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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第8部 序章 旅の準備

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(3)移動手段

 女神たちを集めるのはエリスに任せることにして、考助は一旦アマミヤの塔へと戻った。
 全ての女神に話が行くのには時間がかかるのと、考助は神域を作るための準備をしなくてはならなかったためだ。
 セントラル大陸のすべてを神域にするのは、さすがに何の準備もなく行うことはできない。
 基本的には考助の神力だけで、何か所かで儀式を行うことになる。
 今回はそれだけではなく、大陸を一周して考助自身の足跡を残さなくてはならない。
 しかも、コーに乗って空を旅することもできない。
 だからといって、本当に自らの足だけで大陸を回るとなると、何年たっても終わらない。
 そのために、とある秘密兵器の準備が必須なのである。

 塔に戻った考助を、シルヴィアが不安そうな顔で出迎えた。
「・・・・・・いかがでしたか?」
「ああ。まだ全員への挨拶が終わってないからもう一度行かなきゃだめだけれど、とりあえず反対はされなかったよ」
 考助がそう答えると、シルヴィアは安堵して息をついた。
「そうですか。では、もう一度行くというのは?」
「ああ。それは、今回は許可を取りに行っただけだからね。女神たちに周知するには少し時間がほしいって」
 女神たちの裏事情に、シルヴィアは納得したように頷いた。
「そういうことでしたか」
「まあ、そういうわけだから、しばらくこっちで準備を進めて、向こうの準備ができたらもう一度行く予定」
「わかりました」
 シルヴィアがもう一度頷くのを確認した考助は、他のメンバーにも説明するべく歩き出した。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 現状を説明し終えた考助は、さっそく研究室へと入った。
 大陸中を巡るための道具を作らなくてはならない。
 既に基本となる道具は作ってあり、それを改良しなくてはならないのだ。
「ああ、お戻りになりましたか」
 考助が研究室の扉を開けると、そこではイスナーニが作業を行っていた。
 最近のイスナーニは、クラウンでの後進の育成を終えて、管理層と行ったり来たりをしている。
「うん。調子はどう?」
 考助は、自分がアスラの神域に行っている間、イスナーニに移動手段を改良してもらうように頼んでいた。
 もっとも、考助が神域に行ってから一日も経っていないので、さほど大幅な改良がされているとは考えていない。
 今回は、改良というよりも、使いやすくするための調整のほうが大事なのだ。

 考助に問われたイスナーニは、部屋の中にデンと鎮座している馬車を見ながらニコリと笑った。
「だいぶ進んでいますよ。この分だとあと二日もせずに満足が行くものができそうです」
 そのイスナーニの返答に、考助は本気で驚いた。
「えっ!? もう、そんなに進んでいるの?」
「はい。といっても、私が手を入れたところはほとんどありません。それに、あとは実際に走って見ながら調整しないとわからないところですから」
「そうか。それは確かに必要だね」
 研究室の段階では目的通りに動いても、実際に使っていくうちに予定外の不具合が出てくることなどいくらでもあるのだ。

 今回考助たちが作ろうとしているのは、自動走行する馬車である。
 といっても、考助が知る車のように、内燃機関があって動くものではない。
 基礎になっているのは、以前に荷運び用に作った魔道具だ。
 以前に作ったものは、単に氷の上をすべるようにするためのもので、自動で動くようにはできていない。
 そのため、考助は神力を使って馬車そのものが自動で動けるような装置を作ってあったのだ。
 ただし、神力を使って動くため、普通の人では動かすことができない。
 あくまでも神力操作に長けた者が動かせるので、現状では、実質塔のメンバーのみが動かせる仕様となっていた。
 勿論、馬車の中に勝手に入られないように、セキュリティーもしっかりしている。

 そうした機能をすべて詰め込んだものを以前からちょこちょこと作ってはいたのだが、最終的な調整ができていなかった。
 考助はそれをイスナーニに任せて神域に行ったのだが、そこまで大きな調整は必要なかったのである。
 あとは、実走することによって何か大きな不具合が出ないかを確認するだけだ。
「・・・・・・となると、どこかの階層で確認したほうがいいかな?」
 セントラル大陸を巡るときは人目を完全に避けることは難しいが、旅に出るまではできるだけ隠しておきたい。
 それであれば、冒険者たちが出入りすることのない階層を使って試し乗り(?)して見るのが一番いい。
「そうですね。それがよろしいかと思います」
 考助の提案に、イスナーニも同意した。

 
 考助たちは、自走式馬車(仮名)をコウヒのアイテムボックスにしまってから適当な階層を選んで転移した。
 仮走行の実験には、シルヴィア、フローリア、シュレインもついてきている。
 乗り物といえば馬車が基本となっている世界では、勝手に目的地まで走ってくれる乗り物など未知の道具でしかない。
 考助がいくら口で説明しても理解しがたかったので、直接見に来たというわけだ。
 転移門の傍でコウヒが出した自走式馬車(仮)を見て、シルヴィアたちが口々に感想を言ってきた。
「・・・・・・外側は普通の馬車のものと変わりませんね?」
「これが自動で動くのか?」
「信じられんの」
 今回作った自走式馬車は、あくまでも以前から持っていた馬車を改良したものでしかない。
 そのため、外装は以前とほとんど変わっていないのである。
 ただし、もともとかなりの魔改造を施してあるので、普通の馬車とはあちこちで違っているところがあるのだが。

 後ろの方から聞こえてくるシルヴィアたちの声を聞き流しながら、考助は自走式馬車のチェックを始めた。
 馬車の中に乗り込んで、正常に動力が動くのと計器類を確認した。
 計器のひとつから燃料の代わりとなる神力がたっぷりと残っていることを見てから、考助は外にいたままのシルヴィアたちに声をかける。
「そろそろ出発するけれど、乗る?」
 走り出していきなり爆発したりするようなこともないので、考助もある程度は安心して誘っている。
 考助の言葉に、シルヴィアたちが慌てて馬車に乗り込んだ。
 それを確認した考助は、ゆっくりと馬車を走らせた。

 自走式馬車は、車のようにハンドルやアクセルが付いているわけではない。
 魔法使いが空を飛ぶときのような方法で移動しているため、考助が知る地面との摩擦によって移動する車とは全く違った理論で動いているのだ。
 考助が運転するのを興味深そうに見ていたシュレインが、自分と代わってくれと要求したのは自走式馬車が動き出してからすぐのことだった。
 さすがに実験と調整も兼ねているのですぐに代わることはできなかったのだが、特に不安定さも見当たらなかったので考助が運転してから十分後にはシュレインと変わった。
「ほほう。これは中々面白いの」
 そう言いながら機嫌よく運転するシュレインを見て、考助はクスリと笑った。
「それは良かった。僕以外に使いたがる人がいなかったらさみしいからね」
「さすがにそれはないだろう。次は私に代わってほしいからな」
 いまのところ世界にひとつしかない神具だ。
 自分で動かせるのであれば動かしてみたいと思うのは当然だろうとフローリアが続ける。
 その顔は、早く代われと言いたげだ。

 考助は苦笑しながら頷き、次はフローリアだとシュレインに言っておいた。
 考助にしてみれば、複数の人間で調査することも意味があるのだ。
 結局そのあとは、十分ほどでシュレインからフローリアに運転を交代し、そこからさらに十分後にはシルヴィアに交代することになるのであった。
大陸中を回ることになるので、移動手段は必須ですw
飛龍の移動と馬車の移動、何が違うかといえば、きちんと地に足が付いているかどうかです。
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