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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 スライム!

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(9)眷属の扱い

 考助は、シュミットが管理層を訪ねてきたときを狙ってスライム相撲をやって見せた。
「ほほう。なるほど。これがそうですか」
 トワのときと同じように、スーラともう一匹のスライムを戦わせて見せると、シュミットは感心したように頷いた。
「どうかな? ちょっとした娯楽にはなると思うけれど」
「なるでしょうね」
 シュミットはトワとは違って、すぐにそう言って同意した。
 これは別にトワよりもシュミットのほうが優れているというわけではない。
 あくまでも立場の違いで、見ている観点が違うからこそだ。
 それに、シュミットにはトワが持っていない情報も持っている。
「確かに、スライムの家畜化は何とかうまくできそうですからね。それをうまくすれば、はやらせることもできるかもしれない、というわけですか」
「そうそう」
 以前にスーラがお掃除していることを発見したときに、スライムを掃除道具として使えるのではないかとシュミットに話していた。
 そのときに、養殖しているスライムを参考にして家畜化できないかを検討していた。
 それの延長で、スライム相撲用のスライムも繁殖させることができるのではないかというのが、考助とシュミットの目論見だった。

 スライム相撲をはやらせるためには、何よりもスライムを広める必要がある。
 それならば、お掃除用のスライムをそのままスライム相撲の選手(?)として登録できるようにしてしまえばいい。
 もしお掃除用のスライムが格安で提供できるようになり、一般の家庭でも受け入れられるようになれば、うまくすればスライム相撲がはやる下地ができることになる。
「なによりもスライムが気軽に手に入るようにならないと駄目だからね」
「それは確かに。とはいえ、そこが難しいのですが」
 スライムは、量産することは簡単だが、それを一般家庭でも飼えるようにすることが難しい。
 あるいは、専用の種を作ってしまって量産できるようにしたほうが速いのだ。
 だが、いまのところクラウンでは、そこまではっきりとした種を分けて量産することはできていないのだ。
「・・・・・・どうにかなりませんか?」
 期待を込めた視線で自分を見てきたシュミットに、考助は苦笑を返した。
「さすがにそれは、期待しすぎで・・・・・・あれ? そうでもないかな?」
 話をしながら考助は、スライム島のことを思い出していた。

 現状、スライム島には考助の眷属しかいない。
 それはモンスターが発生しない島に、スライム種だけをひたすら召喚した結果そうなっている。
 そのうえ、今では召喚は行わずに元いるスライムの分裂だけで島は維持されている。
 結果として、すでにいまのスライム島は、飽和状態になっているともいえるのだ。
 新しい種が誕生したり、これ以上の数が増えることは見込めない。
 それであるならば、島にいるスライムのいくつかを繁殖用としてクラウンに渡してもいいのではないかと考助は考えた。
 問題があるとすれば、ペット用なり飼育用なりで増えたスライムが、無体な扱いを受けない保証はないということだ。
 スライム島のスライムは、全て考助の眷属なので、そこから分裂したスライムは当然考助の眷属となる。
 それらの眷属が傷つけられていると知った考助が、どういう感情を持つのかは未知数のところがある。
 もっとも、きちんと名づけを行った眷属でさえ、事故によって亡くなることはあるのだ。
 あまり心配する必要もないともいえる。

 そこまで考えた考助は、ぽつりと呟いた。
「・・・・・・うーん。本気で渡すことを考えてみるか」
 その考助の言葉を聞き逃すようなことをシュミットがするはずもない。
 きらりと目を輝かせて、わずかに前のめりになった。
「何かあるのですかな?」
「あ~。うん。まあ、あるにはあるんだけれどね」
 そう言いながら及び腰になった考助は、チロリと助けを求めるように、今までの話を黙って聞いていたフローリアに視線を向けた。

 考助から助けを求められたフローリアは、苦笑しながらシュミットに言った。
「コウスケが言っているのは、眷属のことだ。もし、神の眷属が変な扱いを受けたと知ったら・・・・・・どういう騒ぎになるのか、考えたくもないな」
 そのフローリアの説明で、シュミットは表情を残念そうなものに変えた。
 いくらシュミットといえど、神の眷属に無理やり手を出そうとするほど守銭奴ではない。
「・・・・・・なるほど。それは確かに難しいですね」
 とはいえ、それはシュミットの感覚であって、中には平気で悪事に手を染める者もいるのだ。
 契約でスライムを無下に扱わないと縛ったとしても、その契約をすり抜けて裏の仕事で使おうとする者はいくらでも出てくる。
 そうなった場合に、考助も含めた神々がどう動くかがわからないのだ。
 そんな危ない橋を渡ろうとするなら、最初から別の道を探したほうがいい。

 勿論、考助は塔にいるすべての眷属の状況を把握しているわけではない。
 塔には、召喚陣を使って召喚をした眷属や、名をつけた眷属ならともかく、自然発生的に生まれてきた眷属までいるのだ。
 とてもではないが、把握するのは不可能なのだ。
 そう考えれば、売り物として売られたスライムが、どういう扱いになっているのか気にする必要はない。
 だが、そこはそれ。もしかしたらひどい扱いを受けるかもしれない。
 一度でもそういう考えが浮かんでしまえば、考助としては、眷属を売り物にするのはためらってしまう。
 意識にさえ登らなければどうということはないのだが、やはり気になるものは気になるのである。

 そんな言葉にしづらい考助の思いを、フローリアも正確に読んでいるわけではない。
 とはいえ、長い付き合いで複雑な思いがあることはわかる。
 だからこそ、先ほどシュミットに言った言葉に繋がるのである。
「まあ、いま言ったことはあくまでも極端な場合だがな。神々が関わる可能性がある以上、警戒しすぎるに越したことはないだろうからな」
「まったくもって同感ですね」
 シュミットは、シュレインの説明に大いに納得したと言いたげに頷いた。
 そのふたりの会話を横で聞いていた考助は、何とも微妙な表情になった。
「・・・・・・なんというか、ひどい言われような気がするけれど?」
「事実だ。・・・・・・といいたいが、今回に関しては、コウスケだけではなく他の女神にも関係するからな」
 この世界に眷属を持っているのは、考助だけではない。
 他の女神も考助ほどではないにせよ眷属を持っているのだ。
 その眷属がむやみやたらに傷つけられればどうなるか、この世界にそれを理解していない者は、理解力のない子供を除けば誰もいないだろう。
 そして、神の眷属を傷つけられたと分かれば、他の神が動くこともあり得る。
 これも歴史が証明していることなのだ。

 考助も他の女神から眷属に無体を働かれたから助けてやってくれと言われれば、助けるために動くだろう。
 そう考えた考助は、納得したように頷いた。
「・・・・・・なるほど。確かにそう言われればそうだね」
「そうだろう? というわけで、眷属のスライムを売り物にするのは、きちんと考助の心の整理が追い付いてからのほうがいい」
「あれ? 完全に拒否するわけじゃないんだ?」
「そうだな。・・・・・・私だって、スライム相撲の計画は上手くいってほしい。そういうことだ」
 フローリアの何とも私的な理由に、考助とシュレインは一度顔を見合わせてから笑うのであった。
色々ごちゃごちゃと書きましたが、一言でいえば「僕の眷属を傷つけたら許さないぞ!」ということでしたw
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