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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 北~東方面

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(6)二回目の儀式

 北の街からいくつかの町や村を抜けてきた巡礼隊は、無事にリュウセンの町に着いた。
 ゼントの巡礼隊自体はこれから先もミクセンを目指して進むことになるが、考助たちとはここでお別れとなる。
 巡礼隊とのスケジュールが合わないというのもあるが、なによりも考助はここでやることがある。
 旅の目的のひとつである儀式を、北の街と同じようにリュウセンの町外れで行うことになっているのだ。

 そうした事情は知らないゼントだが、考助との別れは惜しんでくれた。
「残念だが、ここでお別れだな」
 Aランク冒険者が護衛してくれなくなるということもあるが、その目は本心からそう思ってくれていることがわかった。
 だからこそ考助も素直に頷いて返答した。
「ええ。ありがとうございます」
「なに。それはこちらの台詞だ。ここまで無事だったのは、間違いなくお前たちのお陰だからな」
 笑顔でそう言ったゼントだが、考助にもそれは多少お世辞が入っていることはわかっている。
 ゼントにとってはここまでの道中は、いつもの繰り返しと変わらない。
 考助たちがAランク冒険者で、事故らしい事故もなくここまで来ることができたということはあるが、今までもそういったことが無かったわけではないのだ。
 とはいえ、お世辞だろうとなんだろうと、評価をしてくれていることは素直に嬉しい。
「そういっていただけると、依頼を受けた甲斐がありました」
 笑顔でそういった考助に、ゼントは「そうか」と短く返してきた。

 依頼が終わって別れが来るのは、ゼントにとってはいつものことだ。
 最後の握手だけは交わして考助はゼントとの別れを済ませるのであった。

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 リュウセンの町で一泊をした考助たちは、翌日町外れに向かった。
 目的は勿論、二回目の儀式を行うためである。
 神域化で行う儀式の数は全部で六か所七回になる。
 方角的には、聖魔の塔と四属性の塔があるところで重要になるが、場所そのものは重要ではない。
 というのも、しっかりとした場所で儀式を行おうとすれば、大陸全体を包むために海の上で儀式を行わなければならなくなる。
 そのため、いちいち海の上で儀式を行うのではなく、方角だけを合わせて位置は自動で調整するようにしてある。

 北の街のときと同じように、儀式の準備をするのは考助、コウヒ、ミツキの役目で、他のメンバーは周囲の警戒に当たっている。
 二度目の儀式ということで、考助の準備は一回目ほど時間をかけずに終えることができた。
 一度ぐるりと魔法陣を見渡した考助は、満足げに頷いてから視線をシュレインたちのいるところへ向けた。
「それじゃあ、ワンリ、お願い」
「あ、はい」
 シュレインたちに混じって警戒に当たっていたワンリが、考助の言葉で駆け寄ってきた。
 ワンリは北の街からリュウセンの町までの道中にはいなかったのだが、リュウセンに到着した時点で塔に戻って呼んできたのだ。
 それには当然、理由がある。
「それじゃあ、そこにある飾り台に勾玉をかけて・・・・・・そうそう、そんな感じ」
 考助の指示に従って、ワンリが身に着けていた勾玉がかけられるような作りになっている飾り台にかけた。

 勾玉が置かれた場所は、北の街のときにナナがいた所とそっくり同じ場所だ。
 それを見れば、今回は勾玉がナナの代わりに何かの役割を果たすことがわかる。
「あれは・・・・・・いったい何のためにあるんだろうな?」
「神域を作るうえで、象徴的な物を置いているようですよ」
 様子を見ていたフローリアが疑問を口にして、それを耳にしたシルヴィアが答えた。
 巡礼隊で護衛をしているときに、シルヴィアは考助から話を聞いていたのだ。
 勿論、一緒の馬車に乗っていたゼントや他の巡礼者には分からないようにである。

