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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 南~西方面

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(5)子供の能力

 ミクの魅了の力に関しては、焦って調べることではない。
 いまは、ピーチのときのように、無差別に力を放っているわけではないし、あくまでもミクがストリープを弾いているときに、もしかしてと思う程度だからだ。
 しかもストリープを弾いているとき以外は、ごく普通の子供と変わらない。
 むしろ、下手に騒いでことを大きくするほうがまずい。
 確定しているわけでもないので、このままで行こうということになった。
 もちろん、考助とピーチだけで決めたわけではなく、ほかの嫁さんたちと話し合った結果だ。
 決め手になったのは、ミツキの「少なくともいまのところは、悪い影響はない」という言葉だ。
 それに、しばらくは一緒に旅をすることになるので、ミクが赤の他人の前で弾くことはない。
 自走式馬車の中で弾いている分には、考助たちにしか影響がないので、大丈夫だろうと結論付けられた。
 だが、その見通しが甘かったと知ることになるのは、大陸南西にあるナンセンの町に入る二日ほど前のことであった。

 どんなことでも基礎というのが重要になる。
 当然ミクのストリープの練習も基礎が大切だ。
 具体的には、初日に行っていた弦の位置を身体で覚えるというものだ。
 それは、ただただ音を鳴らすだけなので、具体的な曲になっているわけではない。
 やっている本人はいたって真剣なので当たり前だろうが、横でミクの練習を聞いているセイヤとシアも相変わらず不満をいわずに聞いていた。
 勿論、セイヤとシアは、ミクの練習の音だけを聞いているわけではない。
 これまでの旅と同じように、外の様子を見てはしゃいだり、他の誰かとの会話を楽しんでいた。

 
 それがわかったのは、昼の野営場所に向かっている最中のことだった。
 ナンセンから先は塔に戻らずにずっと一緒に旅をしてもいいだろうと考助が話をして、セイヤとシアが喜んだあとに、ふとシアが何とはなしにこう言ってきた。
「よかったー。きっとセイレイさんたちも、喜んでいるよー」
「そうだねー」
 シアに同調するように、セイヤも頷いている。
 ふたりの会話に、隣にいた考助は、そのあまりの自然な言葉に一瞬流しそうになったが、すぐに確認をした。
「うん? 精霊が喜ぶって?」
「えー、だって、ミクの演奏聞いて喜んでいるでしょー?」
「ミクが家に戻っちゃったら、聞けないからねー」
 そう言いながらセイヤとシアが、顔を見合わせてコクンと頷いている。

 一瞬呆けた考助だったが、慌ててコレットを見る。
 考助に見られたコレットは、急いで首を左右に振った。
 その仕草で考助は、コレットにもふたりが喜んでいると言っている精霊の姿が見えていないことがわかった。
 そして、子供たちには聞かれないように、神力念話で確認を取る。
『どういうこと?』
『わからないわ。私には見えていない精霊が見えているのか、それとも、精霊以外の何かが見えているのか』
『・・・・・・コレットには見えていないんだね?』
『ええ。それは間違いないわ』
 そう断言してきたコレットに、考助はしばし沈黙した。
 コレットはもちろん、考助にもセイヤとシアが言っている精霊の姿は見えていない。
 一応、コウヒやミツキにも視線を向けたが、頷きは返ってこなかった。
 ということは、ふたりにもセイヤとシアが言っている「精霊」の姿は見えていないということだ。
 さて、どうしたものかと悩む考助に、コレットから躊躇いがちに言ってきた。
『私には見えないけれど、もしかしたら、エセナにはなにかわかるかもしれないわよ?』
『エセナに? ・・・・・・そうか』
 世界樹の妖精であるエセナには、コレットが見えない精霊の姿が見えていてもおかしくはない。
 精霊に関しては、エセナに確認するのが手っ取り早いとコレットは言っているのだ。

