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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 東~南方面

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(7)三回目の儀式

 討伐軍の巡回隊と別れてから数日後。
 考助たちはミクセンの街へと入っていた。
 今回は、子供たちも脱落することなくついてくることができていた。
 とはいえ、さすがにこのあとも続けて着いてくるわけではなく、いったんここでお別れとなる。
 次に一緒に行けるのは、南の街からだということで子供たちを納得させて、ミクセンに入った翌日は子供たちとの家族サービスの日となった。

 ミクセンの街は、いまも昔も変わらずに、聖職者の街として栄えている。
 街の中央に三神殿が建っているのも、当たり前だが変わっていない。
 アマミヤの塔の中に街ができたことで、ミクセンの街にどういった変化が訪れるのかと戦々恐々としていた者たちもいたが、結局のところ街自体には大きな変化は起きていない。
 変化したところをあえて上げるとすれば、神殿を訪ねてくる人々に違いが出て来たことだろう。
 ミクセンはラゼクアマミヤ王国のおひざ元の街である。
 それであれば、国家が主神としている現人神に祈りを捧げに来る者が増えてくるのは、当然といえた。
 現人神がどこで祀られるべきか、それぞれの神殿で議論がされているものの、明確な解答は未だに出ておらず、人々はそれぞれ好きな神殿に入って祈りを捧げている。
 そもそもどこに所属するべきか、当人からも他の神々からも回答が無い以上、答えが定まらないのは仕方のないことなのである。
 勝手に人の都合で決めてしまえば、神々からの怒りが来る可能性もある。
 それを避けるためにも、明言を避けるというのは、ある意味で当然の対応と言えるだろう。

 そんな神殿側の対応はともかくとして、神殿を訪ねる人々には大きな変化はない。
 祈りを捧げる対象に、現人神が新たに加わっただけだ。
 どの神にどれだけ多く祈りを捧げるかということに違いはあるが、それは別に現人神が加わる前から変わりはなかった。
 それぞれの生活環境や教えによって変わってくるものなのだから、それも当たり前のことである。

 
 家族サービスのつもりで子供たちと街をめぐっていた考助だったが、今回は変則的にシルヴィアも一緒に回っていた。
 というのもきちんとした理由があって、
「ねえねえ、あれなーに?」
 という子供たちからの質問にきちんとした答えが出せるように、である。

 聖職者のためにあるミクセンの街にある店は、それに対応したものがほとんどである。
 そうした店の中には、それこそ専門家でないと答えられないような商品も置いていたりする。
 そんな商品のすべてを考助たちが答えられるわけもなく、こうしてシルヴィアがお呼ばれしているというわけだ。
 実際シルヴィアは、子供たちの質問に的確に答えている。
「シルヴィア、ありがとう」
 子供たちの質問の間隙をぬって考助が礼を言うと、シルヴィアは首を左右に振った。
「いえいえ。私も楽しいですから」
 シルヴィアの顔には笑みが浮かんでいて、その言葉には嘘が無いことが考助にもわかった。
 既にシルヴィアの子供たちは成長していて、こんなことを聞いてくることも少なくなっているので、楽しいというのは間違いではないのだ。
「そうか。それだったらよかった」
 シルヴィアの笑顔に、考助は同じように笑みを返した。

 考助とシルヴィアがお互いに微笑み合っていると、それに気付いたコレットが少しばかりむすっとした顔を向けてきた。
「・・・・・・おふたりさんの仲が良いのはいいことなのですが、もう少し時と場所を選んでもらえないでしょうかねえ?」
 そう言ったコレットの傍にはセイヤとシアがいて、ジーッと考助とシルヴィアを見ていた。
「とうさま、楽しい?」
「シルヴィアかあさまも、楽しい?」
 そんなことを聞いてきた子供たちふたりに、考助とシルヴィアは一度顔を見合わせてからお互いにくすりと笑った。
「うん。勿論だよ」
「そうですわね」
 そう答えた考助とシルヴィアは、それぞれセイヤとシアの頭をぐりぐりと撫でるのであった。

 そんなことをしつつ適当に屋台の物を食べながら、子供たちに導かれるままミクセンの街を観光していた考助たちだったが、楽しい時間はあっという間に過ぎた。
 夕食はホテルでとることになっていたので、全員で集まって食事をとり、その日は終わりとなったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 翌日は、子供たちと別れてから、三度目の儀式を行うため街から離れた場所へと移動した。
 今回の儀式でいつもの場所に置かれるのはワンリになる。
 そのため、子供たちと入れ違うようにして、塔から呼んでいた。
 ちなみに、いまのワンリは狐の姿になっている。
 儀式的にはどちらの姿でも構わないのだが、なんとなく以前のナナのことを考えたらそちらの方がいい気がしたのだ。

 一回目のナナのときと同じように、全ての準備を整えてから、考助は地面に書かれた円の中にいるようにワンリに指示をした。
 狐の姿をしていても考助の声をきちんと理解しているワンリは、素直に円の中に収まるようにして、いわゆるお座りをした状態になる。
 それを確認した考助は、すぐに儀式を開始した。
 既に三度目の儀式のため、特に戸惑うこともなく二回目以上にスムーズに祝詞を唱えることができた。
 前回、前々回と同じように魔法陣が浮かび上がるところも同じだ。
 唯一、これまでと違ったようにみえたのは、空に浮かび上がった魔法陣から光が真っすぐに北西の方角に向かって伸びていったことだ。
 そのあとは、いままでと同じように魔法陣が南東の海上に向けて飛んで行き、目で追うことは不可能になった。

 儀式を終えた考助に、シュレインが首を傾げながら聞いてきた。
「北西の方角に光が伸びて行ったようじゃが、あれは?」
「ああ。あれは、北においている魔法陣と繋がるようにするために伸びたものだね。ちなみに、南で作業するときは北東方向に向かって伸びるよ」
「南は、北東・・・・・・なるほどの。そういうことか」
 考助の言葉で、理解したとばかりにシュレインが大きく頷いた。
 今の説明で、考助が行なっている儀式が、どういうものかがわかったのだ。

 考助とシュレインの会話を聞いて、しばらくうつむき加減で考えていたシルヴィアが、ぽつりと呟いた。
「・・・・・・六芒星、ですか」
 六か所で儀式を行い、北と南東、北東と南で力のつながりを持たすとなれば、考助が儀式で何を創ろうとしているのかは想像がしやすい。
 少し考えれば、シルヴィアにも分かることだ。
 ちなみに、六か所で儀式を行うということですぐに六芒星が思い浮かばなかったのは、六つを頂点とする魔法陣が六芒星だけではないからだ。
 六角形であったり、それぞれの対面にある頂点を結ぶだけの「*」のような魔法陣もあるのだ。
「まあ、そういうことだね」
 魔法陣は、種類によって力関係に上下の差があるわけではない。
 あくまでも、用途によって使い分けをしているだけだ。
 今回六芒星を選んだのは、考助にとってなじみ深い(?)ものだったというのもあるのだが、それよりも一番用途に向いていたからだった。

 儀式に使われることになる魔法陣が六芒星だと聞いたシルヴィアが、なにやら考え込むような表情になったことに考助は内心で首を傾げた。
 だが、特にそれ以上はなにも聞いてこなかったので、この場はこれでお開きとなった。
 一切の儀式の証拠を残さないように片付けたあとは、ミクセンの街に戻って翌日以降の旅の準備に取り掛かるのであった。
とっくに想像はついていたでしょうが、今回の儀式で作る魔法陣は六芒星です。
一番分かり易いでしょうしw
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