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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その16)

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(8)うんざり

「疲れた・・・・・・」
 ミアが、くつろぎスペースのテーブルに突っ伏しながらそうこぼした。
 それを苦笑しながら見ていた考助は、ポンとミアの頭の上に右手を乗せた。
「お疲れ様。・・・・・・で? 結果はどうだったの?」
「・・・・・・・・・・・・私個人ではなく、王の妹姫という視点でしか見ていないのに、結果も何もありません」
 きっぱりとそう言い切ったミアに、考助は「そうか」とだけ返した。

 つい先ほどまでミアは、トワが主催した夜会に出席していたのだ。
 夜会といっても、現在の実力者が集まって様々なやり取りをするようなものではなく、若い者たちが集まるものだ。
 要するに、城内でお見合いパーティのようなものが開かれていたのである。
 別のこれが初めての催しというわけではなく、何度か行われていたりする。
 ただし、ミアが初めて参加するとあって、参加者が今までにないほどに膨れ上がっていたのだ。
 参加者のほとんどがミア目当てということもあり、多くの人間と会話をせざるを得なくなったミアは、グロッキー状態になってしまったというわけである。

 さらに、ミアがぐったりすることになった要因は、その数だけではない。
 いまミアが考助に言ったように、来る人来る人全てが「王の妹」であるミアの立場を利用したいだけであって、ミア個人を見ようとする者は一人もいなかった。
 ミアも王女として育てられたため、そうしたことになるのは重々承知しているが、それでもそうした者たちの相手にして疲れることは疲れるのだ。
「綺麗ですとか、美しいですとか、歯の浮くような定番文句はともかく、兄上のことを引き合いに出すのはどうなんでしょうね!」
 ぷりぷりと怒りながら次々と文句が出てくるミアを見ながら、考助はこれはしばらくこのままかなと考えていた。
 つかまってしまった以上、愚痴ぐらいは最後まで聞くつもりでいるが、さっさと退避してしまったフローリアを恨めしく思うのは、致し方のないことであった。

 トワが主催しているお見合いパーティは、曲がりなりにも公的な行事となる。
 以前の事件で、公的な場から締め出されていたミアがこうしてパーティに出席できたのは、そのときの「罪」が表向きに許されていたからである。
 もともとトワの結婚でミアに対して恩赦が行われていたのだが、いきなり公の場に姿を現すのではなく、様子を見ていた。
 その最初の場として選ばれたのが、いまミアが盛大に愚痴を言っているお見合いパーティだったというわけである。
 久しぶりに公の場に姿を現したミアに、王族という立場を狙って有象無象が集まってしまうのは、致し方のないことと言える。
 ただ、だからといって、それに対応することになるミアが何も感じないわけではない。
 結果として、考助がミアの愚痴を聞く羽目になるのであった。

 
 ミアの愚痴も尽きて、そろそろまったりモードに入ろうかという雰囲気になったころ。
 そのタイミングを測ったかのように、くつろぎスペースにトワが現れた。
 忙しいはずのトワがこうして現れる目的はひとつしかない。
「やあ。ミア、どうでした?」
 そのトワの問いかけに、せっかく治りかけていたミアの機嫌がまた落ちてきた。
「・・・・・・結果は聞かなくとも分かるのではないですか?」
「ハハハ。まあ、その顔を見れば何となくね」
 睨み付けるようなミアの視線を、トワは笑いながら受け流した。
 この辺りの流し方は、流石は兄といったところだ。

 あっさりと流されてしまったことのため息をついたミアは、愚痴を言うのも面倒になってトワが欲しがっている情報を話すことにした。
「とりあえず、野心が強すぎて駄目だろうという者は、三人ほどいましたが聞きますか?」
「聞きましょう」
 ミアの言葉にぐっと身を乗り出して、トワが頷く。
 可愛い妹であるミアにきちんとしたお相手が見つかってほしいという思いがあって招いたパーティなのだが、だからこそミアが言ったような者も集まるのだ。
 そういった輩がいないに越したことはないが、全くいないというのがあり得ないのがトワのいる世界なのだ。