 シルヴィアの説明を聞いてシュレインが納得の表情で頷いた。
「象徴・・・・・・なるほどの。となると、残りの四つも予想がつくかの」
「ええ。恐らく間違っていないと思いますわ」
 神事はともかくとして、こうした契約の儀式はシュレインも詳しい。
 大陸全体を神域化する儀式なんてものは、当然のようにシュレインも知らないが、それでもヒントがあればある程度の予想することは可能なのだ。

 ふたりで分かり合って頷いているシュレインとシルヴィアに、フローリアが首を傾げた。
「そうなのか?」
「うむ。あくまでも予想でしかないし、順番はまったくわからないがの」
「そうですね。それに、フローリアはなにが来るかを楽しみにしていたほうがいいのではありませんか?」
「そういわれてみればそうかもな」
 最初から誰かに聞いてしまうよりも、自分で考えたほうがいいのではないかという提案に、フローリアは納得の表情になった。
 大陸を一周する長旅になるのだ。
 それくらいの楽しみはあってもいいだろうと考えたのである。
 ちなみに、シュレインやシルヴィアも完全にわかっているわけではないので、同じような楽しみ方は残っていたりする。

 外野が盛り上がっている中、考助はワンリに陣の外側に出てもらうように指示して、儀式を始めた。
 置いているものがナナから勾玉に変わっただけで、やることは前回と変わらない。
 考助が祝詞を唱え終わると、同じように魔法陣が上空に上がっていった。
 前回と同じように目では見えないほどの上空に上がって行った魔法陣は、実はまっすぐ上がって行っているわけではなく、海に向かって行っている。
 これが、魔法陣が正しい場所に行くように考助が調整していることなのだが、それをきちんと見届けている者はひとりもいない。
 儀式を行っている本人(考助)も、恐らく大丈夫だろうと考えているだけで、実際に目で確かめているわけではない。
 最終的にうまくいったかどうかは、当然というべきか、最後に行う儀式のときに分かる。
 とりあえず考助は、今回の儀式が終わったことをきっちりと確認してシュレインたちのところに移動するのであった。

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 儀式を終えた考助たちは、すぐにその場を去る・・・・・・わけではなく、護衛依頼の最中にため込んだモンスターの処理をすることにした。
 倒した全てのモンスターではないが、ある程度の数はアイテムボックスに回収してある。
 旅を終えてから管理層で処理をするととんでもない数になるので、今のうちにいままでの分は終わらせる。
 この日の残りの時間は、モンスターの素材回収の時間として使うことにしたのだ。

「ふむ。やはりため込むと多いの」
 アイテムボックスから次々と出されるモンスターの死骸に、シュレインがため息をつきながらそう言った。
「そうだね。これでもある程度は厳選したつもりだったんだけれどね」
「やはり、ため込むのではなく、その場で処理したほうがいいのでしょうか?」
 シルヴィアの確認に、考助も頷きを返した。
「護衛依頼だから早くその場から立ち去ることを目的にしたけれど、やっぱり失敗だったかな?」
「だが、全部の素材はいらないだろう? 護衛依頼に関しては、あれでよかったと思うぞ」
 若干反省して見せた考助だったが、フローリアのフォローにシュレインもシルヴィアも同意するように頷いた。
 モンスターの素材を得ることよりも巡礼隊の移動を優先したのは、間違いではなかったと誰もが思っているのだ。

 襲ってきたモンスターの処理方法はともかくとして、一応すべてのモンスターの処理は、その日のうちに終えることができた。
 本来であれば、これだけ大量のモンスターの素材を集めていれば、その間に他のモンスターが集まってきてもおかしくはなかったのだが、一度も襲われることなく回収することができた。
 その理由のひとつには、周囲でナナがにらみをきかせていたというのもあるのだろう。
 とにかく、何事もなく作業を終えた考助たちは、揃ってリュウセンの町へと戻るのであった。
仕事をため込むのはいけません。
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