挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 東~南方面

880/1177

(1)東の街の様子

 子供たちと別れたあとの旅は、非常に順調で途中のモンスター狩り以外は特に問題なく先に進むことができた。
 そして、幾つかの町や村を越えた考助たちは、すでに東の街に入っていた。

 東の街は、ラゼクアマミヤの中では三番目に大きな街になる。
 過去には、東大陸からラゼクアマミヤに対して、攻撃的な対応をしてきた国家もあったが、現在では比較的友好的な態度を取る国家が多い。
 東大陸は、南大陸に次いでアマミヤの塔の転移門を取り入れた大陸になるが、全ての輸送を転移門だけで賄っているわけではない。
 そのため、海上輸送による交易が盛んに行われているのだ。
 となれば、東大陸の各都市と一番近い東の街が栄えるのは、当然の結果と言えるだろう。
 さらにいえば、東の街の近くには、適当な港が作れる場所が少ないのもそれに拍車をかけている。
 大陸との海上貿易をひとつの街だけで賄うのには無理があるが、地理的条件でどうしてもそうせざるを得ないという面もある。
 ただし、ラゼクアマミヤは、海の輸送以外にも転移門という手段が取れるため、東の街だけですべての交易品を受け入れているわけではない。

 東の街を一望できる展望台の上に立った考助は、感嘆の声を上げた。
「これはすごいなあ」
「私が以前見たときよりもさらに拡張されているようだな」
 大きな港に貿易船が次々と出たり入ったりする様子を見ていた考助に、フローリアも満足げに頷いた。
「そうなんだ」
「うむ。前に来たとき時点で、拡張計画が上がっていたくらいだからな。いまはその計画よりもさらに進んでいるようだな」
 船が停泊する港は、いくら拡張しても足りないような状態で、東大陸との貿易が増えている。
 そのため、東の街にある港は、常に拡張工事がされているような状態なのだ。
「そうみたいだけれど、そろそろ拡張場所がなさそうに見えるけれど?」
 ぐるりと周囲を見回した考助は、そう感想を漏らした。
 現在作られている港といまある港を除くと、大型の船が停泊するための港を作れそうな場所がほとんど無くなっているのだ。
「・・・・・・そうだな。それがいま一番頭の痛い問題だろう」
 ため息をつくように言ったフローリアに、隣で話を聞いていたシルヴィアが頷いていた。

 当然といえば当然だが、セントラル大陸の海岸は港が作れるような浅瀬だけが広がっているわけではない。
 むしろ、船が停泊できる浜辺の少ない大陸なのだ。
 そもそも簡単に港町を作れるような大陸であれば、他の大陸に比べてここまで発展が遅れることは無かっただろう。
 ラゼクアマミヤが急速に発展できたは、転移門という港による貿易に頼らない手段を得たことも大きな理由となっている。
 とはいえ、転移門だけに頼るわけにもいかず、港の拡張が急がれているのだが、中々いい場所が見つからないということもまた現実なのである。

 港から街へ視線を移したシュレインが、ふとなにかに気付いたような顔になった。
「街の拡張は終わっているのかの?」
 東の街の陸側は、まだまだ平地が広がっている。
 ただ今のところ、その平地を使って街の拡張工事が行われているようには見えない。
「ああ。それは、終わっているわけではなく、新しくできたところに人が埋まるのを待っているのだろうな」
 ラゼクアマミヤは、港の拡張とともに、当然ながら街の拡張も行っていた。
 貿易量が増えれば、それだけ人手が必要になり、街に住む人口が増えるのだから当たり前だ。
 それを見越して街の拡張も行われてはいるのだが、予定よりも人の数が増えなければ無駄に建物を作っても仕方ない。
 今のところ街にいる人数に対してよりも建物の数が多いので、いまは拡張が行われていないだけなのだ。
 貿易の量に相対するように、東の街の人口が増えていっているのは、数字の上ではっきりと表れている。
 また、そうでなければ、未だに港の拡張が行われるなんてことは、発生しないのである。

