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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 東~南方面

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(10)四回目の儀式

 南の街へと向かう道中、考助たちは同じようなことを冒険者や商人から何度も聞かれることになった。
 基本的には追い越すことが多い考助たちよりも、噂のほうが先に進んでいるようにも思えるが、これにはわけがある。
 といってもそんなに難しい話ではなく、セントラル大陸の情報(噂)は、転移門を使ってあっという間に大陸の反対側まで伝わる。
 考助たちが北の街を出発したあと、その辺りから発生した噂がすぐに南の街にも伝わり、その周辺にも広まっている。
 さらに、後から付け加えられるより詳細な情報が、いま考助たちがいる場所にまで伝わっているのだ。
 考助たちが先に進めば進むほど、より詳細で正確な情報が伝わっていることがわかる。
 自走式馬車を見たときの反応が、南の街に近付くにつれて「ギョッ」というものから「アレは!?」というような反応に変わっていた。
 特に、南の街の方から向かってきて、考助たちとすれ違う馬車が顕著になっている。

 とはいえ、それらの反応に気付いている考助たちは、特にいままでと変わりなく南の街へと進んでいた。
 敢えて隠さずに自走式馬車を使って旅をすると決めたときから、こういった反応になることは予想していたからだ。
「・・・・・・やはり、鬱陶しいのう」
「いやいや。シュレインだったら、人から視線を向けられることなんて、慣れているよね?」
「そうれはそうじゃが・・・・・・・いや待て。それとこれとは別じゃろう・・・・・・!?」
 茶化すような考助の混ぜっ返しに、シュレインは一瞬同意しかけてからそう言い返した。
「ハハハ。まあ、冗談はともかくとして、もうしばらくは我慢かな? そのうちに売るつもりもなければ、作るのも難しいという噂も広がって行くさ」
 先日の商隊のときのように、考助たちが隠さなくてもいい情報を進んで話しているのは、入手が困難だということをわからせて、そのうち噂自体が自然消滅することを狙っている。
 そうすれば、そのあとに自走式馬車とすれ違っても「ああ、あの噂の」だけで済むようになるはずだ。
 早い話が、入手を諦めさせるように仕向けているのである。
 勿論、それだけでは諦めない輩がいることも十分に承知しているうえでのことだ。

 考助の回答に、シュレインはため息をついた。
「狙っていることは理解しておるのじゃが、なんともじれったい気がしてのう」
「まあ、そう感じるのは仕方ないよね。でも、だからといって、力で解決する?」
「うぐっ」
 そんなつもりはないよね、という顔になっている考助に、シュレインは言葉に詰まりながら視線を逸らした。
 単に愚痴を言っているだけで、考助が言うような方法を取るつもりは、シュレインにもまったくない。

 実は、いまのようにわざわざ露骨な視線を感じ続けなくとも、噂を払拭する手段はあるのだ。
 それは、実に単純な方法で、考助が言った通り力で解決すればいい。
 この場合の力とは、複数ある。
 例えば、ラゼクアマミヤの力、もっと言えばトワの言葉を借りて、自走式馬車に手を出せば王の手が伸びると脅すとか。
 あるいは、そこまでしなくとも、直接手を出してきた相手を片端から片付けて行くとか。
 何度も繰り返していくうちに、迂闊に近付いてくる者はいなくなるだろう。
 ただし、そこまで行くまでが面倒だともいえるのだが、少なくとも、今のように噂だけを頼りに沈静化を待つという回りくどいやり方よりは時間がかからないだろう。
 今回そうした方法を取らなかったのは、長く旅を続けることになるので、出来るだけ穏便に済ませたかったからである。

 それはわかっていても、噂が沈静化するまでは鬱陶しいものは鬱陶しいわけで、先ほどのシュレインのような愚痴に繋がった、というわけだ。
「さすがにそれは、面倒じゃの」
 片端から面倒を排除していくのは、それはそれで鬱憤が溜まっていくことが目に見えている。
 ぽつりとそう返してきたシュレインに、考助はクスリと笑った。
「そういうこと。ま、当分は我慢だね」
「・・・・・・そうだの」
 一部不満そうでありながら、さりとて他にいい方法が見つからないために、考助が言った通り我慢するしかないとわかっているシュレインは、渋々と頷いた。
 そんな顔をしているシュレインだが、そもそも考助の前だからこそそんな顔をしているのであって、他では決して表には出さない。
 結局のところ、考助に甘えているだけなのだということは、馬車の中でふたりの話を聞いていた他の面々にはお見通しなのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そうした視線に晒されながらも、考助たちは南の街に入・・・・・・る前に、街道から外れた場所へと移動した。
 勿論、儀式を行うためである。
 今まで一緒に旅をしてきている子供たちだが、敢えて儀式を見せたりはしていない。
 子供は突発的なことをやって来る可能性があるために、それに考助が気をとられてしまいかねないためである。
 勿論、ちょっとした騒ぎでは考助は儀式を中断したりはしないのだが、相手が自分の子供となってくるとどうなるかわからない。
 そのために、念には念を入れているのだ。
 翌日にはまた子供たちが合流することになっているので、その前に南で行う儀式を先に済まそうというわけだ。

 今回の儀式で固定位置に置かれるものは、水鏡になる。
 水鏡自体は、ミツキのアイテムボックス収納でしっかりと持ち込んできているので、あとは勾玉のときに使った台と同じように置くだけである。
 考助自身が水鏡を台の上に置いたあとは、いつものように祝詞を唱えて儀式を始めた。
 置かれているものが水鏡に変わっているだけで、あとはいままでの儀式とまったく変わらない。
 敢えて上げるとすれば、前回は北西方向に向かって伸びた光が、今回は北東方向に向かって伸びたくらいである。
 魔法陣(六芒星)で見れば、南から北東に向かっての線が伸びたことになる。
 線が伸びたこと自体も方向も特に問題はなく、考助はあっさりと儀式を終えてシュレインたちがいるところへと向かった。

 自分たちのところに近付いてきた考助に、シュレインが笑いながら話しかけて来た。
「もう慣れたものじゃな?」
「まあね。それもこれも儀式に集中できているからだけれど」
 シュレインたちが周囲を警戒してくれているから安心してできていると告げた考助に、他の面々は笑みをこぼす。
「そうかの? そう言ってくれると吾らも嬉しいが・・・・・・。それはともかく、街に戻るのかの?」
「いや、この辺りでちょっと取っておきたい素材があるから、それを手に入れてからかな?」
 鮮度が重要な素材については、これまでも襲ってきたモンスターの素材を使ったり、コウヒかミツキにお願いして採取していた。
 考助の言葉は、せっかくいまは時間があるので、皆で素材回収しないかという提案だった。
 勿論、この台詞に一番反応したのはナナである。
 大きく尻尾を振り回しながらその場でぐるぐると回り始めたナナを見て、フローリアが笑いながら頷いた。
「ご覧の通りナナも張り切っているから、そうしようか」
 このまま街に戻っても、次の旅の準備をしたりするだけで終わってしまう。
 それならば、素材の回収というのもありだろう、と続けるフローリアに、他の面々も同意した。

 結局この日は、ナナのお遊びに付き合う意味も含めて、目的以外のモンスターの討伐を行いつつ日暮れ前に南の街に入るのであった。
他の面々が狩りをしている最中は、コウヒが自走式馬車でお留守番をしていましたw
次は、せっかくなので、自走式馬車についての噂話について書こうかな?
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