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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第7章 塔の仲間と交流しよう

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5話 ジャミール神

 アレクに会う直前に、考助は第四十七層の月の祭壇を訪れていた。
 目的は、ジャルと交神するためだった。
 シルヴィアからエリスの神託を聞いた後に、どうしても確認したいことが出来たからである。
 シルヴィアの持つ神具は、今ではシルヴィア専用になっていて考助は使うことはできない。
 一応、シルヴィアを通して確認してもらおうとしたが、忙しいのか応答が無かった。
 そのためジャルと交神しに来たのだ。

『ふーん。わたしは二番目ってこと?』
 月の宝石に触れて、交神しようとした瞬間の第一声がこれであった。
『・・・勘弁してください。シルヴィアの神具を通した方が、早いんだからしょうがないよね? ・・・よね?』
 不機嫌な様子を感じ取った考助は、逃げ腰になりながらも一応そう答えた。
『ブー。私用の神具を創ることを希望します! もちろん、あなた専用で』
『・・・気軽に言わないでよ』
『あら。何を言ってるの。今のあなただったら、それくらいは簡単に作れるわよ?』
『・・・え!?』
 ジャルの言葉に、考助は驚いた。
『・・・・・・もしかして、気づいてなかったの?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ・・・・・・』
『・・・なんというか、抜けてるところもあるのねぇ・・・』
『・・・・・・面目次第もございません』
 これには考助も落ち込むしかなかった。
 そんな便利な物が作れるのであれば、さっさと用意していた。
 もし用意していれば、わざわざここまで来なくても済んだのだ。
 とりあえず、すぐに作ろうと決心した考助であった。

『それはともかく、時間がないんじゃなかった?』
『あ、そうだった。・・・今回の件って、やっぱりどこかの神様が絡んでる?』
『・・・どうしてそう思うの?』
『・・・・・・勘?』
 考助は、そう言いつつも首を傾げた。
 理屈ではないのだ。
 勿論、エリスがあんな変則的な伝え方をしてきたというのもある。
 だが、あの神託が決め手かと問われると、首を傾げてしまう。
 そもそもあれだけの言葉で、神が裏にいると結び付けるには、ヒントが少なすぎる。
 とは言え、エリスの神託を聞いた瞬間に、何となく思い浮かんだというのも事実なのだ。
 だからこそ、わざわざここまで確認しに来たのだ。
『・・・勘、ねぇ・・・。ふーん・・・。まあ、良いわ。とりあえずその勘は当たっているわ。でもそれ以上は、教えられないわ』
『なるほどね。それだけ聞ければ十分だよ。ありがとう』
『どういたしまして。お礼は、さっき言った、神託用の神具でいいわ』
『善処します』
『ぶぶー。政治家的発言はダメです。私は姉様と違って、ヒマしてるんだから出来るだけ早く作ってね』
 考助が、答えようとした瞬間、別の声が割り込んできた。
『・・・ヒマなのでしたら、是非ともこちらを手伝ってください』
『ワキャッ・・!? ね、姉様!? なぜ、このような所に!?』
『それはもちろん、サボっている貴方を探しに、です。そう言うわけですから、すいません考助様、ここまでです』
『あー、うん。それじゃあ、また』
『ちなみに、私の分の交神用の神具も所望します』
『・・・・・・えっ!?』
 いつから聞いてたんだ、と疑問に思ったが、その時には既に、二人の気配は消えていた。
 考助としても、いつまでもここにいるわけにはいかなかったので、第五層の神殿へと向かったのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 さすが、というべきか、アレクは固まった空気からいち早く立ち直った。
 すぐに笑顔を見せて、考助に対して言い放った。
「・・・どういう意味でしょう?」
「言葉通りの意味なんですが・・・ああ、いえ先に説明させてください」
 考助に対してさらに言葉を重ねようとしたアレクだったが、考助はそれを止めてから説明した。
「一応お伺いしますが、クラウンカードのステータスについてはご存知ですか?」
 聞かれたアレクは、一度頷いた。
「ええ、もちろんです」
「あれなんですが、元々は僕の持っているスキルをもとに創ってあります。はっきり言えば、僕は神能刻印機が無くても他人のステータスを読み取れます」
 考助の言葉に、アレクは押し黙った。
 その言葉が、本当かどうかを推し測っているようだった。
 そのアレクの様子を気にせずに、考助は言葉を続ける。
「僕も王族の方と直接会うのは初めてなんですが、しっかりと<フロレス王国第三王子>と出ておりますが、如何でしょうか? もしそれでも違うというのでしたら、この能力自体を疑わないといけないのですが・・・」
 考助自身は、疑ったことなど一度もないし、現在も疑っていないのだが、アレクにはあえてそう言ってみた。