 その後、ミアが告げた三人の名前に、トワは満足げに何度か頷いていた。
「・・・・・なるほど。あの三人ですね。なかなかいい情報でした」
「それはよかったです。出来れば次は、私を生贄に差し出さずに仕入れてほしい物です」
「おや。生贄とはまた心外ですね。私としては、可愛い妹に早くお相手が見つかってほしいと思って招いたのですよ?」
 肩をすくめながらそう言ったトワ向かって、ミアがわざとらしくため息をついた。
「・・・・・・できればそういう言葉は、笑わずに言ってほしいです」
 口調も態度もまじめそのものといったトワだったが、唯一目だけは笑っていた。
 もっとも、それも近しい位置にいるからこそ気付ける変化でしかないのだが。
「おや。これは失礼しました」
 わざとらしく目を丸くしたトワは、これまたわざとらしくミアに向かって頭を下げた。

 普通であれば関係悪化がしてもおかしくはないふたりのやり取りだが、お互いに冗談だと分かっているからこそできる気安いやり取りに、傍で見ていた考助がクっと笑った。
「ふたりともじゃれ合いはそれくらいにしたほうがいいんじゃない?」
「父上、私は別にじゃれているつもりはありませんけれど?」
 プクリとほほを膨らませてミアが文句を言ってきたが、考助が見てもまったく迫力がなかった。
「その態度をパーティの参加者に見せれば、いくらでもいい人が集まりそうな気がするけれどなあ」
「・・・・・・父上、それはどういう意味でしょうか?」
 思わず言葉にしてしまった考助に、ミアが手を腰に当てて首を傾げる。
 口元は笑っているが、目は全く笑っていない。
 言い過ぎたと思った考助は、ハハハと笑ってごまかしてさっと立ち上がった。
「まあ、詳しくはトワに聞いた方が分かると思うよ。それじゃあ、僕はそろそろこの辺で」
 ヒラリと右手を上げて立ち去った考助に、ミアが大きくため息をつくのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助と入れ違うようにして、くつろぎスペースにフローリアが入ってきた。
「ん? なんだ、またコウスケが何かやらかしたのか?」
 考助の顔を見て一瞬で何かが起こったことを察したフローリアは、さすがと言えるだろう。
「ハア・・・・・・。私、母上が羨ましいです」
「なんだ、いきなり?」
 唐突なミアの言葉に、フローリアが目を丸くした。
「どうすれば、父上のような人と出会えるのですか?」
「そういうことか・・・・・・」
 心底羨ましそうな声音で言ったミアに、フローリアは納得の顔になり腕を組んだ。

 その態勢のまましばらく首をひねっていたフローリアだったが、やがて諦めたように首を左右に振った。
「・・・・・・だめだな。何かいい助言があるかと思ったが、全く思いつかん」
 そもそも考助とフローリアの場合は、神々の導きで引き合わされたと言っても過言ではない。
 その部分だけを取り出せば、運命の出会いと言えなくはないのだが、実際はそんなロマンチックなものではなかった。
 考助はともかく、フローリアは相手のことを見下していたのだから、第一印象としては最悪と言ってもいいだろう。
 もっともそんな悪印象は、ミツキという存在によって、一瞬で砕かれてしまったのだが。
 とにかく、フローリア自身の経験が、いまのミアの役に立てるかといえば、微妙なところなのだ。
 そして、問いかけたミアも、フローリアから答えが返ってくることを期待していなかったので、「そうですか」とあっさりとした態度でそれ以上何かを聞こうとすることはしなかったのである。
ミアはその立場を復帰させています。
主にトワの都合によってw
果たしてミアに春が来ることはあるのか!?
(作者もわかりません)
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