 考助に呼びかけられれば姿を見せるエセナだが、声だけのやり取りもできる。
 今回は子供たちに会話を聞かれたくないので、話だけをすることにした。
『エセナ、姿を見せずに聞きたいことがあるのだけれど、いいかな?』
『大丈夫ですが、なにかありましたか?』
『ああ。エセナって、姿を見せずに精霊の存在って感じ取れる?』
 自分でも無茶なことを言っているとはわかっているが、考助は最初にそう確認した。
『姿を見せずに? ・・・・・・いえ、申し訳ありませんが・・・・・・』
 申し訳なさそうに言ってきたエセナに、考助はすぐに心の中だけで首を左右に振った。
 エセナに伝わっているかどうかはわからないが、気持ちの問題だ。
『ああ、いいのいいの。確認だから。だったら、他の人たちに見えないように、こっちに来ることはできる?』
『それでしたら問題ないです』
『そう。それじゃあ、それでお願い』
『はい』
 考助がそう言うと、すぐにエセナから返事が返ってきたが、その姿は見えなかった。
 だが、考助にとっては不思議なことに、エセナが自分の前にいるということだけは感じ取れた。

 これなら大丈夫だろうと安心した考助だったが、次の瞬間、エセナも含めて驚く事態が発生した。
「わー、なんかすごいのきたよー?」
「おおきいねー」
 セイヤとシアが、しっかりとエセナがいるだろう場所を捉えながらそう言ったのだ。
 その視線の先を見れば、ふたりがエセナの存在に気付いていることは明らかだ。
「・・・・・・なるほど。確認したかったのは、このことですか」
 隠れていても仕方ないと考えたのか、エセナは考助の許可を取らずに姿を現した。
 そして、感心したように、考助とコレットを交互に見る。
「さすが兄様とコレット姉様の子供ですね。人では見えない存在まで感じ取れているようです」
 エセナの言葉で、いままで話に加わっていなかったシュレインたちにも事情がわかったようだ。
 考助とエセナの話を黙って聞く様子を見せた。

「そうなの?」
 首を傾げてそう聞いた考助に、エセナははっきりと頷いた。
「はい。だからといって、特になにかがあるというわけではありません。ただ、その分、コレット姉様よりも精霊たちへの感応力は高いと言えます。・・・・・・育て方には、注意が必要でしょうね」
 エセナは、コレットに聞かせるように最後の言葉を言った。
 それを受けて、コレットも神妙な顔つきで頷く。
「わかったわ」
 精霊に関しては、考助は詳しくない。
 エセナやコレットとかかわりがある以上、一般人よりは詳しいが子供たちを導くことができるほどではない。
 勿論、考助は考助で子供たちに教えることがあるので、コレットも押し付けられているとは感じずに、役割分担だと考えている。

 コレットから視線を外したエセナは、次にミクを見た。
「それから、こちらもです」
「ミクが?」
「ええ。精霊たちが集まっているのは、気付いていらっしゃるのですよね?」
 エセナは、セイヤとシアを見ながらそう聞いてきた。
 先ほどのことからも、ふたりがミクの周りに集まっている精霊に気付いていないと確信しているのだ。
「曲として成り立たない、ただの音を鳴らすだけでこれですから、先が楽しみですね」
 笑顔でそう言うエセナを見る限りでは、悪いことではなさそうだと考助は内心でほっと胸をなで下ろした。
 その考助の気持ちに気付いているのか、エセナはさらに続ける。
「ミクに関しては、精霊だけではないようですが、もしきちんとお知りになりたければ、神々に聞いては如何でしょう?」
 エセナの駄目押しに、考助は苦笑を返す。
「・・・・・・なるほど。やっぱりそうなるわけか」
「ただ、まだ三人とも子供ですから、神々でもはっきりしたことは言えないでしょう」
 成長とともに能力も安定してくる。
 それまでは、いかに神々といえども断定はできないだろうとエセナは続けた。

 結局、エセナのお陰で子供たちの能力を知ることができた。
 とはいえ、まだまだこれからどうなるかわからない力なので、自分たちが注意深く見守って行こうと話し合う大人たちなのであった。
ミクの話が続いたので、今度はセイヤとシアです。
といいつつ、ミクにも触れていたりしますが。
これから数話は、セイヤとシアが中心になる・・・・・・はずです。
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