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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 北~東方面

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(7)元気いっぱい!

 リュウセンの町外れで儀式を行った翌日は、完全休養日だ。
 考助は、アマミヤの塔から転移門を使ってきたコレット、ピーチとともに、久しぶりに一緒に町の中を見ながら過ごしていた。
 もちろん、子供たちも一緒である。
 シュレインたちは、コレットとピーチに気を使って別行動をしている。
 今頃は、旅の準備も含めて町の中で買い物などを楽しんでいるはずだ。

 すでにコレットの双子は四歳、ピーチの子供は三歳になっているので、家族で町の中をゆっくり歩き回るのには十分すぎるほどの年齢である。
 逆に元気すぎて親の目から離れすぎないように注意しなければならないほどだ。
 いつもとは違った町の風景に、子供たちのテンションが上がっているのが考助にもわかった。
 もっともそれは、考助だけではなく、他の街の住人たちも子供たちの様子を見ればすぐに分かることなのだが。
 事実、美味しそうな匂いを漂わせている屋台に駆け寄ってきた子供たちを見て、店主が目を細めて考助を見て言ってきた。
「はは。元気なお子さんたちだな」
「ええ。お陰さまで」
「やっぱり子供はこうでなくっちゃな」
 大きく頷きながら言葉を返してきた店主だが、その手はしっかりと動かしたままだ。
 この屋台で作っているのは、お好み焼きのような生地に様々な具材が入っているものだ。
 店主が生地を焦がさないようにパタパタとひっくり返しているのが面白いのか、子供たちは目を丸くしてその作業を見ていた。
 店主も子供たちに見られるのは慣れっこなのか、特に気にすることなく作業を続けている。
 それを見た考助たちも、子供たちが店主の作業の邪魔になることをしない限りは止めるつもりはない。

 考助が店主と会話をしている間に、子供たちの顔が作業を見るのを楽しんでいるのか、作っている物を食べたくなってきたのかわからなくなってきた。
「店主、子供たちにひとつずつ作ってもらってもいいかな?」
「あいよ。毎度あり」
 子供サイズでよろしくという無言の注文はすぐに通じたらしく、店主はすぐに頷いて新しいものを作り始めた。
 考助が注文したのを見て、コレットが若干渋い顔をしたことに気付いた考助だったが、それはあえて気付かなかったふりをした。
 自業自得の面も多分にあるが、考助が子供たちと触れ合える機会はそうそう多くはない。
 こういうときくらいは、甘やかすことを許してほしいというのが本音だった。
 ただ、コレットも考助の思いがよくわかっているので、それ以上特に何かを言ってくることはないのだが。

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 考助から食べ物を与えられてご機嫌になった子供たちは、ますます元気になった。
 どこからそんな元気が出てくるのか、考助にとってはいつ見ても不思議だ。
 子供たちのテンションについていくのが難しくなった大人たち三人は、子供を公園のような広場に放し飼いにすることに決めた。
 勿論、子供たちには、自分たちの目の届く場所で遊ぶように言ってある。
 もっとも、子供は夢中になるとそんなことはすぐに頭の中から消え去ってしまうので、考助たちはきちんと目を離さないように腰を落ち付けて話をしている。
「リュウセンの町も以前と変わりないように見えるわね」
 コレットの言葉に、考助も頷きを返した。
「うん、そうだね。国の政策がなんとか無事に機能したってところかな?」

 ラゼクアマミヤという国ができて、次々と転移門がラゼクアマミヤの各都市とつなげられていく状況で、大きな影響を受けると言われていたのがリュウセンの町だ。
 もともとリュウセンの町は、セントラル大陸の中で一番塔に近い町として知られており、多くの冒険者が集まっていた。
 ところが、転移門ができればその一番のメリットが失われることになる。
 さらに、クラウン本部は塔の中にある町にできているので、冒険者たちはわざわざリュウセンの町にとどまる必要がなくなってしまったのだ。
 そうなれば、冒険者の町として成り立っていたリュウセンは、新しい産業なりなんなりを見つけない限り、衰退していくしかない。

 その状態に手を打ったのが、当時フローリアが治めるラゼクアマミヤだった。
 国を治める以上、国内にある町の興隆や衰退が起こるのは当然のことだったが、リュウセンの町の冒険者を減らすわけにはいかないという事情があった。
 それまで多くの冒険者で維持していた町なので、急激にその数を減らせば、周辺にいるモンスターたちの数が増えることが懸念された。
 そのため、ラゼクアマミヤは、冒険者の数が減るのは仕方ないとして、代わりに国の部隊を置くことにしたのだ。
 具体的には、討伐軍の駐留部隊を塔の中とは別に作ったのだ。
 転移門がある以上、どこに作っても大きな差は出ないのだが、塔の中と外では出てくるモンスターが違っている。
 訓練という観点からも第五層の町とは別に部隊を作る必要があったのだが、白羽の矢が立ったのがリュウセンだったというわけだ。
 もともと冒険者という荒くれ者が集まっていた町なので、軍が駐留することになるのに反対する住人も少なかったこともある。
 両者の思惑が上手く絡み合った結果、いまのリュウセンは人口を減らすことなく以前以上の賑わいを見せているのである。

 リュウセンの町を歩けば、そこかしこで討伐軍の隊員が歩いていることがわかる。
 さすがに非番の者まで制服を着ているわけではないが、それでも一般人や冒険者とは違った雰囲気を持っているのだ。
 隊員として正規の訓練を受けているので、見る者が見れば一目瞭然といった感じだ。
「討伐軍の隊員たちも、町の人たちにきちんと受け入れられているようですね~」
「そうだね。もともと冒険者を受け入れていた土壌があるからかな?」
 討伐軍の隊員は国からきちんとした給料をもらっているので、それ以外の住人が彼らから得るお金はリュウセンの町を潤わせていくことになっている。
 それもこれも軍人を否定せずに、しっかりと受け入れているからこそのことだ。
「冒険者が少なくなっても、彼らが守ってくれているという思いもあるわね」
「まあ、それは軍の政策としても徹底されているだろうからね」
 討伐軍がリュウセンの町を守っていることは、疑いようのない事実である。
 ただし、軍という組織が負の側面を持っていることも確かだ。
 それを軽減するために、討伐軍のいいところが町に噂レベルで広まっているのもまた間違いではない。

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 子供たちを十分に遊ばせた考助たちは、再びリュウセンの町を歩き出した。
 前ほどのテンションではなくなった子供たちだったが、それでもまだまだ親と一緒に町を見て回る元気はあったようで、珍しい物を見つけてははしゃいでいた。
 途中でシュレインたちと合流したあとは、少し早めの夕食となる。
 子供たちが入っても大丈夫そうな高級食事処に入った考助たちは、リュウセンの定番料理に舌鼓を打った。
 昼間に遊びまくって疲れていたのか、それとも母親の躾がしっかりしているのか、子供たちは大騒ぎをすることなく食事を楽しんでいた。
 それでもしっかりと出されたものを平らげていたのは、さすがといったところだろう。

 食事を終えた考助たちは、すぐに宿に戻った。
 宿の部屋に入るなり一日の疲れが出たのか、子供たちはすぐに寝てしまった。
 あとは、大人たちがゆっくりとした時を過ごして、リュウセンでの観光もどきは終幕となるのであった。
元気いっぱいの子供たちでした。
ちなみに、エルフの子供(しかも双子)は珍しいので、注目を集めていたりします。
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