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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その16)

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(13)神々の扱い

 考助の認識不足はいつものことなので他の者たちに任せるとして、エリスは本題に入ることにした。
「それはともかく、以前に聞いた通りに祝福すればよろしいですか?」
「ああ、うん。お願い。位置はわかるよね?」
 今回は、三か所に分かれている神社それぞれに祝福することになる。
「問題ありません」
 そう返答したのはエリスだったが、他のふたり(二柱?)も同意するように頷いた。
 三つの神社は、召喚を行った中央にある考助の神社からは多少離れた場所にあるが、仮にも女神を名乗っている彼女たちにとっては大した問題ではない。
 必要となればアスラの神域から直接祝福を与えることもあるので、多少距離が離れていても支障はない。

 考助が見守る中、エリスたちはその場で三つの神殿に女神の祝福を与える。
 そもそも祝福を与えること自体は、さほど時間がかかるわけではない。
 しかも神域からではなく、召喚によって地上に降臨している状態で直接与えているためその効果は高くなる。
 ただし、高い効果の祝福が与えられたからといって、それが今いる人々に大きな恩恵を与えるのかというと、そういうわけでもない。
 勿論、違いはあるのだが、それは目に見えるような形で示されるわけではないのである。
 もっとも、アマミヤの塔を管理しているのが考助である限り、いつかはその効果を目の当たりにすることができるだろう。
 それに、アスラの神域で話が出た通り、他の女神たちの祝福が与えられることが確定しているので、第八層の百合之神宮は間違いなく世界有数の神域となる。

 それぞれの神社に祝福を与えたエリスたちは、再び考助に視線を向けた。
「・・・・・・これで終わりです」
「私もだ」
「私も終わったわよ」
 三人揃っての報告に、考助は頷きを返した。
「そう。ご苦労様」
「いいのですよ。正当な依頼ですから」
 神威召喚を通しての作業なので、エリスたちにとっては祝福を与えることはむしろ必要な作業なのだ。
「それはわかっているけれどね」
 考助としてはいくら自分が呼んだからといって、お礼くらい言うのは当然だという感覚がある。
 どちらもそのことがわかっているので、それ以上のお礼合戦にはならず、別の話題に変わった。

 最初にその話をしてきたのは、エリスだった。
「ところで、祝福はこれで終わりですが、他に何かありますか?」
「うん? いや、特には何もないよ」
 前回のときは、考助を狙う馬鹿者を見張ってもらうという役目があったが、今回は特にそういったことも考えていない。
 祝福をもらえるだけで十分だった。
 それに、このあとのことを考えれば、下手にエリスたちから余計な物をもらうと、色々と面倒なことになりかねない。
 考助としては、それだけは避けたい事態なのである。

 そうした考助の考えを見抜いた三柱の女神は、互いに顔を見合わせて笑った。
 確かに考助の懸念の通り自分たちが余計な真似をすれば、後に続く者たちが競うようにいろいろなことをしていくのが予想できる。
 世界を運営保持している身としては、それはあまりいいことではないのである。
「それじゃあ、私たちはこれで失礼します」
「たまには定期訪問以外にも来てよ」
「・・・・・・待ってる」
「ああ、うん。分かったよ。・・・・・・またね」
 エリスを筆頭に、ジャル、スピカと続いた別れの挨拶に、考助も軽く返した。
 行こうと思えばいつでもいけるので、別にこれが今生の別れというわけでもない。
 降臨した女神の帰還の割にはあっさりとしたものだったが、これもまた考助らしいと言えるだろう。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦ 

 エリスたちの神威召喚を終えた考助たちは、そのまま一度管理層の会議室へと戻った。
 事前に話し合ってはいるが、実際に召喚を終えたことで話を詰めなければならないことはいくらでもある。
「父上はやっぱりおかしかったというのは置いておくとして、やはりこのまま他の女神たちの祝福を受けることになりますか?」
「うん、それは変えようがない・・・・・・って、それはいくらなんでもひどくない? ねえ・・・・・・って、あれ?」
 同意を求めようとして周囲に視線を向けた考助だが、微妙に視線をずらされたり首を左右に振られたりして、ガクリと肩を落とした。
 ただし、おかしいという言葉が適切かはともかくとして、自分の力がいろいろと突き抜けていることは自覚しているので、それ以上の反論は諦めた。

 気を取り直してトワを見た考助は、改めて他の女神たちについて話すことにした。
「いまここで取りやめるとなったら、本格的に怒り出しそうなんだけれど、止めてみる?」
 アスラの神域での熱狂(?)ぶりを思い出しながら、考助はさらに続ける。
「ちなみにその場合、僕は女性たちの怒りを向けられたくないから、その怒りはそっちに向くというおまけもついてくるよ?」
 考助としては、多くの女性たちから怒りを向けられて苦しい立場に立たされたくないという軽い気持ちで言ったのだが、他の者たちはその言葉に息を飲んだ。
 彼らにしてみれば、女神の怒りがアースガルド、さらに限定すればラゼクアマミヤに対して向けられるということになる。
 アースガルドの住人にしてみれば、神々の怒りというのは、もっとも身近な恐怖の対象である。
 そんなものは全力で回避したいと考えるのは当然のことであり、怒りを向けられる可能性があると言われるだけでいまのような態度になってしまうのは、当たり前の反応なのだ。

 周りの反応に失敗したかなと思いつつ、考助は今後のためにもこの点だけははっきりさせておくことにした。
「もし、それでもいいというんだったら、一度女神たちに打診して見るけれど、どうする?」
 確認を兼ねてそう言った考助に、ラゼクアマミヤとクラウン関係者は勢いよく首を左右に振った。
 女神たちを怒らせるようなことになれば、個人レベルではなく街単位、国単位で巻き込まれる可能性が高いのだ。
 いくら後々面倒なことになるからといって、女神たちの怒りを買いたいという愚か者はこの場にはいないのである。
 彼らの反応を苦笑しながら見ていたトワは、改めて考助に向き直って言った。
「そういうわけですから、父上は予定通り進めてください」
「まあ、そうなるよね。もともとそっちが拒否しても、こっちは勝手に進めるつもりだったし」
 考助のぶっちゃけた話に、それでも非難の顔をする者はいなかった。
 今回の件で考助が神々の中でも上位の立場であると分かったが、それでも複数の女性からにらまれるようなことにはなりたくないという気持ちは十分に理解できるのだ。

 考助の言葉の受けて、今度はフローリアが元女王としての発言をした。
「そもそもこちらの対応が面倒だからと言って、それをコウスケに押し付けるのが間違いだからな。神々には神々の事情というものがある。それはわかり切っていることだろう?」
 いくら気安く頼みごとができるからといって全てを押し付けるなというフローリアに、一同は気を引き締めたような表情になった。
 フローリアがいま言ったことは、いつまでも考助に甘えるなと言っていることに等しい。
 考助がラゼクアマミヤに対して一部過保護であるのは周知の事実だが、それが永遠に続くかといえばそうではない。
 これを機にこうした対応にも慣れておくようにというフローリアの言葉に、考助を除くその場にいた全員が頷くのであった。
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