 街の出入り口に目を向ければ、商品を運ぶための荷馬車が多く出入りしているところが、はっきり見える。
 蟻の行列のようにとまではいかないまでも、かなり頻度で街の門から馬車が出て行く様を見れば、東の街が交易でにぎわっているところだということは一目瞭然である。
 ただし、それだけにとある問題もあるのだ。
 それに気付いたシュレインが、フローリアに確認するような視線を向けた。
「これだけ多くの荷馬車が出入りしているのに、周辺の町や村には全てが行き届いてはいないようじゃの?」
 その質問に、フローリアの顔が曇った。
「ああ。・・・・・・やはりモンスターによる被害は、無視できないからな」
 街から出て行く荷馬車の荷物が、きちんと周辺の町や村に行き届けば、更なる発展も見込めるだろう。
 だが、残念ながらいくら討伐隊が目を光らせていても、すべてのモンスターの被害を防ぐことはできない。
 その結果として、周辺にある町や村は、届けられた物資でやりくりをして維持をしているのが現状なのである。
 そしてそれは、東の街周辺に限ったことではなく、大陸内にあるほとんどの町や村に共通した問題なのだ。

 街を出入りする馬車を見ながら考助が、考え込むようにして問いかけた。
「やっぱりモンスターの被害は収まっていないの?」
「討伐軍ができた時点である程度の軽減は見られたが、極端によくなったというわけでもないからな。良くて四割、平均したら三割程度の減少だと思うぞ? 今はもう少しよくなっているかもしれないが」
 フローリアの細かい説明に、シュレインがフムと頷いた。
「やはり人口の増加による軍の増設は急務か」
「そうだな」

 討伐軍の規模を大きくすれば、それだけ街道沿いの監視の人数が増やせる。
 そうすれば、結果的にモンスターによる被害は軽減されて行商による輸送は自然に増えていくことになる。
 であれば軍の規模を大きくすればいいじゃないかという話なのだが、そう簡単にはいかない。
 軍が金食い虫なのは、どの時代、どんな世界でも変わらないのだ。
 それ以外にも、軍人として人を取ってしまえば、それ以外の経済活動にも影響が出る。

 そもそも、モンスター以外の外敵をほとんど考えなくていいラゼクアマミヤは、正規軍の数は少ない。
 その分の人材を経済活動に回してこれまで発展してきたのだから、それを軍人として雇うということは、簡単にはできないのである。
 結果として、人口を増やしたうえで、軍の規模を大きくする必要が出てくるというわけだ。
 とはいえ、人口を増やすといっても簡単にできるものではない。
 ラゼクアマミヤという国ができて以来、セントラル大陸の人口は急激に増えてはいるが、それでも限界はある。
 結局のところ、時間をかけて少しずつ増やすのが一番近い道なのだ。

 話がセントラル大陸内の人口増加にまで及んだところで、フローリアはその顔に苦笑を浮かべてから首を左右に振った。
「いかんな。それを考えるのは私の役目ではない」
 そのフローリアの言葉に、シュレインとシルヴィアも顔を見合わせてから苦笑した。
「それはそうですわね」
「確かにの。吾らは吾らのすべきことを考えようかの」
 シュレインがそう締めると、フローリアとシルヴィアが同意するように頷くのであった。

 
 街を見渡せる高台から戻った考助たちは、翌々日の出発に合わせての準備を始めた。
 今日一日は準備の日として、翌日は完全休養日となっている。
 休養日に合わせてコレットやピーチ、それから子供たちが東の街に来ることになっている。
 翌々日からの旅に子供たちがどうこうするかどうかはまだ決めていない。
 休養日に直接会って様子を見てから決めることにしているのだ。
 子供たちに久しぶりに会えるのを楽しみにしながら、考助はその日の予定を順調に終えるのであった。
東の街の様子でした。
人口増加は急務ですが、そんなに簡単には増やせません。
今、塔の中では耕作地の作成が急ピッチで行われています。

次は元気になった子供たちとの再会!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