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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 南~西方面

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(1)再会

 セントラル大陸の南の街は、塔の中にある首都を除けば、現在もっとも人口の多い都市となっている。
 南大陸にあるスミット王国が、いち早くクラウンを受け入れて転移門による貿易を早々に開始したことに加え、その取引によって手に入るフリエ草を求めて各国がラゼクアマミヤとの争いを避けたことが大きい。
 勿論、敵対している国家がまったくないわけではないが、そうした国家も裏ではフリエ草を手に入れるために他の国とつながっていたりするので、積極的に攻めたりはしていない。
 その結果として、他の大陸に比べて、ラゼクアマミヤからの多くの恩恵を受けて他の三大陸に比べて発展の度合いも早まっていた。
 勿論、ラゼクアマミヤもまた、南大陸からの恩恵を多く受けている。
 その南大陸との玄関口となっているのが、南の街となる。
 さらに付け加えると、南の街は東の街と違って、立地条件にも恵まれていた。
 南大陸からの船を受け入れるための港を作るためのスペースが、東の街に比べて倍以上ある。
 まだまだ港を拡張できる余裕があり、南の街はこれからもまだ発展が続くだろうと見込まれている都市だ。
 街の住人たちもそのことをよく理解しており、ラゼクアマミヤへ組み込まれたことを一番喜んでいる街といっても過言ではないのである。

 前日に儀式を終えた考助は、以前と同じように南の街の広場で子供たちと待ち合わせをしていた。
「ととさまー」
 今回子供組は、一緒に来るのではなく、ピーチとミクが先に来ていた。
 コレットたちは、エルフの里での用事があったため、あとから来ることになっている。
 とりあえず午前中は、ミクたちと一緒に街を回ることにしてある。
「おー。ミク、ちゃんといい子にしていたか?」
 考助は、パタパタと近寄ってきたミクを抱き上げてからそう聞いた。
「うん!」
 思いっきり元気よく頷いたミクは、その手に風鈴を持っていた。
 前回のお別れとともにミクが持っていた風鈴だ。

 ミクはその手にある風鈴を掲げながら聞いてきた。
「ととさま、フウリン、音が変わったのー」
「音が変わった? ・・・・・・ん~?」
 ミクが差し出してきた風鈴の音を聞きながら、考助は首を傾げた。
 ただ、以前聞いたときから数日たっているために、考助には音が変わっているようには聞こえなかった。
「もしかしたら、本体の鐘の部分が少し形が変わったのかもしれないかな?」
 考助には本当に音が変わったかどうかはわからなかったが、音が変わる可能性がある原因を言っておいた。
「カネ?」
「そうそう。ここの部分ね」
 考助はそう言いながらミクが大事そうに抱えている風鈴の鐘の部分を指した。

 考助が爪で小さく金の部分をはじくのを見たミクは、小首を傾げた。
「ここの形が変わると音が変わるのー?」
「うん。そうだよ。しかもこれ、金属だからね。歪んだりしたらもっと大きく変わるよ。いまはそんな様子はないけれど」
 大事に握りしめているミクだが、乱暴に扱っているようすはまったく見当たらず、考助が見た感じでは歪んでいるようなところは一切なかった。
 本当に音が変わっているとすれば、熱で変わったりする可能性もないわけではないが、そこまでの微妙な変化をミクが聞き分けているのかはわからなかったので、考助も敢えてそこには触れない。
「そうなんだー」
 納得しているのか、していないのか、微妙な顔でミクが頷いた。
「手でずっと握っていたら、その熱で金属が微妙に歪む・・・・・・かもしれないから気をつけた方がいいかもね?」
「そうなのー?」
 考助の言葉に、ミクはビクッとした様子で握りしめていた鐘から手を離した。
「まあ、ちょっと大げさかもしれないけれどね。少なくとも落としたりはしない方がいいと思うよ?」
 考助は、風鈴を落としたくらいの変化で音の違いを聞き分けられるような耳を持っていないが、ミクは聞き分けている可能性がある。
 そうであるならば、大事に扱うように言っておいたほうがいいだろうと考えて、考助はそう忠告しておいた。
「わかったー」
 そんな考助の思いが通じたのか、ミクは神妙な顔をして頷いていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 大事にしすぎるのも駄目だとわかったのか、ミクは風鈴を自走式馬車に預けてから街を見回ることを希望した。
 考助たちは、それに快諾をしてからミクとともに南の街を回った。
 昼食は街の中で適当な食堂を探して入り、午後になってセイヤたちと合流した。
「「とうさまー」」
 セイヤとシアが声を揃えて向かってきたのを、考助は両手を広げて出迎えた。
 つい半日前も同じようなことをしたような気もした考助だったが、気にはしない。
 周囲の視線も考助を生暖かい視線で見るというよりも、普通の親子を見るような温かい視線だった。

