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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第8部 序章 旅の準備

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(4)ご挨拶

 シュレインたちにある程度運転を楽しんでもらったあとは、さらに数時間かけてその日の実験を終えた。
 いくつか調整が必要な不具合を見つけたので、いったん研究室に戻って修正を図ることになる。
 実際に長時間走行してみないとわからないこともたくさんあるのだ。
 旅に出るまでは、そうした微調整を繰り返すことになる。
 といっても、不具合はぼろぼろと出てくるものではなく、数日後には大体満足の行くできになった。
 旅の最中に不具合がでてきたとしても、考助がその場で直せるようなものしか残っていないようなところまではでき上がっている。
 もしかしたら旅先で直せないような大きな不具合もあるかもしれないが、それは見つけ次第直すしかない。
 こうして旅の間の足を確保した考助は、それ以外の準備にも手を付け始めた。
 そうこうしているうちに、女神たちの準備が整ったとエリスから連絡が来た。
 旅の準備を整えていた考助は、その連絡を受けて、すぐにアスラの神域へと向かった。

「・・・・・・なに、この人数?」
 アスラの屋敷からエリスに案内されて表に出た考助は、集まった女神の数におののいた。
 神域にいるすべての女神が集まっているのではないかと思われるほどの数が集合していたのだ。
「呼びかけた結果です。それだけ考助様のやることを期待しているのでしょう」
「いや、期待はともかく、おかしくない?」
 いつもの調子ですましてそういったエリスに、考助が慌てながら答える。
 考助の認識では、今回の件はあくまでもセントラル大陸を自分の神域にするだけで、女神たちにはさほど影響はないと考えているのだ。
 なぜにここまでの女神が集合する事態になったのか、さっぱりわかっていない。

 驚き戸惑う考助の後ろからクスクスという笑い声が聞こえて来た。
「なにもおかしいことはないわよ。おかしいのは、考助の認識ね」
 そう言って考助の認識の甘さをきっぱりはっきりと切り捨てたのは、アスラだ。
「確かに世界に神域を作ること自体は、大したことではないわ。でもね、あなたがここに来るようになって何年たっていると思っているの」
 考助が定期的にアスラの神域に来るようになってから、すでに二十年以上が経っている。
 その間考助は、様々な女神たちと交流を広げていたのだ。
 この場に集まっているのは、いままで考助が交友を広げて来た女神たちなのである。
「それに、あなたがセントラル大陸に神域をつくるということは、これまであなたと交友を深めて来た皆にとっては、大きな意味を持つのよ」
「え?」
 意味が分からずに首を傾げる考助に、アスラはため息をついた。
「考助が考助らしいままでいるように、余計な知識は与えてこなかったけれど、これからは少し考えたほうがいいかしら・・・・・・いえ、今更かしらね」
 アスラはそう言ってから考助に向かってさらに続けた。
「確かに今回の神域の作成は、考助の権能の影響力を広げるためのものでしかないわ。でもね、それって要するに考助と繋がりを持った女神たちにとっても同じ意味を持つのよ」
 神が神域を作るということは、自らの権能の力を強めるということに他ならない。
 ただしそれは、その神だけのものではなく、繋がりの持った神にも影響を与えるというのがアスラの説明だった。
 さらにいえば、神同士の繋がりが強ければ強いほど、受ける影響も大きくなっていく。
 アースガルドとの繋がりを強く求めている女神たちにとって今回の考助の行動は、まさしく待ち望んでいたものといっても過言ではないのである。

 アスラから説明を受けた考助は、自分の認識の甘さに頭を抱えた。
 確かにアスラやエリスから説明はなかったので知らなかったといえばそれまでだが、まったく思いつかないことかといえばそうでもない。
 これまでの行動とされてきた説明で、考えようと思えば考えられる事柄なのだ。
「うーん・・・・・・。これは少し考え直したほうがいいかな?」
 思わずついて出た考助の呟きだったが、一番近くに立っていたエリスには聞こえてしまった。
 驚いたように目を少しだけ見開いて、考助を見た。
「中止されるのですか?」
 さすがに今の状況を考えてそれはできないと言いたげな表情になりながらに小声で言ってきたエリスに、考助は慌てて首を左右に振った。
「いや、違う違う。今回の神域化はちゃんとやるよ。これだけ手間暇かけているのに、中止なんてできないから」
 考助が小声でそう答えると、エリスはあからさまに安心したような顔になった。
 考助が言った通りこれまでの手間暇が無駄になってしまうというのもあるのだが、それ以上に中止になった場合の女神たちからの反発が気になっていたのだ。
 いくら考助でもここで中止にするなんてことを口にすれば、集まった女神たちが反発することくらいは予想できる。
 考助は、そんなことをするつもりは、まったくないのである。

 こそこそと話をしている間に準備は整ったようで、考助は女神たちが集まる広場の中央に立たされた。
 いかにも取って付けたような台が用意されているが、なんとなくジャルが用意したのではないかと、それを見た考助は邪推する。
 そんなことは顔にはおくびにも出さずに台の上に乗った考助は、神力を使って全体に声が広がるようにしながら今回の件を説明し始めた。
 といっても、女神たちこの場に集める時点で詳細は伝わっているため、この場で話す内容はあくまでも簡単なことだけだ。
 考助が話すのは、セントラル大陸の神域化の方法についてとその期間くらいで、時間にすれば五分もかからずに終わった。
 もともと考助のやることを支持している者たちが集まっているので、話を終えたあとは、会場中で拍手が巻き起こった。
 こうして考助は、アスラの神域にいる女神たちに今回の件の説明するという大任(?)を終えたのである。

 
 女神たちへの説明を終えた考助は、そのまま塔に戻るわけにいかず、アスラの屋敷へと戻った。
 先ほど話した内容で、もう少しだけ聞きたいことがあったのだ。
「僕がセントラル大陸を神域化することによって、他の女神たちの影響力が強まるのはわかったけれど、エリスたちの影響力が弱まるなんてことはあるの?」
 もしそうなれば、神としての地位を簒奪することに繋がりかねないと考えての考助の言葉に、アスラは目を丸くしてクスリと笑った。
「そんなことはないわよ。完全にアースガルドとの繋がりを断ってしまうならともかく、今回は違うでしょう?」
「ああ、そういうことか」
 それこそ、アスラの神域や考助が管理層に繋げてある神域のように、セントラル大陸を別世界にしてしまえば考助が言ったようなことも起こり得る。
 だが、今回はそうではないので大丈夫だというのが、アスラの説明だ。

 それを聞いた考助は安心したような表情になる。
「なんて顔をしているのよ。もしそんなことになるんだったら、止めるかどうかはともかく、もっときちんと話し合っているわよ」
「それもそうか」
 若干あきれたような視線を向けて来たアスラに、考助は照れたように視線を背けた。
 そのくらいのことは、アスラだってきちんと考えている。
 ようやくそのことに思い至ったのである。
 その考助に対してアスラは特になにも言わず、ただ微笑みだけを向けるのであった。
大勢の前でのご挨拶でしたw
でもメインは今回の神域化についての説明です。
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