挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その16)

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

841/1285

(12)それぞれの考察

 シルヴィアから話を聞いて頭を抱えた考助だが、今更やめるというわけにもいかない。
 アスラの神域で見た女神たちの期待のこもった視線を思い出せば、それも当然だ。
 考助の神社が中央に来ていることに関しては、一応考助がエリスに連絡を取ってみたのだが、
『気付いてなかったのですか!?』
 と、逆に驚かれてしまった。
 当然というべきか、さすがというべきか、エリスたちは承知の上で神威召喚を許可していたのだ。
 感情的にも理屈的にも後戻りができないと悟った考助は、退路を断たれるというのはこういうことかと実感する羽目になったというわけだ。
 そのときの煤けた考助を見た女性陣は、慰めていいのか、呆れていいのか、スルーすべきなのか、何とも複雑な表情を浮かべていた。

 そして、召喚当日。
 第八層の百合之神社前には、この日のために関係者が三十名ほど集まっていた。
 考助は当然として、塔の管理者メンバー、クラウン関係者、ラゼクアマミヤ関係者になる。
 クラウン関係者もラゼクアマミヤ関係者も上層部の数名という感じで、本当に考助と普段から接している者しか来ていない。
 今回の神威召喚は、以前と違ってパフォーマンスをする必要もないので、必要最小限しか呼ばなかったのだ。
 ちなみに、子供たちは考助が神威召喚を行うところを見るのは初めてのことになる。
 母親たちから話だけは聞いているが、実際にそれがどういったものかは見たことがない。
 そのため、トワを始めとした子供たちは、父親の雄姿(?)を今か今かと少し落ち着きがない様子で見守っていた。

 前回と違って関係者しかいない今回は、考助にとっては緊張することなくできる。
 たとえ二度目でも神威召喚が大変な作業であることには違いはない。
 そのため、失敗しても前回ほどは恥をかかなくて済むというのは気分的に非常に楽なのだ。
 さすがに鼻歌混じりというわけではないが、楽な気分で準備を整えた考助はすぐに神威召喚の詠唱を始めるのであった。


 考助が詠唱を始めてすぐに反応したのはココロだった。
「凄い・・・・・・」
 そう言ったきり、息を呑んで考助を見ることになったが、それに反応できるものは傍にはいなかった。
 ココロの近くには他の子供たちが集まっていたので、大なり小なり考助のやっていることの凄さを肌で感じることができるのだ。
 考助の詠唱が進むたびに、その周囲に集まる力の奔流に幼子を除いた子供たち全員が驚愕していた。
 特に、普段から管理層で考助と接しているミアは、言葉もなく詠唱する様子を見ている。
 勿論、ミアやココロ以外も普段とは違う考助の様子に、現人神として認識を新たにすることになった。

 子供たちが父親に対して感銘を受けている一方、考助の嫁たちは子供たちとは少し違った感覚で儀式を見ていた。
「なるほど。これが神威召喚か」
 フローリアのつぶやきを拾ったコレットが反応した。
「これは確かに普通の人ではできないわね」
「私たちでも無理ですわよ」
 コレットの言葉に苦笑しながらシルヴィアが反応し、ピーチが同意するようなに頷いた。
「コウスケさんほど上手に、神力は使えませんからね~」
 いま考助が行っている神威召喚には、多くの神力が使われている。
 それに加えて、召喚を行うために細やかな操作も行われているのだ。
 シュレインたちもこの世界にいる他の者たちに比べれば、神力の扱いにははるかに長けている。
 だが、考助の神力操作は、彼女たちをさらに上回っているのだ。

 視線だけは考助から外さずに、シュレインが感嘆のため息をついた。
「・・・・・・神威召喚を行うには、これだけの技量が必須というわけかの」
「それはどうでしょうか」
 シュレインの言葉を否定するように言ったシルヴィアに、他の者たちの視線が集まる。
「どういうことだ?」
「以前の召喚を直接見ていないので断言はできませんが、今回はあのときから改変されているように思います」
 そのシルヴィアの説明に、再び女性陣の視線が考助へと向かった。
「・・・・・・言われてみれば、そうかもしれん。じゃが、シルヴィアはよく気付いたの」
 以前はモニター越しに見ていたので、いまのように肌に感じている感覚はなかった。
 単純に詠唱などを見ていただけなので、言われるまでは違いなどには気づけなかったのだ。
「私は巫女ですから」
 聖職者であれば、神威召喚について知っておくのは当然だろうという思いを込めたシルヴィアの言葉に、他の面々は納得の表情を浮かべた。
 以前の神威召喚のあと、シルヴィアはしっかりと考助が行った詠唱や召喚陣の研究を行ったことを察したのだ。

 そんなことを話しているうちに、目の前で行われている儀式が終盤に近付いたことにシルヴィアが気付いた。
「・・・・・・そろそろ終わりますね」
 その言葉で、他の女性たちも口を閉ざして考助へと注目した。
 そのシルヴィアの予想に違わず、考助は最後の詠唱を行い、神を呼び出すために展開していた召喚陣が大きな光を出して消え去った。
 そして、そのあとには予定通り三柱の女神たちが姿を現していたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 目の前に現れた女神たちに、ラゼクアマミヤの重鎮たちは息を呑んで見ていた。
 話に聞いているのと実際にその目で見るのとでは、まったく違った印象を受けるのだということを肌で実感したのだ。
 勿論、び出された女神たちから受ける力のせいでもある。
 いくら自分が召び出したとはいえ、その影響を受けずに平然と親し気に会話をしている考助を見ながら、現人神という言葉の意味を理解した。
 もとよりそんなつもりはなかったが、改めて神々に対して反抗することの無意味さを思い知らされた一同であった。

 そんな彼らを、シュミットを始めとしたクラウン関係者は、苦笑半分同情半分で見ていた。
 間近で見る神威召喚が、どれほどの影響を受けるのか、身をもって経験しているからこそ彼らの気持ちはよくわかる。
 シュミットたちが多少冷静で見ていられるのは、二度目の神威召喚だからだ。
 これがもし初めての経験であれば、間違いなく同じような反応になっただろう。
 というよりも、一度目のときにそうなったのだから否定しようがないのだ。
 それに、いくら二度目だからといっても、神々から受ける圧力は慣れるはずもない。
 神々の前で平然と立っている考助を見て、畏敬の念を抱くのはシュミットたちとて同じことなのであった。

 
 召喚を見守っていた者たちにどういった印象を抱かせていたのか全く考えてもいなかった考助は、召び出したエリスたちと暢気に会話をしていた。
「それじゃあ、よろしく頼むね」
「もちろんよ。任せなさい!」
 胸を張って返事をしてきたジャルを横目で見ながら、エリスが確認してきた。
「それにしても、今回の神威召喚は結構な改変がされているようですが?」
「ああ、それね。前とまったく同じだとつまらないから、せっかくなんで試してみた」
 さっくりとそう答えた考助に、スピカがため息をついてぽつりと呟いた。
「試してみた、で済ませられるようなことではないはずなんだがな」
 そのスピカのつぶやきは考助には届かず、自分がやらかしたことを考助が自覚することになるのにはもう少しの時間が必要なのであった。
二度目の神威召喚が終わりました。
何気にサクッと改変した考助ですが、普通ではありえません。
元の神威召喚は、すでに完成したものなので改変などできるはずがないというのが、女神たちを含めた一般常識です。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