら各都市を観光するという文化はほとんど育っていないので、観光施設のようなものは宿を除けばほとんど存在しない。
 考助にとっては寂しい限りであるが、これがセントラル大陸での常識なので致し方ないと割り切るしかない。
 もっともこれは、モンスターの襲撃が頻発するセントラル大陸での常識であって、他の大陸では観光地はそこそこ存在していたりする。

 そんな西の街の観光事情はともかくとして、考助たちは存分に街の中を見て回った。
 そして、子供たちも十分に楽しんだのでそろそろ戻ろうかということになり、宿のある通りに戻ってきたところでそれは起こった。
「とうさま、馬車のところにひとがいるよー」
「いっぱいいるねー」
「ほんとだー」
 真っ先に気付いたのはセイヤとシアで、そのあとにミクが追随するように言ってきた。
 考助たちが西の街で決めた宿は街の中でも高級宿に分類されるところで、馬車が止められるスペースも用意されている。
 通りからは見えないような場所にあるのだが、人が溢れるように通りまではみ出していた。
 それを見れば、確かに大勢の人が集まっていることがよくわかる。

 その人だかりを見て嫌な予感を覚えた考助だったが、子供たちには悟られないように首を傾げた。
「うーん。なんだろうね」
 考助は、そう言いながら視線を一緒についてきていたコレットとピーチに向ける。
 ふたりともその視線の意味をきちんと理解して、それぞれの子供たちに近寄って、
「さあ、セイヤたちは、明日からまた旅が始まるから宿で少し休もうね」
「ちょっとだけお休みです~」
 ふたりの母親の言葉に、子供たちは不思議そうな顔をした。
「えー」
「あれがなにかみないのー?」
「きになるよー?」
 口々に人だかりを指して、そんなことを言ってきた。
 もっとも、コレットから、
「そんなことを言っていると、明日からの旅に連れて行ってもらえなくなるわよ?」
 と言われて、すぐに黙ってしまったが。

 
 考助は子供たちと別れて、人だかりをかき分けて自走式馬車の置いてある場所にたどり着いた。
 するとそこにはシュレインとシルヴィアがいて、他の何人かと言い争っていた。
 もっとも、言い争いといっても相手側が一方的に言いがかりをつけられているような感じではあったのだが。
「・・・・・・とにかく! お前たちの馬車のせいで、こちらの者が倒れたのは間違いないのだ! 当然、保証はするべきだろう!」
「だからこちらも何度も言っておるじゃろ。人の物に盗みを働こうとした相手に、払う金などないとな」
「貴様!」
 シュレインの言葉に、周りにいる武装した男たちが数人、剣の柄に手を添えたまま声を上げた。
 だが、そんな様子を見てもシュレインは呆れたような視線を向けるだけだった。
「そんな威圧など通じないと、何度やれば分かるのじゃ?」
 その言葉を聞けば、すでに同じようなことを何度も繰り返していることはわかった。

 やっぱり何事もなく終わらなかったかと内心でため息をついた考助は、そのままシュレインがいるところへと歩いて行く。
 その後ろには、しっかりとコウヒが着いてきている。
 盗人(?)たちの相手をしていなかったシルヴィアが、すぐに考助の姿に気付いて声をかけて来た。
「来ましたか」
「さすがにこれだけ人だかりになっていればね」
「子供たちは?」
「コレットとピーチが部屋に連れて行った」
 考助の答えに、シルヴィアは小さく頷いた。
 勿論シルヴィアは、考助たちがこんな場所に子供たちを連れてくるとは考えていないが、きちんと認識を合わせておくことは重要なのだ。

 シルヴィアと会話を交わす考助に、相手の男たちが剣呑な表情を向けて来た。
「なんだ、お前は?」
「なんだはないじゃろう? この馬車の持ち主で、吾らの旦那じゃ」
 シュレインがきっぱりとそう言うと、彼女と話をしていた代表らしき男が考助に視線を向けて来た。
「ほう? 其方が、か? ・・・・・・随分と物好きだな。まあ、それはともかく、この女では話にならん。其方であれば、こちらのいうことも理解できるであろう」
 なにやらいきなり失礼なことを言っているが、考助は気付かなかったふりをして笑みを浮かべて応じた。
「さて、どういったお話でしょう? こちらの様子を見れば、あまりよい話ではないことはわかりますが」
 プスリと釘を刺した考助だったが、相手は尊大な態度を崩さずに言い放ってきた。
「恐れ多くもわが主であるデュドネ卿が、こちらの馬車を所望である。ありがたく献上するが良い」
 その言い方に、考助は思わず驚きや呆れを示すよりも先に、感心していた。
 こういう身分差が大きい世界だと、やっぱりこういう物言いをする人はいるのかと。

 妙なところで感心していた考助だったが、勿論そんな馬鹿げた要求に答える気は毛頭ない。
「お断りします」
 と、きっぱり断っておいた。
 そのあまりにもあっさりとした言い方に、代表の男は一瞬間をあけたあとでフッと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ほう? 断ると? 其方は、自分が言っている言葉の意味がよくわかっていないようだな」
「と、おっしゃいますと?」
「一介の冒険者である其方には、身分というものの差がよくわかっていないようだな」
 不快気な顔でそう言った男に、それでも考助は気にすることなく他の男たちに視線を向けながら答えた。
「ああ、貴方が言う身分というのは、数で優っていることを盾に、武力で脅して人の持ち物を取り上げることですか」
 わざとらしく感心した様子で頷く考助に、周りにいた男たちが顔色を変えた。
「貴様!!!」
 それを見て、考助は内心で、しまった言い過ぎたと思ったが既に遅い。
 この場の雰囲気は、まさしく一触即発といった状態になるのであった。
最後まで出すの止めようかと思っていましたが、やっぱり書いてしまいました。テンプレ展開。
ここまで引っ張っておいて出さないのはどうかとも思いますしね。
ここでの騒ぎは次話でサクッと終わらせて、本来の話に戻ります。(予定)
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