 しばらく考助を見ていたアレクは、ふっとその表情を綻ばせた。
「・・・一つ聞きたいのだが、あのカードにもそれは出てくるのかね?」
 口調も態度も先ほどまでとは、変わっていた。
 単純に、偉そうになったというわけではない。
 その身に纏う雰囲気が、明らかに人の上に立つことに慣れた物になっている。
 問われた考助もそこまでは、分からないのでワーヒドの方を見た。
「・・・流石に王族が登録に来るようなことはありませんでしたので、確認は出来ておりません」
「私も直接王族と直接対面するのは初めてのことですので、王族全員が出るのかはわかりませんね」
「なるほどな」
 そう相槌をうってから一つ頷くアレク。
「・・・して、王子である私は、代官はダメだと?」
「募集要項にもある通りです。この塔は、一つの組織に縛られるつもりはありません」
 もう既に、身分を隠すつもりも無くなったのか、アレク王子はきっぱりと言い放った考助をジッと見つめた。
「青い理想だな」
「そうでしょうか?」
 首を傾げた考助だったが、アレク王子は考助のその言葉を突っぱねることはしなかった。
 自分が考えていることを、考助が既に気付いていることが分かったのだ。
 この塔があるのは、見つかって以降一度も攻略されることのなかった立地だ。
 今街が出来ているのは、あくまでも転移門の恩恵である。
 今すぐに考助が転移門を閉じることを決断すれば、考助の言う通り外部の影響を消すことなど簡単なのだ。
 勿論、転移門を消す前に、希望する者は町に残すことは出来る。
 今ほど急激な変化は望めないが、それでも塔だけでゆったりと成長することは可能だろう。
 実際に行うつもりは、今のところはないが、それを行うことが可能だ、という事実が重要なのだ。
「・・・・・・本気なのか?」
 突き詰めれば、考助が目指しているのは、塔を中心とした一つの国家を作るのに等しいのである。
「と、いいますと?」
「本気で国を作るつもりなのか?」
「さあ、どうでしょう? 国家なんていらない、なんていう暴言を言うつもりはありませんが、少なくとも今のところは作る意味がないとも思っています」
 国家というのは、外敵(主に他の国)から民や財産を守るのが一つの役目だ。
 だが、今のところ塔は、他国から攻められることはほとんどない。
 そもそもセントラル大陸には国家が存在しない上に、他の大陸の国家がわざわざここまで足を伸ばしてくることは考えづらいのだ。
 無理やり転移門で来たとしても、転移門自体を閉じることはすぐに出来るのだから。
「・・・なぜだ?」
「国家というのは、守る文化や民があって初めて成り立ちます。今のところ民や財産を守る必然性が無いので、歴史がない文化を守ると言ってもほとんど意味がないでしょう?」
「そうかの? 少なくとも宣言する意味はあると思うが?」
「それをするには、時期が早すぎます。せめて都市国家を名乗れるくらい人口がもう少し増えないと。宣言したところで、笑われるのが落ちではありませんか?」
 考助のその問いに、アレクは真っ直ぐ考助の目を見つめた。
 今までの話の間、ずっと考助の目を見ていた。
 それを見て、考助が本気でそう思っているのが分かった。
 王族の人間として、これまでに様々な人間を見て来たという自負がある。
 その自分から見ても、考助の様な人間には会ったことが無い。
 同時に心の底から楽しいと思う感情が湧き上がってきた。
「クックックック」
 突然笑い出したアレクを、考助はただ呆然と見つめることしかできなかった。
わざわざ神様の関与を確認する話を入れたのに、そこまで話が行き着かなかったでござる。
次話にはきっと入ります。・・・・・・タブン

2014/5/11 誤字脱字修正
2014/6/19 脱字訂正
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