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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 塔の地脈の力を使ってみよう

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(21) 神獣?

 何故かジャルが、じっと考助を見つめて来た。
「・・・な・・・何?」
「いやー、うん。・・・改めて納得しただけ」
「何のこと?」
「いやいや、何でもないよ。こっちのこと、こっちのこと」
 戸惑う考助に向かって、ジャルが手をぱたぱたと振った。
「そう? それならいいけど・・・」
 こういう時は、あまり追及すると碌な目に遭わないというのは、[常春の庭]で散々学んできた考助である。
「ところで、わざわざこんな形で会いに来たのは、何か用があったの?」
「あっと、そうだった、そうだった。ちゃんと、ついで・・・じゃなく、本題を終わらせないとね」
 わざとらしく誤魔化したジャルを、考助はジト目で見つめた。
 しかし、見られたジャルは、どこ吹く風とばかりに話を続ける。
「じゃじゃーん。おめでとうございます。貴方の眷属であるナナは、条件を満たしたので私の力の一部を授けます」
「・・・・・・ええ?」
「なに、そのリアクションは?」
 何と言われても戸惑うことしかできない考助であった。
 そんな考助を見て、ジャルは不満そうに唇を尖らせた。
「ほら、もっと驚くとか、嬉しがるとかあるじゃない?」
「・・・いや、そもそもの意味が分からないんだけど? ・・・ナナに、力を授けるって何?」
「いやほら、わたし一応これでも月の女神とか言われてるわよね?」
 自分で、一応と言ってしまう神様ってどうなんだろう、と思う考助だったが、思うだけでとどめた。
 どうせ目の前の女神には、心を読まれているのだ。
「えっと・・・? そうなの?」
「そうなのよ。それで、今回考助が作った<月の祭壇>は、わたしと交神するための条件を満たしているの」
「・・・それで?」
「ナナちゃんは、わたしの力を授けるに足る条件を既に満たしていたから、<月の祭壇>を通して力を授けることにしたのよ!」
 考助にしてみれば、いやいきなりそんなこと言われても、という感じである。
「あら? じゃあ、いらないの?」
「いえ、生意気なこと考えてすみませんでした。是非、お願いします」
「うむ。よろしい」
 思わず頭を下げた考助に、ジャルは尊大な感じの台詞を口にした。
 もっとも、言葉はともかく、態度と表情は全く違ったものであった。
 神の威厳を示すという物ではなく、近所のお姉さん、と言った感じだ。
 そんなジャルが、右手の掌を上に向けると、そこには光に球体が現れる。
「・・・えい!」
 そう掛け声をかけて、その球体を投げるようなしぐさを見せると、球体は今考助たちがいる光の空間から消えて飛んでしまう。
「はい。これで終わり」
 ジャルはそう言った後、ニコリと笑った。
「ありがとう」
 そう言って頭を下げた考助に、ジャルは右手を左右にと振った。
「ああ、良いの良いの。もともとナナには、こうする予定だったから。考助が<月の祭壇>なんてものを作ったから、予定が早まっただけよ」
「・・・そうなの?」
「そうよ。本来ならもっとじっくり時間をかけるはずだったのだけれど・・・すっかり予定が狂ったわ。・・・まあ、わたしとしては、考助に直接会える機会が、早まったからよかったけど」
「はあ。そうなんだ・・・」
 考助としては、なぜこの女神が自分に会いたがっていたのかはよくわからない。
 せいぜいが、アスラやエリスと直接の面識があるからだろう、くらいにしか思っていなかった。
「まあ、今のところはそう思っていた方がいいわね」
「・・・わかった」
 わざわざ神をつついてまで、知りたいと思わない。
 というより、繰り返しになるが、下手につつくとひどい結果が待っているというのは、[常春の庭]で何度も味わって懲りているのである。
「・・・それじゃあ、そろそろ時間だからお別れするわ」
「あ、そうなんだ」
「そうなのよ。わたしとしても、用事は終わったから長引かせるわけにいかないしね。・・・ここで下手に長引かせたら、アスラ様とエリス姉さまからの説教が待っているし」
「説教って・・・」
「ああ、こっちのことだから、考助は気にしないで。・・・あ、そうそう。ちゃんと私と交神するの忘れないでね」
 ジャルがそう言って考助に向かって手を振ると、今まで周囲を囲っていた光が薄れていくのが分かった。
 その光が消える頃には、今まで自分はずっと同じ場所に立っていたことに気付いた考助であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ジャルが最初に説明した通り、コレットやミツキは、ほんの一瞬<月の宝石>が光っただけだと認識していた。
 当然ながら、考助が女神の一人と話していたなんていう認識はなかった。
 とは言え、考助も今までのことが夢だとは思ってもいない。
 アスラやエリスのことを知っている上に、先ほどの出来事を裏付ける証拠があった。
 それは、ナナのステータスを確認して気付いた。

 固有名:ナナ
 種族名:白狼神
 固有スキル:遠吠えLV7 体当たりLV7 噛みつきLV7 威嚇LV7 集団行動LV6 言語理解(眷属)LV7 神力操作LV7 妖精言語 風魔法LV6 月光LV7
 天恵スキル:統率LV7 大神の欠片(満月) 体長変化 
 称号:考助の眷属 大神の一族 月神の加護

 まず種族が、白狼から白狼神に変わっていた。
 称号が<大神の使い>から<大神の一族>に変化したからだろうと予想している。
 ここで言う<神>が、単に力を持つものを指しているのか、本当の意味での<神>になったのかはわからない。
 ジャルの話を思い返す限り、力をもらっただけで<神>そのものになったわけではないと思うのだが・・・。
 まあその辺は、後にでもアスラかエリスかジャルに聞いてみてもいいだろう。
 答えられることなら答えてくれる。答えてくれない場合は、少なくともその時点で、知らないほうがいいということだ。
 ついでに、称号に<月神の加護>が増えていた。
 あるいは、これが先ほどジャルが言っていた力なのかもしれない。
 この称号がどういった効果を持つのかは、よくわからない。
 ただ、例えナナ本人に検証を頼んだとしても、それがスキルか称号のおかげかはわからないのだ。
 今回の変化は、天恵スキルの<大神の欠片(満月)>、称号の<大神の一族><月神の加護>の三つが同時に変化あるいは追加されたのだから。
 それに、検証したところで、他の狼達に同じスキルや称号を持たせることが出来るかどうかは、ほぼ不可能だと思っていた。
 現状でもナナと同じような進化を辿っている狼達は、まるっきりいないからである。
 まずは、そのスタートラインに立たなければ、話にならないのだ。
 特に無理をして、ナナのような進化をさせる気もない上に、今はナナの変化を見ているだけでいいと思っていた。
 とりあえず、ナナには何か変わったことがあったら教えてほしいと伝えて、考助達はその場を後にしたのである。

 ちなみに、後日考助が<月の祭壇>を訪れた際に、<月の宝石>を通してジャルと交神できると分かった。<月の祭壇>に交神するための条件がそろっていることは、本人(神?)から聞いていたが、実行する方法が分からなかったので、多少時間がかかったのである。
 しかし、その時まで、<月の祭壇>の管理(掃除含む)をする者のことを忘れていたため、ジャルに拗ねられて慌ててその人材を用意する羽目になる考助であった。
いい加減どこかで6章を区切らないと思いつつ21話まで来てしまいました。
その内、章は改めて区切り直したいと思っています。

2014/5/11 誤字脱字修正
2014/6/3、14 誤字修正
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