 考助は、ひとしきり子供たちの頭を撫であとに、コレットを見た。
「ご苦労様」
 コレットは、里での仕事を終えてから来ているので、そう声をかける。
 ただし、どちらかといえば子供たちの要望があるために、ちょっとした無理をしているので、コレットは首を横に振った。
「いいのよ。儀式自体は大したものではないから」
 実際にコレットが里で行ったことは、午前中で終わるような簡単な作業のため疲れるようなものではない。
 コレットにとっても、子供たちの希望を叶えてあげたいという気持ちがあるので、無理をしているわけではないのだ。
 勿論それ以外にも、コレット自身が考助と一緒に旅をしたいという気持ちもあるのだ。

 
 コレットたちと合流した考助たちは、いつものように街の中の探索を始めた。
 屋台を冷やかしたり、周囲の注目を集めたりしながら移動していた考助たちが止まったのは、とある広場だった。
 あるものに反応したミクが、ふと足を止めたのだ。
「ミク? どうしたんだい?」
「ん~・・・・・・」
 考助が声をかけても生返事をしてきて、声が聞こえているようには感じない。
 どこかで見たことのあるような感じに、考助がさらに声をかけようとすると、そのミクがテクテクと歩き始めた。
「ちょっと・・・・・・!?」
 思わず、といった感じでピーチが声をかけたが、考助が首を左右に振りながらそれを止めた。

 ミクがたどり着いた先では、ひとりの辻芸人がとある楽器を吹いていた。
「・・・・・・ピーチ。確認するけれど、サキュバスの里では楽器って無かった?」
 そういえば自分が行ったときは一度も見たことが無かったことを思い出した考助が、隣に立つピーチに確認を取る。
 その考助に、ピーチが手で口を押えながら首を左右に振った。
「あまり大きく音を出すようなものは禁止されていましたから・・・・・・」
 ピーチの一族は、つい二十数年前まで逃亡生活を送っていた。
 そのため、あまり目立つような行動はとれなかったのだ。
 念には念をということで、歌や音楽は禁止されていたのである。
 音楽は、個人で音を出すならともかく、集団になると意外なほど遠くにまで響き渡ることがある。
 そうした過去からの流れで、いまでも里で音楽を聞くことはなかった。

 その事情を察した考助が、頷きながら納得した顔になる。
「なるほどね。・・・・・・といことは、ミクが風鈴に反応していたのも、ひょっとしたらひょっとするかも?」
「は~。・・・・・・そんなことがあるのですか」
「まあ、まだわからないけれどね」
 ミクは、単に珍しいのに反応している可能性もある。
「とりあえず、いま聞いている縦笛、買ってみたら? お金はあるんだし」
 驚くふたりに助言するように、コレットが笑いながらそう助言してきた。
 その言葉に顔を見合わせた考助とピーチは、お互いに小さく笑って頷くのであった。
大方の皆様が予想されていたのではないでしょうか。
ミクの才能の一端が明らかに? (まだ不明)
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